36話 地に足をつける。
「えーとですね、具体的に言うと、何でもできすぎて、最初に何を解決すればいいかわからなくなったんですよ。」
全身、包帯だらけのタカシが話し始める、
「タカシさんなら何をやっても、いい結果になりそうですが。」
室内が答える、実際それは的を射ている。
アーカーシャの能力をフルに使えばどんな結果だろうと、容易に得られる、そうなった者を人と呼べるかは分からないが。
「そうだな、でもこれからは、俺のやりたいじゃなくて、誰かの叶えてほしいもの、そういったものを少しづつ積み上げていこうと思ってる。そうしないと今の世の中の二の舞だからな。」
場に走る空気がタカシが真面目に話していることを3人に理解させる。
「今のように、人が政治に振り回されてほしくない。」
「だから、シンプルに行こう、たくさんの人がやってほしいことをやるんだ」
「えっと、具体的にはどうするんですか?」
「Noaを使おう、アーシャ」
「匿名の投稿アプリを作成しましょう」
「よろしく頼む」
淡々と進む会話はもはや熟年夫婦だった、タカシはアーシャを、アーシャはタカシを、信頼とは少し違う本来時間の経過が作り出す互いへの思い、今はまだお互い気づいていないが、外から見れば。
「....」
「....」
黙り込む程には
分かりやすかった。
室内が小さく息を吐く。
「……なんというか」
理恵も続く。
「長年連れ添った感じ、ありますよね」
「ですね」
「ですよね」
こくこく、と頷き合う二人。
当の本人たちは――
「投稿数に応じて優先順位を設定します」
「いいね、それ。あと、変なの弾ける?」
「可能です。AIフィルタを組み込みます」
「さすが」
いつも通りだった。
地に足をつけるって大事だよ。
人を治めるなら 人の立つ大地に立たないとね。




