27話 そろそろ気づいた
時間は少し遡る。
NOAの量産が始まり、数ヶ月。
村には人が増え、工場は稼働し続けていた。
そして――
「これ、やばくないか?」
ある日を境に、NOAは一気に広まった。
「操作が直感的すぎる」
「これ一つで全部できるじゃん」
「スマホいらなくね?」
そんな声が、世界中で上がる。
ゲーム、通信、仕事、管理。
すべてを一つで完結させる端末。
容量は1TBどころではない。
処理能力も、既存の機器を大きく上回る。
腕に装着する、超小型のスーパーコンピューター。
しかも――
「これ、どこでも通信できるんだけど」
広範囲で通信が可能。
インフラに依存しない接続。
「なんだこれ……」
便利、という言葉では片付けられない。
それは、もはや“次の時代”そのものだった。
――日本。
重苦しい空気の会議室。
長机の周りに、スーツ姿の人間が並んでいる。
「……例の端末についてだが、やはりあの男が関わっているようです」
「現在、世界中で急速に普及しており、既存の通信機器市場に大きな影響が出ています」
「男の行方は?」
「現在、とある村に潜伏している模様です」
「開発者も、その男だと思われます」
一瞬、空気が張り詰める。
「……確保しろ」
即座に声が上がる。
「やはりあの男は危険すぎる」
「待て」
一人が静止する。
「軽率に動けば、どうなるかわからんぞ」
「ではどうする」
誰も、即答できない。
重い沈黙。
その時――
「……すでに海外から圧力が来ています」
別の男が口を開く。
「このままでは、強制介入も辞さない可能性があります」
ざわめきが広がる。
「国外に踏み込まれれば、主導権を失うぞ……」
「だからといって、こちらが先に動けば衝突は避けられん」
議論は平行線を辿る。
結論は出ない。
やがて――
「……監視を続けろ」
絞り出すように、一人が言った。
それが結論だった。
会議室の空気は重い。
誰もが理解している。
あの端末は――
すでに、止められる段階ではない。
誰も、その言葉を否定できなかった。




