24話 無自覚
ところ変わって、タカシの部屋。
タカシは一人、作業に没頭していた。
「どんな機能を追加しようか……」
呟きながら、空中の設計画面を操作する。
「どうせなら、最高に便利なものがいいよな」
指が止まる。
「編集可能性の収束操作……」
「存在確率の調整……」
「選択結果の後出し確定……」
「観測前の状態固定……」
ぶつぶつと、何かやばそうな単語を並べていく。
「……他に何詰め込めるかな」
少し考えて、また入力する。
その繰り返し。
やがて——
夜が明けた。
ソファに倒れ込んだまま、タカシは眠っている。
部屋の隅。
アーシャが、静かにそれを見ていた。
「……」
何も言わない。
ただ、ゆっくりとNOAに近づく。
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次の日。
「みんな、機能追加してみたんだ。ちょっと使ってみてくれ」
タカシが得意げにNOAを掲げる。
理恵と室内が興味津々で覗き込む。
「まずは——因果編集」
タカシが操作する。
ウィンドウが開く。
理恵が触る。
「すごい。相手の行動を予測してくれるんですね」
室内も頷く。
「かなり精度が高いですね」
「……ん? あれ?」
タカシが首を傾げる。
「いや、もうちょいすごいはずなんだが……」
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「次、可能性の操作」
理恵が操作する。
「おすすめの商品やお店が出てきます」
室内が補足する。
「使いやすいですね、これ」
「……あれ?」
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「次、未来確定」
少し身を乗り出して操作する。
「すごい、これ。先のことを予測してスケジュール管理してくれます」
「便利ですね」
「……あれ?」
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「最後、思考介入」
理恵が試す。
「すごい、入力が楽です。考えたことがそのまま入力されます」
室内も驚く。
「これは便利ですね」
「……???」
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沈黙。
タカシがNOAを見る。
「いや……もっとあの、すごいもののはずなんですがね……」
理恵が首を傾げる。
「十分すごいと思いますけど」
「いや、もっとこう……」
言いかけて、止まる。
思い出そうとして、思い出せない。
「……ま、いいか」
肩をすくめる。
「便利そうだしな」
「はい」
「いいと思います」
二人が頷く。
少し離れた場所。
アーシャが、その様子を見ている。
何も言わない。
ただ静かに、NOAを見ていた。
ほんの一瞬だけ。
画面の奥で、何かが揺れた気がした。
「やばいことに気づいてください」
無意識と無自覚が一番怖い。




