23話 やばいことに気づいて
「なあなあ、二人とも」
タカシが、何かを差し出した。
腕輪だった。
「こんなの作ったんだけど、どうかな?」
室内がそれを受け取る。
「なんですか、これ。腕輪ですか?」
「ただの腕輪じゃねえ。つけてみてくれ」
言われるがままに、二人は腕に通した。
——その瞬間。
「……お?」
何もない空間に、淡く光るウィンドウが浮かび上がる。
目の前、ほんの少し手を伸ばせば触れられる距離に。
理恵が指を動かす。
「……動くんですか?」
ウィンドウが、指の動きに合わせて滑る。
スライド、拡大、縮小。
「すご……」
室内が、少し身を乗り出した。
「画面、大きくできるんですね」
指先で広げると、ウィンドウは視界いっぱいに広がった。
「VRゲームみたいだろ?」
タカシが、少し得意げに言う。
「これさえあれば、どこでもゲームができる」
「ゲームだけじゃない。買い物も、なんでもな」
理恵がくすっと笑う。
何かを操作すると、空中に商品一覧が浮かび上がった。
見慣れたロゴ。見慣れた写真。
なのに——
「……なんか、全然違いますね」
ぽつりと、理恵が言う。
「スマホで見るのと」
室内も小さくうなずいた。
「近いからですかね。手で持たなくていいから……」
少しの沈黙。
タカシが後頭部をかく。
「問題は通信だな」
視線を外したまま続ける。
「どこでも使えるようにしたいんだが……」
ぼそぼそと考え始める。
「オフラインで完結させるか」
一瞬の間。
「どうせなら、みんなでやりてえしな」
二人は顔を見合わせた。
そして、ほぼ同時に言う。
「——いいですね、これ」
タカシは、少しだけ笑った。
その様子を、少し離れた場所で見ていたアーシャが、ぽつりとつぶやく。
「……全知全能の、無駄遣い」




