22話 小野隆 1
世界では、今もいろんな問題が起きているらしい。
紛争、飢餓、人種差別、宗教、政治、人権、少子高齢化。
挙げればきりがない。
人は、いくらでも問題を作る。
あるいは、問題にしてしまう。
正直、どうでもいい。
争いたいなら争えばいい。
助ける気がないなら、そのままでいればいい。
差別したいなら、勝手にやらせておけばいい。
信仰を否定したいなら、否定すればいい。
政治ができない人間が政治をやるのが当たり前なら、
そんな国は、いずれ滅びるだけだ。
子どもが減っても何もせず、それでいいと思うなら、
そのまま進めばいい。
——ほとんどの問題は、簡単に終わる。
互いに、ほんの少し引くだけでいい。
それだけで済む話ばかりなのに、
なぜ人は、わざわざ苦しむ方を選ぶのか。
理解する気もない。
そんな連中のために、俺ができることは何もない。
愚者と、愚か者は違う。
……それでも。
そういう世界に振り回されて、
すり減って、壊れそうになって、
それでも倒れることすら許されない人間を、
俺は放っておけないらしい。
だから俺は、世界なんて見ない。
世の中がどうとか、社会がどうとか、
そんなものはどうでもいい。
見るのは、いつだって一人だ。
「その人が、どうか」
それだけだ。
世界は、残酷かもしれない。
けど同時に、ひどくおおらかで、自由だ。
自然の中にある強さも弱さも、
ときに心地いいとさえ思える。
けれど——
人間の社会は、人間すら受け入れられないらしい。
なら。
ここに来ればいい。
……いや、違うな。
俺のところにいる人間を、苦しめるつもりなら——
それなりの覚悟は、しておいた方がいい。
今世界に必要なのは、世界を救う英雄とかそういうんじゃなくて、個人を救える個人だと思う。




