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21話 居場所

「ご飯は、こっちで食べよう」



たかしにそう言われて、家を出る。



外は少し冷えていて。



さっきまでいた部屋の静けさが、遠くなる気がした。



―――――



案内された家の扉を開けると。



ふわっと、優しい匂いが広がる。



「お、来たな」



中から声がした。



―――――



リビングには、すでに二人いた。



「この子が新人?」




軽く手を上げる。



「むろうち。よろしく」



ぶっきらぼうだけど。



その言い方が、変に気を遣わせなくて楽だった。



―――――



「はじめまして、アーシャです」



キッチンから顔を出した女性が、やわらかく微笑む。



そのまま手際よく料理を並べていく。



「もうすぐできるから、座っててください」



その声は。



どこか懐かしい温度をしていた。



―――――



席に着く。



テーブルの上には。



すでにいくつかの料理が並んでいて。



どれも、ちゃんと“人の手で作られたもの”だった。



―――――



「こういうの、久しぶりか?」



むろうちが、何気なく聞く。



「……はい」



そう答えると。



「そっか」



それ以上は、聞いてこなかった。



その距離感が、ちょうどよかった。



―――――



「お待たせ」



アーシャが最後の皿を置く。



「じゃあ、食べようか」



自然な流れで。



全員が手を合わせる。



「いただきます」



声が揃う。



―――――



一口、食べる。



「……」



美味しい。



それだけで、十分だった。



―――――



「口に合いそう?」



アーシャが少しだけ不安そうに聞く。



「はい、すごく」



そう言うと。



「よかった」



安心したように笑った。



―――――



「遠慮すんなよ」



むろうちが、皿を少し寄せてくる。



「ここ、減り遅いやつが損するからな」



冗談っぽく言う。



少しだけ、笑いが起きる。



―――――



たかしは。



その様子を見ながら。



静かに食事をしていた。



特別なことは言わない。



けれど。



その場を整えているような、そんな空気があった。



―――――



会話は、途切れたり、続いたり。



無理に盛り上げるわけでもなく。



無理に気を遣うわけでもない。



それでも。



ちゃんと、同じ時間を共有している感じがあった。



―――――



箸が進む。



言葉が増える。



少しだけ、笑う。



それだけで。



十分だった。



―――――



「……こういうの、いいですね」



気づけば、そう言っていた。



「だろ」



むろうちが短く返す。



「うん、いいよね」



アーシャも頷く。



―――――



たかしは、少しだけ笑って。



「これから、いくらでもあるよ」



そう言った。



―――――



その言葉を聞いて。



胸の奥が、ゆっくりとほどけていく。



―――――



ああ。



ここにいても、いいんだ。



そう思えた。

コメント とかくれたらやる気が出るよ

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