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20話 救済

「ここにお住みください。荷物はすべて部屋に運んであります。

配置も変えていませんので、特に何かしていただく必要はないと思います。


水道と電気は通しています。オール電化なので、ガスは必要ありません。


――しかも、新築です」



「は、はい……」



「私は隣の家に住んでいますので、何かあれば呼んでください。


それと、今ご飯の支度をしています。

準備ができ次第、お呼びしますので」



「……あの」



「どうかしましたか」



「どうして、私にここまでしてくれるんですか。


正直、私まだ何も分かっていなくて……

急に抱きついて泣いたことも、本当に申し訳なく思っています。


それでも、その後の展開が急すぎて……

正直、混乱しているというか……」



――嘘だ。



混乱なんて、していない。



驚くほど、安心している。



けれど同時に、この状況がおかしいことも理解している。



まるで。



何か大きな存在に、無理やり安心させられているような。



そんな感覚。



―――――



「あなたが、助けを求めたから」



「……え」



――この声だ。



この声と、その表情が。



私をおかしくする。



まるで、私のすべてを背負ってくれるかのような言葉。



無理やり立っていた私を。



優しく、寝かしつけてくれる。



倒れてもいい場所を、与えてくれる。



―――――



本来なら。



こんな状況、簡単に信じられるはずがない。



それなのに私は。



この人の言葉に、嘘はないと。



完全に、信じきっていた。



――まるで。



偉大な何かが。



「それは嘘ではない」と。



直接、心に教えてくれているかのように。


ーーーーーーーーーーーーー



用意された家に入る。



周囲は田舎のはずなのに。



目の前に建っているのは、まるで最新式の一人暮らし用の家だった。



1LDK、にしては大きい。



新築だと言っていたが。



――一体、いくらかかっているのだろう。



そんな現実的な疑問が、一瞬だけ頭をよぎる。



―――――



私は、ベッドに横たわった。



張り詰めていたものが。



すっと抜けていく。



力が、抜ける。



心が、楽になる。



ずっと背負っていたものが、ほどけていく。



――そして。



私は初めて。



本当の意味で、倒れることができた。



―――――



気づけば、目を閉じていた。



眠ろうとしたわけじゃない。



ただ。



もう、何も考えなくていいと思った。



――それだけで、十分だった。



―――――



どれくらい時間が経ったのかは、わからない。



けれど。



ふと、意識が浮かび上がる。



静かだ。



あまりにも、静かすぎる。



――こんなにも。



何も聞こえない時間が、あっただろうか。



その静けさに。



ほんの少しだけ、不安を覚える。



―――――



「……本当に」



思わず、声が漏れた。



「ここに、いていいの……?」



誰に向けたわけでもない言葉。



けれど――



「いいですよ」



すぐ近くで、声がした。



―――――



「っ……!」



体が、びくりと跳ねる。



いつの間に。



ドアのところに、あの人が立っていた。

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