19話 2面性
―――――
「……お姉さん」
「えっ、あ……はい」
ーーーーーーー
それに出会ったのは、いつものように、いえいつも以上に機械的になるべく 何も考えないように、そう心がけて、そう心を守りながら、朝の通勤電車を待っていました。
それという言い方は失礼でしたね、ですがその人のその雰囲気かあるいは 他の何かが、自分たちと同じ人であるという認識をさせてくれなかったように思います。
全てに絶望し、いえ絶望することに すら 疲れ、ただ 倒れたい、楽に死にたい、それができないからなんとなく立っているだけの私にその人はこう言いました
―――――
もう大丈夫ですよ
え?
その声は、強く響くわけでも、
心に突き刺さるわけでもない。
それなのに。
閉ざしていた心を、そっと包み込むように。
今まで背負っていたものを、
代わりに持ってくれるかのように。
静かに、私を支えてくれました。
死ぬことが倒れることだとそう思っていた私に、生きたままでも 倒れることができる場所をその人は、その言葉一つで私にくれました。
―――――
「あ……」
「……あっ……」
―――――
何も言わずに、その人は手を広げました。
「来い」と、そう言われている気がしました
―――――
「ああ……っ……」
―――――
気づけば、飛び込んでいました
―――――
泣きながら強く 彼の胸の中での 泣く 私の背中を彼は優しくさすってくれました。
―――――
「お疲れ様でした」
彼はそう言いました。
「助けに来ました」
「後のことは、すべて私がやります」
―――――
その言葉は、
私の中にあった重さを、
するりとほどいていく。
冷えきっていた感覚が、
少しずつ戻ってくる。




