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第3話 三人の仲間 後編

 メシア達三人とようやく会う事が出来た。

 しかしそれは私の考えていた再会とはかけ離れていたのだ。

 ナバーロ帝国と協力を築くどころか、私とラクスを殺し、アンゴラに首を差し出そうと考えていたなんて...


「まだ聞きたい事は沢山あると思いますが、先ずはここを離れましょう」


「そうだな、追っ手が来たら面倒だ」


 一通りの話を終えたメシアとヒューイは互いに頷く。

 確かにここは危険だ、メシア達を追って来る増援を迎える事は避けたい。


「ほれ、ラクスを馬車に」


「はい」


 倒した兵士を1ヵ所に集めていたアレックスがラクスの側にやって来た。

 私からラクスをそっと抱き上げる。

 ぐったりとしたラクスに、アレックスの表情が曇った。


「こんな身体になってもお主は...」


 アレックスの言葉は寂しさと悲しみが詰まっている。

 メシアとヒューイは無言で私達がさっきまで乗っていたナバーロの馬車に乗り込んだ。


「さて、どこに行こうか?」


「とりあえず、戻りましょう」


 このままナバーロ帝国に行く事は出来ない。

 何しろ私達は沢山のナバーロ兵を殺したのだから。


「でも大丈夫なの?」


「何が?」


「メシアの立場よ、皇女様なのに」


 お姫様のメシアが国に逆らうなんて、帝国は大混乱じゃないか?


「大丈夫よ、私は側室の子だから」


「...でも」


 あっけらかんとしたメシア。

 確かに彼女は正妻の子では無い。

 正室には息子が居り、皇位継承の可能性は非常に低いが。


「あんな分からず屋な国なんか滅びちゃえば良いのよ、私にとって大切なのはラクスとハリス、あとはミッシェル達よ」


「メシア...」


 なんて正直なんだろう。

 そんなに私達の事を...


 「エリクソンは除外ですけど」


 「当然でしょ!あんなヘボ糞野郎!!」


 ヒューイの言葉にメシアは顔を歪める。

 エリクソンは勇者とアンゴラの立場を使い、メシアを何度か手篭めにしようとした。

 その度、アレックスは背後からエリクソンを投げ飛ばしていた。


 ヒュドラとの戦いに邪魔をしたエリクソンを殴り飛ばしたのもアレックスだ。

 エリクソンはアレックスを殺そうとしたが、さすがにそれは出来なかった。


 まあ...あれだけ失態を続けたバカを庇う奴なんか居ないって事か。


「ナラムの酒は旨いのう!」


 会話に参加せず、1人馭者の椅子に座り、馬を操るアレックスはご機嫌な様子。

 ナバーロ帝国に献上するつもりだったけど、もう必要ないから、沢山飲んでね。


「アレックス、余り飲みすぎてはいけませんよ」


「そうですよ、もう年なんだから」


 メシアとヒューイは呆れながら注意をした。


「何を言うか!こんな酒の1本や2本!!」


 直接酒瓶を口に咥えるアレックス。

 懐かしいな...ラクスといつも飲み比べしてたね。


「アレックスは変わらないな」


「貴女は随分変わりましたね、ハリス」


 メシアがフッと微笑む。


「そ...そんな事は...」


「本当です、女とは知っていましたが、まさかこれ程の美少女だったとは」


「メシアは知っていたのですか?」


「ええ、女には何かと必要な物がありますから」


「そうですね」


 メシアには私が女である事を教えていた。

 バラされるのを覚悟していたが、メシアは決して周りの人間に言わなかったのだ。

 それがメシアを最初に頼ろうとした理由だった。


「残念じゃったな、ヒューイ」


「このヒューイ...一生の不覚」


 ヒューイはガックリと項垂れるけど、どういう意味だ?

 ヒューイには沢山の恋人が居たじゃないか。


「ヒューイの家族は大丈夫なの?」


「全員他国に逃がしてました、それに私は独り者ですし」


「逃がした?」


「最近ナバーロはキナ臭かったですから。

 皇帝はアンゴラにすり寄る動きを見せてましたし」


「全くじゃ、儂の家族も逃がしておいて正解じゃったわ」


 そうだったのか、ナバーロの内情を良く調べもせず、安易に頼ってしまうなんて、本当...私はどうかしてる。


「気にしないで、最初に私達を頼ってくれて本当にうれしかったんだから」


「...ありがとう」


 そんな優しい顔で見ないでよ、涙が出そうだ。


「メシアが大暴れしたから我々は捕まったんですよ」


「こらヒューイ!」


 そう言えば牢屋に居たって...


「そうじゃ、ハリスの手紙を見られたメシアは咎める皇帝に掴み掛かったんじゃ。

 儂らは止めようとしたがの」


「まあ...間に合ったから良かったじゃない」


「そうですね」


 メシアは眠るラクスに小さな笑みを向ける。

 状態が落ち着いたラクス、本当に良かった。

 馬車はゆっくりと街道を進む。


 不思議な事にナバーロからの追っ手は来なかった。


「さて、道は分かれとるが、どっちに向かおうかの」


 右はナラム王国だ。

 ここは一旦戻って体勢を立て直すべきだろう。


「アレックス、左に」


「ヒューイ?」


 どうして?左に向かったら、アンゴラの方に行ってしまう。


「そうですね、アキシア聖教国に行きましょう」


「アキシア聖教国?」


 アキシア聖教国はアンゴラ王国の手前にある、世界の教会を束ねる宗教国家。

 その地位と立場は世界で保障されており、仲間も二人居る。

 しかし、最近ではアンゴラ王国にその立場を脅かされているので、行くのはナバーロの次にしようと思っていたのだが...


「ミッシェル達を頼りましょう。

 彼女は現在アキシア聖教国で、反アンゴラの急先鋒です」


「ミッシェルが?」


 なんでミッシェルが反アンゴラの?

 彼女はアンゴラ王国に戻ってからの詳しい情報が入って来なかった。

 偽聖女として担ぎ上げたのはアキシア聖教国だ。

 嫌な予感がする、また罠なんじゃないの?


「大丈夫よ、アキシア聖教国はアンゴラの横暴に我慢の限界ですから、ミッシェルの立場を利用して世界に訴えようと画策してるんです」


「知らなかった...」


「私とて一国の皇女、それくらいの情報網はあります」


 そっか、1人の人間では限界がある。

 仲間を頼るって本当に大切だ。


「ミッシェルから手紙が来たんです」


「へ?」


「そうじゃ、アキシア聖教国に居るからハリスに伝えてくれとな」


「なんでバラすの!!」


 賑やかな馬車。

 意識を取り戻したラクスはまだ喋る事が出来ない。

 でも、私達を見る目はとても嬉しそうだった。

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