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第4話 ミッシェル達の戦い 前編

 アキシア聖教国の教会本部。

 聖女の部屋に籠り、世界中の国に戻った討伐隊の仲間に反アンゴラの手紙をしたためていた。


 偽聖女の私だが、教会の扱いは悪くない。

 当然だろう、エリクソンによって無理矢理聖女に仕立て上げられたんだ。

 今さら偽物でした、なんて彼等は口が裂けても言えない。


 アンゴラに屈した聖教国と言われてしまうし、過去に行ってきた神託の信憑性すら疑われてしまうだろう。


「今は担がれてあげる」


 アンゴラ王国と戦うという利害は一致しているのだ。

 こちらも教会の力をせいぜい利用させて貰おう。

 愛するラクスの為だ。


 愛するラクス。

 私を庇ってあんな身体に...


 何とかラクスを治したい。

 アンゴラに戻った私はエリクソンを振り切り、教会に駆け込んだ。

 バカ(エリクソン)は私の身柄を引き渡す様に迫ったが、討伐隊における数々の失態から教会は拒否してくれた。


 世界中の人達からバカに対する勇者の資質が問う声も大きかったのだ。

 噂を流布してくれた仲間達には感謝しかない。


 こうして私は、半年前からアキシア聖教国で保護されている。

 これで一先ず安心はしているが...


「ミッシェル、そろそろ時間です」


「分かりました」


 今日は教皇からの呼び出しを受けている。

 側近のカールスとバーバラを伴い、教皇の待つ部屋へと向かった。


「呪いの方は?」


「まだです、ヒュドラの呪いはまだまだ不明な点が多く」


「そう」


 反アンゴラに忙しい私に代わり、討伐隊の仲間だったカールスとバーバラが呪いの解除を調べて貰っている。

 彼等は元々教会兵士(救世軍)

 私を見張る目的も兼ね討伐隊に参加した。


 だが今は私の腹心となってくれた。

 いや本当はラクスの友としてだろう、

 それだけ彼は仲間から慕われていたんだ。


「ミッシェルです」


「入りなさい」


 到着した扉から聞こえる声にドアを開ける。

 部屋の中に居た教皇を始めとする、数名の教会幹部が私達に視線を向けた。


「今日はどのような?」


「まあ座りなさい」


 用件を尋ねる私に教皇は椅子を勧める。

 どうやら話は長くなりそうだ。


「先ずは1つ、ナバーロ帝国がメシア達を追放した」


「...そうですか」


 動揺を覚らせまいとするが、声が上ずってしまう。

 

 ナラム王国がナバーロ帝国へ協力を頼んだ件は教会も承知していた。

 締結するよう促す手紙をナバーロの皇帝宛てに教皇から親書を送っていたが、これが返答なのか。


「それで...メシアは?」


 我慢できないカールスが教皇に尋ねた。


「現在メシア様達は我が国に向かっておる」


「なんとも面倒な事になった物ですな」


「全くです、扱いに困りますね」


 教皇に代わり幹部達が口々にメシア達を邪魔者扱いする。

 だが怒る訳には行かない、こうなる事は予想出来た。


 最近のナバーロは教会に全く従おうとしなかった。

 既にアンゴラ王国と手を結んでいたのだろう。


「ラクスとハリスは?」


 一番聞きたい事を尋ねる。

 ラクス達がナラム王国の使者としてナバーロ帝国に向かった事はナラム王国に潜ませている教会の密偵達から報告で受けていた。


「無事ですよ、メシア達と合流をしていたと近隣の教会から報告がありました」


「そうですか、それは良かったです」


 良かった...ラクス達に何かあっては私達のしてきた事が水泡に帰してしまう。

 教皇はまだ使える人だ。


「ナバーロにはメシア達に追っ手を出さぬ様に教会から釘を刺しました...もしするなら」


「するなら?」


「破門です」


「なるほど」


 教会から破門を受けたらナバーロは困った事になる。

 国内の信徒達から反感を買うだけでは無い。

 教会が運営する孤児院や救護所も関係者全部を引き揚げてしまうだろう。


 財政の苦しいナバーロ帝国は大混乱になるのが予想された。

 この手は大国のアンゴラ王国に通用しないだろうが。


「それでメシア達はいつこちら(アキシア聖教国)に?」


 バーバラが私に代わり聞いてくれた。

 彼女は魔法の専門家で今はカールスの奥さん。

 いつでも戦える様にと子供を作らず、待っているのだ。

 魔王を倒し、そしてアンゴラ王国を滅ぼす日まで。


「4、5日後でしょう」


「分かりました」


 ラクスが来るんだ!

 まだ会わす顔は無いが、せめて一目だけでも。

 そしてハリスにも会いたい。

 ラクスの事を詳しく聞くんだ。


「それと、もう1つ」


「はい」


 なんだろう?

 教皇の顔に不快感が滲んでいる。


「昨日アンゴラ王国に送られる囚人が来ました」


「囚人ですか?」


「ナラム王国からです」


「...それって?」


 ナラム王国からアンゴラに送られる囚人。

 嫌な胸騒ぎがする。


「アンゴラの密偵です。

 罪状によれば、ナラムの人間と結託し、機密を盗み、ラクスを暗殺しようと企んでいた様ですね」


「.....え?」


 今教皇は何を言ったの?


「なんですって!」


「ラクスは無事なのか!?」


 バーバラとカールスが叫んだ。


「落ち着きなさい、ラクスはメシア様と居ると言ったでしょう」


「「...申し訳ございません」」


 ダメだ、私達三人とも、冷静さを欠いているじゃないか。


「囚人は?」


「今取り調べを行ってます。

 アンゴラにそのまま引き渡すのでは些か...

 しかし口が堅くて」


「そうですね」


 教皇の言わんとする事は分かった。

 つまり、私達が密偵からアンゴラの秘密を引き出せと言うんだ。


「では、私も参りましょう」


 カールスが前に出る。

 彼は異端の審問が得意だ、殺しはしないだろう。


「私も行きます」


 バーバラも?


「はい、色々と試したい事もありますし」


「では私も参ります」


「「ミッシェルも?」」


「お願いいたします」


 ラクスに何をしたのか知らない訳にはいかない。

 アンゴラの企みを潰してやる。


「では、お任せしましょう」


 強い決意に教皇は静かに頷いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] これは追い鰹ならぬ追いざまぁの予感
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