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19/21

第19話 合格

完結保障、全21話。

毎日投稿予定。

 稲田は自宅に帰ってからそのページを一生懸命覚えることにした。梶川はこの「ページの章」と言っていたな。大した量ではない。


(気休めだとも思ったのだが)


だが、いつまでも人に流されるだけの生活にも、いい加減嫌気がさしていた。せめて今度だけは、自分の意志で机に向かおうと決めた。


稲田は何となく気持ちが落ち着いてしっかりと勉強することができた。アルバイトから帰ると毎晩机に向かい、そのページを声に出して読み、何度も書き写して覚えていった。稲田はあの時梶川から言われた通りに実行し、その二か月後に試験が行われた。


試験会場に着くと、受験票を片手に緊張した面持ちの受験生たちがすでに席についていた。試験監督が淡々と注意事項を読み上げる声と、壁の時計の秒針だけが教室に規則正しく響いている。


公務員試験本番。稲田は答案用紙を見て驚いた。梶川が放り投げて落ちて開いたページの内容がそのまま問題として出ていたのである。しかも全問題の4分の1にも及んだ。


(解ける、解けるぞ。問題が全てわかる)


試験を受けている稲田は鳥肌が立った。思わず目頭が熱くなる。稲田はそっと目を閉じた。あの日、公務員試験の参考書を放り投げた梶川の姿が眼瞼に浮かんだ。


後で聞いた話だが、今回の試験はその項目だけが特に難しく、受験した他の人はあまり出来なかったらしい。稲田はその項目をすべて解くことができていた。結果は本人が一番驚いた。奇跡としか言いようがなかった。狭き門をくぐり抜け、稲田は無事合格を勝ち取った。

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