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異世界転生もの(仮)を書こうと苦悩する小説家(自称)の日常  作者: 104


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4/7

ファミレスで人間観察(結果的に)

 家で小説を書くと進まなかったので(言い訳かもしれない)、私はファミレスに行って作業をすることにした。ご飯も食べられるし、ドリンクバーにすればいつでもコーヒーが飲める。

 

 平日のファミレスは空いていた。家から歩いてすぐの場所にあったファミレスだ。私は、繁忙期も終わったあとなので有給を取り会社を休んでいた。

「お好きな席にお座り下さい」

 ホールには一人しかおらず、空いてるとはいえ忙しそうである。私はすぐ4人掛けのテーブルに座ろうとしたが思い直した。このファミレスは何か所かに電源があったことを思い出したからだ。注意深く4人掛けのそのテーブルを見ると電源がなかった。危ない。しかし、すぐ隣の4人掛けのテーブルにはあったのでそこに座った。


 来てそうそうパソコンを広げるのも申し訳ない気がして(一人で四人掛けに座る図々しさがあるのにだ)、まずランチを頼むことにした。


 ファミレスのランチを注文し、しばらくすると隣の4人掛けの席におばさんたちが座った。私と同じくらいの人からちょっと上まで見た目で判断するのはよくないだろうが、伝えるためには仕方ない。簡便してほしい。

 隣の席のおばさま(ちょっとだけ言い方を変えてみた)連中は、ドリンクバーだけ注文していた。もう井戸端会議をする気満々の状態だ。静かになったと思ったら一斉に席をたったのだ。きっとおのおのドリンクを入れにいったのだろう。と同じくらいの時に私が頼んだランチがやってきたので、まずは食べることに集中した。


 が、思わずおばさまの一言でつい耳を傾けてしまった。

「A子さん…不倫してるみたいよ」


 ここからの会話は、実際の会話をオブラートに包んでいるということだけは先に記しておく。一応、その人たちのプライベートを考えてしまった。あとから思えば当然の話である。


「え!あの旦那さんの惚気話をいつもするA子さんが?」

「あんな地味なA子さんがね~」

「でも最近、垢ぬけたんじゃない?と思ってたのよ!」

「最近知ったんだけどバツイチなんだって!」


 まず都合のいいドラマのようにA子さんのひととなりを話してくれる優しい人たちだった。


「相手は誰なの?」

 ちゃんと私が気になることに話が流れていき、さらに耳がダンボ(これって死語?)になっていた。


「背が高かったかな…」

「俳優でいうと?」

「ん~朝ドラヒロインの最初の旦那だったひと…名前が…」


 この後、俳優の名前が飛び交うがどれもピンと来てないようだ。


「ここまでの話を整理すると…私たちの知らない相手、男と一緒にいたのをみかけたってこと?」

「そうよ」

「それって不倫なの?」

「そういえば垢ぬけたって情報が不倫疑惑をなんだか確定させてたわよね」


 何だか不倫というワードから始まった話題が怪しくなってきている。


「実は…写メもあるの!」


 近頃、写メという言葉が死語だということを知った私は、ちょっと勝ち誇った気持ちでさらに聞いていると、みんなその写真に群がっていた。


「…確かに朝ドラに出てる男に似てるわね」

「A子さんとちょっと雰囲気似てない?」

 と、その男を見定める会話が進んでいると…

「この人知ってる!」

 と、ちょっと声が大きくなったおばさまにみんな注目した。

「この流れからは話しづらいんだけど…この男の人…A子さんの…」


 みんなが固唾をのんでいた。


「A子さんの弟さんよ!!」


 みんな一斉にがっかりした顔。


「よく恋人と間違われるらしいの。私も見ちゃいけないものを見たと思ってそっとその場から去ろうとしてたら呼び止められて…弟さんだって紹介された」

「でもそれが本当かどうかはわからないじゃない!」

 最初に不倫疑惑を話し出したおばさまが抵抗する。


「いやそれがその後ね…弟さんの奥さんが合流したとこまで見ちゃったのよ」


 この時点で完全に不倫疑惑は解消された。


「私の垢ぬけたって情報はどうなるの?」

と、もうどうでもいい話をぶりかえすおばさまに対しては、みんな何も言わず話題は他の話へと移っていった。


 ドロドロの話が展開すると思いきや、そうでもない結末。そんなドラマみたいな話が転がっているわけでもなく。ダンボな耳をいったんやめ、そもそもの目的(ランチを食べること)に集中した。


 これが小説のネタになるのかと言えば、ならないだろう。不倫を書いた小説でもと一瞬よぎったがすぐ却下した。でも…勘違いおばさまも印象に残ったし、ずっと垢抜けたことを主張するおばさまもキャラ的には面白そうだ。トイレに行き、その帰りにドリンクバーでコーヒーを取りにいって戻ると、そのテーブルのおばさまたちは帰り支度をしていた。


 いわゆる井戸端会議を終え、帰っていくおばさまを見送った私は、何も書かれていないパソコンの画面をみつつ、ただコーヒーを飲んでいた。

 小説を書くというよりおばさまたちの話を聞いただけで何故が疲れていた私は今日のところはとファミレスを後にした。


 結果的に人間観察で終わったがそれも小説のネタ集めと考えれば悪くない。いろんな人を観察し耳をダンボにするのも悪くない。私なりに収穫があった日だとポジティブに考えることにしたのだ。


 ただ収穫だと思っている。こんな井戸端会議をファミレスに来る度に聞いていれば何かしらのキャラのヒントに。そして話のタネが花咲かす予感がする。


 ポジティブな私は、その収穫だけで、まるで小説が書き進んだかのように喜び、家路にとついたのだ。

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