表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第3部・フローズン・ブルーの旅路】  作者: norito&mikoto
第5章 皇女殿下のブルン散策

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/53

第7話・怪我の程度と回復魔法~神の奇跡と呼ばれていても~

第5章 皇女殿下のブルン散策



     第7話・怪我の程度と回復魔法~神の奇跡と呼ばれていても~



 神殿にインスの容体を確認しに行ったリオンが戻って来たのは日が沈む直前。



「……どうだった……?」



 部屋を訪れたリオンが疲労感を隠さない顔で入って来たのを見て、ごくりと喉を鳴らしたジャンヌが問いかける。



「……先に結論をいうぞ? 治る。ただし、入院する」


「……………へ?」



 はあああっ、と深く溜め息を吐いたリオンが、腹減った、と呟きながらソファーに座り込み、テーブルに並んでいた菓子を手に取って口の中に放り込む。



 誰も手を付けていなかったと思しき、冷めきった紅茶で流し込み、あっさりと告げたリオンに、ジャンヌは間の抜けた声を漏らした。



「……行儀が悪い……」


「うるせぇ。行ったり来たりさせられたんだ。菓子くらい食わせろ。っていうか、飯にさせろ」



 眉を顰めたファンが苦言を呈すれば、ふてぶてしいまでに不遜な態度でリオンは次の菓子を手に取って口の中に突っ込む。



「……詳しい報告をしろ……」



 ますます眉を顰めたファンが溜め息混じりに促せば、へいへい、と舐めたように頷いたリオンはそのまま菓子を食べながら話を始める。



「まず、インスの怪我は殴打による不全骨折と神経挫傷……完全に折れてるわけではないから、骨折自体の治療はそうかからないらしい。問題は神経挫傷の方で、こっちは慎重に回復魔法をかけないと後遺症が残る恐れがあるんだと……で、何かよくわからないけれど、重ね掛けするのには時間がかかるらしくて入院になった」


「……リオン、何でそんなに怪我に詳しいの?」


「詳しいわけあるか。そのまま覚えて間違えずに伝えろってインスに脅され(詰められ)ただけだ」



 諳んじるように言ったリオンに驚いて、目を丸くしたジャンヌが問えば、若干遠い目をしたリオンが疲れたように返す。



「……えっと、不全骨折っていうのは、完全には折れてない骨の怪我の事です……神経挫傷は、神経の怪我です……」


「うん。分かるわよ? 流石に……」


「え? ……ご、ごめんなさい……」



 解説するようにアインが口を挟めば、ちょっと表情をやわらげたジャンヌが苦笑して、余計なことを言ってしまったと焦ってアインは小さくなる。



「……でも……ちゃんと、治るのね……よかった……」



 様子にますます苦笑して、けれどもジャンヌはホッと息を吐く。



 ファンもクロードも何も言わないが、一安心しているらしいことは分かった。



 むしろ、アインの物言いにファンが文句を言わないくらいには気が抜けている。



「……具体的な入院期間は分かるか?」


「……流石にそこまでは……少なくとも二日はかかるだろうって言ってただけで、実際のところはやってみないと分からないらしいぜ」


「……回復魔法は、患者の体力を使う……」



 ファンが追加の情報を求めれば、ちょっと首を傾げたリオンが答え、クロードが口を開く。



「「……え……?」」



 その言葉に、ジャンヌとリオンが目を丸くした。



「知らなかったのか? 回復魔法は、かけられると体力を使って疲弊する……」


「「……え……っ!?」」



 様子に、ファンが知っている範囲で話せば、初耳すぎる内容にジャンヌもリオンもギョッとする。



「……えっと、回復魔法は、その人がもともと持っている、治癒力を高めて治す魔法です……」



 恐る恐る、アインが解説を始めれば、今度はファンも遮ることなく無言で先を促す。



「だから、治癒力を支える体力や生命力がないと、怪我や病気が治っても、使い切って危なくなります……」


「危なく?」


「……最悪、命を落とす……」


「「「…………っ!?」」」



 オドオドして言うアインの説明に首を傾げたジャンヌに、クロードが明確に危険性を伝える。


 ヒュッと息を飲んで絶句したジャンヌたちがアインを凝視すれば、びくりと身を震わせたアインは無言で頷く。



「……だから、医呪(いじゅ)神官は、回復魔法をかけるかどうかも、慎重に判断する……」


「……それでか……」



 アインに代わってクロードが解説を続ければ、何か思い当たる節があったのか、リオンがぼそりと呟いた。



「リオン?」


「……前に、インスとアイン(こいつ)が大怪我して入院したことがあっただろ?」


「……ぁ……」



 首を傾げたジャンヌに、目でアインを示したリオンが言えば、ハッと思い出して小さく声を上げる。



「回復魔法でとっとと治せばいいのに、何だって何日も……というか、何か月もか? 入院してるんだろう、と思ってたんだよ……」



 ギュッと眉を顰めたリオンの言葉に、ジャンヌもファンも無言。



 その時の二人は、大量の出血や生命力の枯渇状態に陥っていて、助かるかどうかわからないほどの重傷だった。


 回復魔法が、無条件で怪我や病気が治せるものだったのなら、どんな重傷者であっても助けられただろうし、怪我で落ちた体力の回復だって早かったはず。



 そうではなくて、むしろ回復魔法などかけられないほどの重傷だったからこそ、あれほど長く入院することになったのだと、漸く知る。



「っ!? まて……! ということは、つまり……」



 ハッと、気づいたファンが()()()を睨んだ。



(……では、魔族との一戦の際に、アイン(コレ)が一切の負担なく、一瞬で疲労まで回復させた()()は一体何だったのだ!?)



 それに……



「……万が一、誰かがこの先重傷を負うようなことがあり、それが例えば人里離れた魔の森の中などであった場合……」


「「……っ!!??」」



 呟くようなファンの言葉に、ジャンヌとリオンもハッとする。



(((……誰が、どうやって、治療する……?)))



 物理的な医療措置はもちろん、仮に、アインに回復魔法をかけさせるのだとしても……


 場合によっては、それができない可能性。



「……おい。ジャンヌ……本当に、この先、進むのか……?」


「っ! それは……っ!」



 冷や汗を流してジャンヌを凝視するリオンの問いかけに、ほんの一瞬、ジャンヌは言葉に詰まる。



 だが……



「っ。……進むわ。だって、そうしないと、誰もカルロスの宝石を、取り戻そうとしてくれないじゃない……」



 何かを吹っ切るように宣言したジャンヌの答えに。



「「「「………………」」」」



 暗雲たる思いを抱きながらも、誰も何も口にすることはなかった。

第7話をお読みいただきありがとうございます。


神殿へ向かったリオンからの報告で、インスの怪我の詳細と「回復魔法」の過酷な真実が明らかになります。


回復魔法は患者自身の体力を激しく消耗させるものであり、アインが過去に起こした負担のない治療が、文字通りの『奇跡』であったことを知るジャンヌとリオン。


人里離れた地で重傷を負えば命を落としかねない現実を前に、リオンは「本当にこの先進むのか」と直球の問いを投げかけます。


それでも「自分が進むしかない」と悲壮な決意を口にするジャンヌと、暗雲たる思いを抱えながらも沈黙する一行。


絶望的な状況の中、彼らはこの過酷な旅をどう続けるのか!?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「奇跡前提の無理ゲーWW」「護衛陣の胃が死んだWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ