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姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第3部・フローズン・ブルーの旅路】  作者: norito&mikoto
第3章 ブルンに揺蕩う身分差恋愛

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第2話・彼女にあるのは善意だけ~押し付けられた絶望に~

第3章 ブルンに揺蕩う身分差恋愛



      第2話・彼女にあるのは善意だけ~押し付けられた絶望に~



 結局、好き勝手に話を聞きたがったジャンヌが、ブルンでの滞在期間の延長を勝手に決めた。



 それと言うのも……



「医者に診て貰たのが五年前に病気になった時だけ!? ちょっと! 定期的に診て貰わないと、良くなってるのか悪くなってるのかも、別の病気の影響かもしれないのも何も分からないままじゃない!!」


「医者に診て貰うのにいくらかかると思ってるんですか!? 街の薬屋から薬を購入するのだってお金がかかるのに!!」



 リリーの弟、カミルがちゃんと医者の診察を受けたのは五年前に病気になった時だけで、以来、ずっとその時の処方箋のまま薬を出して貰っているというのだ。



「あのねえ! 体調っていうのは、日々変化するのよ!? ずっと同じなわけないんだから、定期的にちゃんと診察して貰って、その時々の体調に合わせた処方をして貰わないとダメに決まってるでしょう!!」


「……一応、シェイドさんが体調を見て、身長や体重の変化に合わせて微調整はしてくれています……医者ではありませんが、薬を取り扱っていらっしゃるので、そういった目利きはきちんとした方です……」



 さも当然の口調で苦言を呈するジャンヌに、言っていることは分かるが……とセージは反論を試みる。



「……貴族のお嬢様方には想像もつかないかもしれませんが、平民は医者に掛かることは本当にまれです……何しろ、主神殿の医学部できちんと勉強され、資格を取られた方々です……診察料は、決して安くはないのです……」



 人によっては、一生に一度か二度、出生時と死亡時くらいにしか医者に掛からない者も多い。


 ましてや、場所によってはそもそも医者がいない。



 ではどうするか?


 民間療法に頼るしかなく、それは経験則から来る対処療法と、自然の薬草などを採取して作る薬類での治療だ。



 ブルンは皇都にも近く、神殿に神官呪師(しんかんじゅし)もいるため、万が一の場合は幾許かのお布施を支払って治療して貰うこともできる。


 また、神殿にはちゃんとした医者もいるので、魔法による治療を受けないとしても診て貰うことはできるが、やはり平民には敷居が高い。



「……そんなにお金がかかるものなの?」


「いえ……決して、神殿側が金額を指定することはないはずですが……」



 首を傾げたジャンヌに、さも当たり前のようにファンが応える。



 実際、神殿側がいくらになる、とお布施の額を指定することはない。


 指定はされないが……



「そうは言われても、専門の方に診て頂くのですよ!? 命に係わる時だってあるのに、命の値段をケチるような真似ができるはずないでしょう!!」



 この、悲鳴のようなセージの主張が現実だ。



 医者への支払いを渋る。


 神殿へのお布施をケチる。



 それは即ち、診て貰いたい、治して欲しい相手の命の価値を、その家族や仲間、友人など、関わりのある者が勝手に決めるようなもの。



 こいつの命はこの程度のものだ、というような真似ができるはずがなかった。



「「………………」」



 真剣に言い募るセージに、ジャンヌもファンも何とも言えない顔をする。



 そも、皇族や高位貴族であるこの二人にとって、お布施をケチる、というのが理解できない。


 命の値段を決めるようなもの、と言われても……



(……街の薬屋に支払う薬代は言い値で良くて、値段の制限なんてないお布施は決まっていないから払えない、ってことかしら……?)


(それならその薬代を布施にして診て貰えばよかろう……むしろ、その方が確実ではないか……?)



 平民のこだわる点が全く分からなかった。



「あ、じゃあ、わたしたちの同行者に神官の修行を積んでる子がいるから、一度その子に診せるのは? 正規の神官でも医者でもないから、お布施とかいらないでしょうし!」


「な……っ!? 正気ですか!!」



 ふと思いついたジャンヌがぽん、と手を合わせて言えば、その相手が誰を指しているのかを瞬時に悟ったファンがギョッとする。



「……ぇ……?」



 二人の反応の差に、ポカンとするセージを置き去りに、ジャンヌとファンの話し合いというか言い合いは白熱していく。



「当然でしょう? あら? それとも、お布施を受け取らないとダメなのかしら??」


「それ以前の問題です! アレに診せて、何か起こったらどうするおつもりですか!!」


「大丈夫よ! リオンが言ってたわよ? 出発前に野営訓練をした時、事故が起きたけど、アインがすぐに対処してくれたから無事で済んだって、ステールから聞いたって!」


「そもそも事故が起きたこと自体が問題です! その事故がアレがいたが故に起きた可能性すらあるのですよ!!」


「それはないわね! ステールから知らないものは使うな。確信が持てないならインスかアインに確認しろって、うるさく言われてるって言ってたし!」


「どこに信用できる要素が!?」


「二人とも知識、ちゃんとしてるらしいわよ? 医務殿でお墨付き貰ってるんですって! ステールから聞いたって、リオンが言ってたわ!」


「全く信用できません!!」


「いいから! アインに診せるだけならただじゃない! 多分!」


「「多分!?」」



 流石にその言葉にはセージもファンと口をそろえて声を上げてしまう。



 二人が言っているのが一体誰のことなのかは全く分からないし、信用していいのかダメなのかも全く分からない。


 分からないが……



「そうと決まったら、明日にでも行きましょう!!」


「決まっていませんっ!!」



 ジャンヌとファンの言い合いは平行線のまま。



(……あ、ダメだ……お貴族様の道楽に巻き込まれた……ごめん、リリー。カミル君。小父さん、小母さん……)



 けれど、きっとジャンヌが押し切ると確信できてしまって、顔を青ざめさせたセージは心の中でリリー一家に謝罪を告げた。


第2話をお読みいただきありがとうございます。


カミルの病状を聞いたジャンヌの純粋な善意から、ブルン滞在の延長が決定しました。


セージの口から語られるのは、高額な治療費が払えず医者に診てもらうことすら困難な、平民の厳しい医療事情。


しかし、そんな現実をあっさりと飛び越え、同行しているアインに診察させようと言い出すジャンヌ。


全力で阻止しようとするファンとジャンヌの言い合いを前に、ただ巻き込まれた事実を悟って絶望するセージの不憫さ。


果たして、ジャンヌの真っ直ぐな善意はセージたちに何をもたらすのか?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「セージの不憫、極まれりWW」「いや、アイン(幼児)に診させるってWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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