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姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第3部・フローズン・ブルーの旅路】  作者: norito&mikoto
第3章 ブルンに揺蕩う身分差恋愛

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第1話・彼女の信じる二人の関係~その思い込みに巻き込まれ~

第3章 ブルンに揺蕩う身分差恋愛



     第1話・彼女の信じる二人の関係~その思い込みに巻き込まれ~



 サルビス元子爵家が領地と共に爵位を返上することになったのは、不幸が積み重なった結果。



 まず、今から五十年ほど前に周辺で魔物の大量発生が起こった。


 皇都にも近い位置での大量発生だ。


 当然すぐさまサルビス家が所有する領騎士団が対処に当たり、皇都から皇国騎士団、更には呪師(じゅし)も派遣されて早期の解決が計られた。



 その時の被害が回復しきらないうちに、天候不順による不作が続き、食糧不足から野生動物が領内の村や町を襲撃する事件が相次いだ。



 食糧難は何も野生動物だけではなく、人々にも直接的に打撃を与える。


 物価は高騰し、途中で中抜きを行う者まで出て、物が行き渡らず、野盗に身を落とした者らが道行く旅人を襲い、街の治安までもが悪化した。



 先代……セージの曾祖父の代から始まった一連の不幸に、サルビス家の資産はあっという間に溶けて消え、どれだけ手を打っても追いつかない状態に陥り、とうとう爵位と共に領地を返上することになったのは今から二十年前。



 セージが三歳になったころのことで、それ以来、ブルンを始め、元サルビス家の領地だった地域は直轄領として国税によって支えられ、復興への道を歩んでいる。



 教養こそは家族、またその親戚らによって与えて貰ったものの、身分としては平民。


 貴族向けの宿で従業員として雇ってもらうことはできても、直接的に客と接することは少なく、けれども宿の顔としての役割を果たすドアマンとして勤めていた。



「……先ほど、道行く女性と目を合わせていたことは事実です。が、決して後ろめたい行いはしておりませんし……お嬢様が仰るような恋人同士でもありません……」


「え~っ!! うそっ!! あんなに熱く見つめ合ってたのに!?」



 簡単な身の上話と共にそういったセージに対し、ジャンヌはあからさまに不満そうな声を上げる。



「「……っ……!!」」



 あまりにあけすけな物言いに、ファンもセージも顔を赤らめて絶句し、



「お嬢様っ!」



 すぐさまファンが咎めるように呼んだ。



「だって! 完全に恋人同士の視線だったわよ!!」


「たとえそうであったとしても! そうあけすけに口にするようなことではありません!!」


「いえ……! ですから……っ!!」



 不満そうに唇を尖らせるジャンヌに、ファンが説教すれば、顔を赤くしたセージが焦って口を挟む。



「わ、私とリリーは、単なる幼馴染で! 決してそのような関係では……! そ、それに! 私のような元貴族の貧乏人が、街でも人気の高い彼女と恋人になど……!!」


「へえ、二人は幼馴染なのね! わたしとディアスと一緒じゃない! 相手の女の人はリリーっていうのね?」


「「……っ……!!??」」



 焦りすぎて口を滑らせたセージに、興味津々の笑顔でジャンヌが言えば、思わぬ飛び火にファンも顔を赤くして絶句し、余計なことを言ったと気付いたセージは顔を青くして絶句した。





 リリー=フィールはブルンの街で有名な庶民向けの宿屋で看板娘をしている女性。



 年齢は二十歳。


 桃色の髪と黄色の瞳を持った愛嬌のある美人で、同年代の独身男性はもちろん、幅広い年齢層の男性たちまでもが彼女と結婚を前提にお付き合いをしたいと迫っている。



 セージとは、リリーの両親がサルビス家で働いていたことから幼馴染として育った。



「……確かに、リリーが成人したら、結婚を前提としたお付き合いはどうか……という話が両家で出たことがないわけではありません……ですが……」



 リリーが成人する直前、リリーの五つ下の弟カミルが病に倒れ、それからずっと闘病生活を続けている。


 命に係わる大病、と言う訳ではないが、薬をやめるとすぐに倒れてしまい、この五年、殆ど寝たきり。



 当然、医者に掛かり、薬を購入するにはお金がいる。


 けれど、平民であるリリーの家も、爵位を返上して平民となったセージの実家にも、カミルのためにずっと薬を購入し続けられるほどの資金はない。



「街で一番の薬屋であるナペル薬店が、カミル君のためにずっと薬を融通してくれているんです……どうも、跡取り息子であるシェイドさんが、ずいぶんとご家族に無理を言って手配して下さっているようで……」



 もちろん、このシェイドという青年もリリーとの結婚を考えている。



「カミルのためにも家族にならないか?」



 と何度か持ち掛けられているらしい。



 なぜそんなことをセージが知っているかと言えば、たまに休みが合うと、今でもリリーと会ったり、カミルのお見舞いでフィール家に行くことがあって、そこで話を聞いたから。



 また、サルビス家にもナペル薬店は薬を卸していて、シェイド本人からセージに対してカミルの薬代は自分が肩代わりしている、と言われて牽制された。



 要するに、セージの家も、リリーの家も、ナペル薬店に薬代の借金をしている。



(……というか、どうしてお客様にこんな、個人的な話をすることに……???)



 ジャンヌに聞かれるがまま、なぜか身の上話をしてしまっているが、どうしてこんなことになったのか、セージには訳が分からない。



 最初、話が聞きたいと言って呼び出したファンの方はもはや話の流れに付いて行けなくなっていて、ジャンヌを止める事すら放棄していた。



 ファンがジャンヌを止めることを諦めてしまったのが、セージの不幸と言えるだろう。



「……あの……それで、私はなぜ、呼ばれたのでしょうか……???」



 まさか、こんな個人的な話が聞きたかったわけではなかろう、とセージが困惑気味に問いかければ。



「そんなもの! 二人に幸せになって欲しいからじゃない!! カミルって言ったっけ? その弟君の病気も、早く治してもらいましょうよ!!」


「……ぇ……???」



 ぐっと、胸の前で両手を握りしめて力説するジャンヌに、唖然とする。



「……私は、貴様らが怪しい目くばせをしていたから、何か良からぬことを考えていないか確かめたかっただけだ……」


「……えええっ!!!??」



 続けて、すっかり疲れ切った様子でぼそりと呟いたファンの言葉に、セージの悲鳴のような叫びが木霊した。


第1話をお読みいただきありがとうございます。


滞在中の宿のドアマンであるセージに目をつけたジャンヌの、強烈な思い込みから始まります。


好奇心全開でセージを問い詰めるジャンヌと、横で渋面を作るファン。


セージの口から語られる元貴族としての複雑な生い立ちや、幼馴染であるリリーとの関係。


そしてリリーの弟カミルを巡る切実な事情など、少しシリアスな背景も明らかになりました。


そんな現地の人々の重い現実を知ったジャンヌは、どのように首を突っ込んでいくのか?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「セージ、サルビス家の受難を受け継いでそう(´;ω;`)」「ちょっ!? ファン! 諦めちゃダメWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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