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姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第3部・フローズン・ブルーの旅路】  作者: norito&mikoto
第2章 皇孫皇女の珍道中

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第10話・呼ばれたドアマン~その正体に驚いて~

第2章 皇孫皇女の珍道中



       第10話・呼ばれたドアマン~その正体に驚いて~



 確認は必要か、と思わず口に出してしまったせいで、今すぐ突撃しそうになったジャンヌを慌てて止めたファンは、宿の者に言ってドアマンの男を呼ばせる。



「何か、粗相がございましたでしょうか?」


「いや……少し聞きたいことがあるだけだ。問題はない」



 ドアマンを指名して呼び出す、などということをすれば当然宿側からすると問題があったのか? と顔色を悪くする案件。



 しかし、ファンは聞きたいことがあるだけ、問題はない。


 と返し、人目や耳を避けるために個室を要求する。



 ますます顔色を悪くしつつも、食堂レストランの個室を一つ押さえ、そこにドアマンの男を連れてきた。



「……お呼びだと伺いましたが……?」



 薄い黄色の髪と、鮮やかな緋色の目をした、なかなかに洗練された所作の男。


 年齢は二十を少し過ぎたくらい……クロードよりも少し上、と言ったところか……



 それにしても……



(……ふむ? 貴族、か……? 平民の所作ではないな……)



 その挨拶を目にして、ファンはスッと目を細めた。



 案内させた宿の者は外に出し、部屋の中にはジャンヌとファン、そしてドアマンの男だけ。



 わくわくした表情を隠さないジャンヌと、冷ややかに睨む……実際のところは普通に観察しているだけ……のファンとを、表情には出さないように気を付けて困惑気味にドアマンの男は向き合う。



「……さきほど、宿の前を通る桃色髪の女と目配せし合っていたであろう?」


「……っ!!??」



 ズバッと切り込んだファンの言葉に、思わずドアマンの男は顔を赤くし、肩を跳ね上げた。



「恋人!? そうよね!!」


「そ……い、いえ……その……!」



 途端に喰いつく勢いで問いかけたジャンヌに、男は真っ赤になって口籠る。



「……お嬢様……!」



 話が進まないから黙ってくれ、とファンが少し強く呼んでジャンヌをいさめた。



「……申し訳ございません……ご不快な思いを……」


「違う」



 その、ファンの呼び掛けにドアマンの男の方が冷静さを取り戻し、姿勢を正して謝罪を口にすれば、ファンは短く切って捨てる。



「……は……?」



 頭を下げたドアマンが困惑気味に顔を上げた。



「貴様。名前は?」


「……セージ、と申します……」



 色味の違う、同じ赤系の目と目が一瞬交わり、冷ややかに問いかけたファンに対して、ドアマンは一瞬だけ息を飲み、答える。



「貴族であろう? 子爵家か、伯爵家とも付き合いがあるか……その親戚筋か……」


「……っ……!?」



 確信をもって問い詰めるファンの言葉に、セージは目を見開いて絶句した。



 なぜ……!?



「……所作を見ればわかる……この宿の者は伯爵家に仕えることができる程度の所作を身につけてはいるが、生まれはよくて男爵家だろう……平民もいるようではあるが、客と直接かかわるような場には殆ど出てきていない……」



 無言の驚きを読み取って、ごく当然のこととしてファンは言う。



 ここは中流貴族向けの宿。



 そこに当てはまるのは伯爵家と子爵家。



 しかし、その二つには明確な差が存在している。



 それが所作。



 伯爵家の生まれの者は、場合によっては侯爵家や公爵家、場合によっては皇族に縁づくこともある。


 だから上流階級の所作を身に着け、皇族の前に出る事になっても困らないようにと、幼いころから厳しくしつけられる。



 対して、子爵家の生まれだと、上に縁づいても伯爵家が限界。


 また、伯爵家の者が下に縁づく時も子爵家が限界。



 いや、決して法で禁じられているわけではないのだが、正直、育つ環境も考え方も、上位の貴族と下位の貴族とでは違い過ぎて、すべての者が苦労することになる。



 ましてや、男爵家の生まれともなると、平民とあまり差はなく、教育の範囲も限られる。


 だから、特に高位貴族からすれば所作の違いで生まれが分かるのも当然。



 セージの所作は伯爵家由来の子爵家相当、と言ったところだ。



「……正式名は……?」


「……レイモン・カーレット・セージ=サルビス、と申します……」


「「……っ……!?」」



 鋭い視線で射抜いて問い詰めたファンに、ほんの一瞬、目を瞑って、セージは改めて一礼した。



 ボウ・アンド・スクレープ。



 貴族男性の正式な礼を、丁寧な所作で行い、ゆっくりと身を起こす。



「……私は貴族ではありません……当主である祖父が、私が幼い時に爵位を返上いたしましたので……」



 その説明を聞く前に、ジャンヌもファンもそれを察していた。



 なぜなら……



「……領政を維持しきれずに返領した、サルビス元子爵家の生まれだったか……」



 なるほど、と一つ頷いたファンに、セージは少し困ったように微笑んだ。


第10話をお読みいただきありがとうございます。


今回は、ストッパー不在のジャンヌとファンによって呼び出された不憫なドアマン・セージの受難です。


他人の色恋沙汰に食いつくジャンヌはさておき、最近ポンコツすぎたファンの「有能さ」が光る回となりました。


相手のちょっとした動きから、その階級や出自までを正確に見抜いてしまう鋭さには、思わずセージも驚きます。


ただの平民ではなかったセージ。


この呼び出しはどんな結末を迎えるのか?


次回もお楽しみに!


【シリーズ一覧はこちら!】


本編と番外編、それぞれのシリーズ総合リンクです。


過去の関連作品などはこちらからお読みいただけます!


▼ 本編【CCC】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s7443j/


▼ 番外編【STO】シリーズ 総合リンク

https://ncode.syosetu.com/s8365j/


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「ファン……ただのポンコツじゃなかった(゜д゜)!」「宿屋の受難が止まらないWWW」と感じていただけましたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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