表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/42

最終話:紅の堕天使

永年、争い続けていた天界が魔界と和睦を結んだ。


和睦を結んでからは双方共に平和へと歩んでいくように見えた。


しかし、和睦から百年後に天界は一方的に魔界との和睦を破棄し戦を仕掛けて来た。


対して魔界も予想していたのか軍を派遣した。


互いに一歩も引かずに続けられた戦いは多くの死者を生み出す事になった。


そして双方の全国力を投入した嘗てない大戦である天魔大戦にまで発展した。


この戦いでの天使と悪魔の戦死者の数は、天文学的な数字を叩き出した。


戦いは七日七晩も続いたが他の世界から一方的に和睦を破棄した天界が悪いと声が上がり出し戦を続けられなくなった天界の方から和睦を申し込んで来た。


謀略の疑いを魔界は示したが互いの国力も限界に達した事から和睦を結ぶ事に踏み切った。


この戦でも飛天夜叉王丸は活躍して名前を轟かせた。


彼の隣には真紅の鎧を身に纏い金の長髪を靡かせ大鎌を奮い獅子奮迅する妻の姿がいた。


素顔は誰も知らないが綺麗な女性で常に夜叉王丸の傍にいて背後を守り和睦の席でも隣に立っていた。


そして大戦が終決すると一つの噂が広がった。


飛天夜叉王丸の傍に付き従う妻が、かつて天界の英雄と謳われたヴァレンタイン子爵令嬢ではないかと・・・・・・・


一度目の魔界と和睦を結んだ日にヴァレンタイン子爵令嬢の姿が消えた三日後に夜叉王丸に妻が出来たからだ。


更にヴァレンタインは捕虜になった経験もあるから、その時に夜叉王丸と恋仲になったと噂が広がりヴァレンタインの家は不名誉として取り潰しになり婚約者だったユニエール侯爵は今までの悪行を知られ軍法会議に掛けられ投獄された。


一方のヴァレンタインは消息不明のまま死亡扱いとなった。


しかし死体が見つからないのが拍車を掛け夜叉王丸との悲恋物語として詩や劇で悲劇のヒロインになった。


そして魔界でも・・・・・・・・・


「嗚呼、なぜ君が天使で私は悪魔なんだ?こんなに愛し合っているのに結ばれないなんて・・・・・・」


「嗚呼、私もよ。どうして天使と悪魔なのかしら・・・・・・」


夜叉王丸役の悪魔が切なげな声を出しヴァレンタイン役の悪魔に手を差し出す。


「・・・・今は、結ばれなくても来世ではきっと結ばれよう。ヴァレンタイン」


「・・・えぇ。来世ではきっと、きっと結ばれましょう」


差し出された手を取り二人は互いに短剣で刺し違える所で幕は下りた。


夜叉王丸とヴァレンタインの悲恋劇を最高級の特等席で見下ろす一組の夫婦の姿があった。


黒色のフロック式軍服に身を包んだ男の隣には赤いドレスを着た金髪の女性が座っていた。


劇が終えると席から立ち上がり舞台場を後にした。


「・・・・・自分の恋愛を劇にされるのは恥ずかしいな」


煉瓦の道を歩きながら苦笑混じりに言う男は地獄帝国男爵、飛天夜叉王丸。


「私もよ。もう恥ずかしくて見てられなかったわ」


隣で笑う女性はヴィクトリア・レオノチス・ヴァレンタイン。


正確にはヴァレンタイン男爵夫人になる。


天界と和睦を結んだ日にヴァレンタインは夜叉王丸と一緒に魔界に帰って式を挙げて夫婦になった。


初めは疑いと侮蔑の眼差しで見られた。


そんな眼差しを払拭したいと思い戦では積極的に自分に掛けられた疑いの眼差しを解消する為に元仲間である天使と戦い続けた。


それが功を奏したのか今では誰もヴァレンタインを悪く言う者はいない。


「さぁて、早く帰らないとリアが怒るから急ぐか」


「えぇ。そうね」


二人は頷くと背中から二つの翼を出した。


夜叉王丸が黒い鴉の羽でヴァレンタインも“堕天”の証である漆黒の羽を出して天高く飛び立った。


演劇や詩では悲恋として描かれているが本当は夫婦になったのを知る者は限られている。


後にヴァレンタインは夜叉王丸の背中を血まみれになりながら護った事から


“紅き堕天使”


という異名を取り多くの尊敬を集めるのは後世の話しである。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ