↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デリリウム・ブラックリリー 〜ギャルと優等生の異世界サバイバル〜  作者: 霧色瑪瑙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/48

超越

 また、轟音がした。


 家の壁が……まるで、豆腐でも崩すみたいに破壊された音だった。

 

 ヒトの、ゼノサイト。

 

 その力は、最初に会った単眼象のゼノサイトとは比べものにならなかった。

 クレースに力を分けられる以前の私が、目で追えないレベルの速度。それに見合った、破壊的な膂力。

 共生──結晶化の力を使ったとして……せいぜい、相手できて、1体だ。


 

 それが……目視できる範囲で、7体。


 

 クロエの残滓か、あるいは私の魔女としての力を警戒しているのか、すぐに襲いかかっては来ないが……時間の問題だろう。


「…………やばくない?」


「……やばいだろ、どう考えても……」


 これまでに見せた以上の切り札のようなものを、私は用意できていなかった。服の中にナイフを忍ばせてはいるが、何かの役に立つとは思えない。恐らくは、結晶化した触手を伸ばすほうがまだ強力だった。

 

 それだって……この場全てのゼノサイトを制圧するような力は、絶対に、無い。


「紗夜……逃げろ」


「え!?」


「私が、どうにか……時間を稼ぐから……その間に」


 クロエは、紗夜を狙わせると言っていたが……今は、警戒を優先して襲ってきていない。私が全力で暴れ散らかして、こいつらが生命の危機を感じれば……紗夜が逃げられる目はある。

 希望は、無くは無い、と……思う。


「…………逃げるって……どこに、どうやって?」


「………………………………」


 紗夜の言う通りだった。

 私が2、3体引きつけたところで……逃げる手段も、逃亡先のアテも無かった。

 

 やはり……頭が、回っていない。


「ねえ、芽愛……」


「待て、待て……今、考えてるから……」


 幸い、ゼノサイトは……まだ、襲ってこない。クロエが、運命の魔女が、手引きしているようなのに、だ。

 

 まだ、少し……考えられる。何か、この場を切り抜けるような、アイデアを思いつくはずだ。私は、そうだった。

 生まれつき、頭が良くて、要領も、大体の場面では、良くて……大抵のことを、解決できた。

 だから……この場面だって、きっと……私の力で、なんとかなる、はずなんだ。


「芽愛……」


「待て……もう少しで……、多分……」


「ねえ、芽愛」


 びくり、と。その声に、自然に体が震えた。

 

 紗夜のその呼びかけは、少しだけ、普段より力強く……まるで、紗夜の初見の印象そのままみたいに……怜悧な知性を感じさせるものだった。


 そして紗夜は、心からの想いを吐き出すみたいにして、少しだけ表情をくしゃくしゃにして……私に向かって、口を開いた。


 

「────なんで、頼ってくれないの?」



 紗夜の、言葉。

 予想できていなくて、私の中に、すっと入ってはこなかった。


「え…………?」


「私達、二人で、この世界に来て……芽愛だけ、頑張ってるみたいだった。最初、そう思って、私も頑張ってみたけど……バイトしたり……でも、まだ、芽愛のほうが頑張ってた」


「紗夜……?」


「ねえ……」


 そう呼びかける紗夜の目から、少し、煌めき……涙が流れてるのが見えた。



 

「私も、芽愛の力になりたいよ」


 

 

 紗夜がそう言った瞬間、空気が────爆発した。


 

 違う。これは──流れの、一部だ。

 

 紗夜を中心として、空気が、魔力が、灝素(エーテル)が、竜巻のように、台風のように流れていた。

 

 ここは、その奔流の……台風の目だった。

 

 これだけでも、ゼノサイトが近付けないくらいの力を感じるが……それだけじゃない。そもそもが、違う。


 

 これはきっと────『余波』だった。

 


 ゼノサイトが奇怪な鳴き声を上げ、エネルギーの暴風を掻い潜って襲いかかってくる。

 まずい、と。クロエの残滓への、あるいは私の──時の魔女の残滓への警戒心を振り払ってでも、素早く攻撃するべきだったと……そう気付いて、襲ってきているようだった。


 奔流の中心。恐ろしい静寂の中にいる紗夜は────元々の容姿に加えて、神聖さを纏っていた。


 紗夜は、いつの間にか、その服装が変わっていた。


 一見して、巫女のようだった。

 だが、よく見れば、明らかに異なる。

 

 白い服。いや、装束、か。

 何と表現するべきか、所々が異様に長かった。

 袖から垂れる布が最も印象的で、ちらりと見える裏地の鮮やかな赤が、私に巫女を連想させていた。


 

 まるで────流れる時代を感じさせるような、『超越』という単語を想起させるような衣装だった。


 

 紗夜が、自身が身に纏うそれを見て、目を見開いて打ち震えていた。


「────ッ! 魔法……少女っ!!」


「…………いや、あんまり、そういう感じじゃないけど……」


 思わずつっこんでしまった。

 魔法少女っぽい感じでこそないが、これは、この装束に身を包んだ紗夜は────紛れも無く、力を持っていた。

 

 レベル2。

 間違いなく、そう呼ばれる力だった。


 クロエが前に言っていた。

 紗夜にある魔女の素養は、私から伝染したものだと。そういう意図の言葉を吐いていた。


 この場面で、紗夜が、覚醒したのだ。

 

 私の覚醒を経路に。

 

 力になりたいという、その一心で。


 私が紗夜に見惚れていると、1体、ゼノサイトが暴風の壁を超えてきた。


「紗夜、後ろ────」


「消えちゃえビーム!」


 私が言い切るより先に、紗夜が何事か……恐らくは、技名を唱えた。


 そして──驚くべきことに、実際に──紗夜の指先から、キラキラした、そう、過剰にキラキラしたビームが出た。


 さらに、あろうことか……そのビームが命中したゼノサイトが────爆散した。

 

 貫通、とかじゃない。

 肩に当たっただけなのに……風船が弾けるみたいに、爆散した。跡形も残っていない。


 

 破壊の質が……能力の質が────違う。


 

 私の能力やクロエの能力は、概念的で強力(そして恐らくは高位)ながら、物理的な破壊力には欠けていた。

 見るに、紗夜の力は真逆だった。


 物理的な破壊に、特化している。


「……す、ごいな……めちゃくちゃだ」


「任せて!! 全部倒しちゃうから」


 覚醒して少しハイになった紗夜は、その言葉通り……『消えちゃえビーム』の他、『死んじゃえビーム』や『逝っちゃえビーム』(ちょっとえっちじゃない?)によって、襲い来るゼノサイト次々と爆散させた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。