ファッションショー
「どう!?」
「……似合ってるよ」
「含みがある! もう一回着替えるから!」
無いよ。含みなんて無いよ!
朝食を済ませ、私達は服屋に来ていた。
アパレルショップ……という感じではないが、門前払いされるわけでもなく、試着も可能らしかった。
そして……紗夜のファッションショーが始まった。
歓迎すべき事態だった。はっきり言って私に利しかない。
褒める言葉が遅れたのは、別にマイナス方向の含みを持たせたわけじゃない。
単に……見惚れて言葉が出なかっただけだ。
「どう!?」
勢い良く開かれたカーテン。自信満々でポーズを取る紗夜。
まず目に入ったのは……露出した肩だった。
なんでそんな服置いてるんだよ。制服くらいの露出度で痴女扱いされる土地柄だったはずだが?
露出する部分の問題だろうか。
そういえば……中世西洋あたりの価値観はそんな感じだった気がする。ほぼ見えてるだろってくらい胸を露出したドレスを着てたくせに、足を露出するのは僅かでもはしたないとされたとか。そういうことか?
だとするのならば、肩を出すくらいは問題無いだろう。
だが……。
「エロい。却下」
問題無かろうが、衆目に紗夜の肩を晒すわけにはいかない。
「普通でしょ!?」
「普通じゃない。襲われたいのか?」
「襲われないでしょ、このくらいで……。っていうか、襲われても撃退すればいいじゃない。魔法で」
「……どの魔法で?」
「……………………」
私と紗夜が知る限り……人間をしっかり脅かせるような魔法は、少なくともレベル2以外には無い。手記にも新たな魔法の記載は無いし……。精々が、私が単眼象のゼノサイトにやったように、光で一瞬目眩しをするくらいだろうか。
「わかったわ……」
折れたのか、もう一度カーテンが閉まる。
紗夜はかなりの量の服を試着室に持ち込んでいた。もうしばらくはこのやりとりが続くだろう。
別に……紗夜は何でもよく似合う。
小顔でかつ顔の造りが良いというところまではもう分かりきった話だが、その他スタイルも非常に良い。
ここでの生活が続き、親の制限無しに糖分や炭水化物を好き放題摂っていればどうなるかは分からないが……とにかく現状は腰が細く足が長く、理想的なスレンダー体型だった。
だから、別に着る服なんて、何でも良いといえばそうなのだ。紗夜は何を着たってそのままランウェイを歩ける。
次に露出の少ない服が来たら、それで決めてもらえるよう絶賛してやるつもりだ。
衣擦れの音が止んだ後、また勢い良くカーテンが開いた。
「どう!? 今までで一番良いと思うけど!」
そう言って紗夜が披露したのは、これまでとは少し趣の異なるコーディネートだった。
黒のロンTの上に白いグラフィックTシャツを重ねたレイヤード。下はゆったりとしたベージュのスラックスショーツに、黒のニーハイソックス。太ももは見えていない。
ストリート系のカジュアルな雰囲気が、黒いロングヘアとのギャップを生み出していて非常に魅力的だった。
あまりにも現代的すぎるけど……。
「いいと思う」
「やった!」
変な間が開く前に、何も考えずにさっさと口にした。
かわいい。正直、滅茶苦茶に可愛い。
ここまで可愛いと何かしらの被害に遭う可能性も考えられるが、結局何を着ても可愛いし、露出は抑えられているのでこのあたりにしておくしかない。
「しかし、なんでグラフィックTシャツなんて置いてあるんだ……?」
まるで、世界観に……即してない。
……いや、違うか。むしろここはそういう世界なのだ。だから、グラフィックTシャツもスラックスもニーハイも置いてるし、パンも食べられればコーヒーも飲める。
ハニトーとか出てきた時点で気づくべきだったが……衣食の文化はほとんど現代日本だ。
……じゃあなんで私は痴女だとか言われたわけ?
「これのこと?」
そう言いながら、紗夜は来ているTシャツを引っ張った。グラフィックTシャツという言葉に引っかかったのか? グラTとか言った方が良かった?
紗夜が引っ張っているのを見る限り、かなり伸縮性もある。まさにTシャツそのものだった。
柄はどうやってプリントしてるんだろう……。手書き?
「まー確かに、ファンタジーじゃないわね。別にいいけど。トイレとかがそんな感じでも困るし……嬉しい部分じゃない?」
「それはまあ、間違い無いな……」
ゼノサイト周りの問題があるからか、このコロニーは、やはり細かい部分でも一々衛生的な造りだった。
トイレに関しては本当に、心の底から……水洗でよかったと思っている。




