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デリリウム・ブラックリリー 〜ギャルと優等生の異世界サバイバル〜  作者: 霧色瑪瑙


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ゼノサイト

「ゼノサイトとはつまり、外宇宙からの寄生体……に冒された生物です」


 外宇宙。魔法なんて罷り通ってるファンタジーで聞くとは思っていなかった単語だ。


「最初は異形化した宿主自体が『宇宙よりのもの』だと考えられていたためゼノサイトと名付けられましたが……根本はもっと小さく、ウイルスみたいなものです。根本のそれ、寄生する側の何かを……我々は、『根源寄生体』────アルファと呼んでいます」


「待って。混乱しそう」


 紗夜は既に話についていけていないようだった。

 無理もない。疲労がある上に、関係も微妙に複雑だ。

 そもそもクロエ側がわかっていないことだらけみたいだし……。

 

「全てを理解しなくても大丈夫ですよ」


 クロエとしては、あくまでこれは雑談程度のインストラクションなのだろう。

 そもそも紗夜に完全に理解してもらおうと思って話しているわけでもなさそうだった。

 

「先ほども申し上げた通り、アルファに冒された生物は異形化し、ゼノサイトと呼ばれます。性質は個体差もあり、把握しきれてもいないため、あまり語れませんが……。重要なのが、清潔な場所ではアルファは繁殖・感染しにくいということ。そして、ゼノサイトを殺した時、その灝素(エーテル)が殺した者に流れ込むということ」


 灝素(エーテル)

 一番ぴんときていない言葉だ。


「ケレスも言っていたな。その灝素(エーテル)ってなんなんだ?」


「正体は不明です。アルファが生成するリソース。確かにあるのは間違いないのですが、性質を測りきれていません」


「じゃあなんで大事なんだ」


「それは……測りきれていないまでも、いくつか確認できている大まかな性質があるからです。灝素(エーテル)は間違いなく────それを持つ生物を強化している。魔女の覚醒にも関わっていると思われます」


 その言葉。

 私には、実感があった。

 ケレスに『灝素(エーテル)酔い』と呼ばれた症状がおさまってから、明確に体の調子が良い。

 私の解釈通りであれば……灝素(エーテル)は所謂経験値に相当する。魔力とは明確に別。


 あとは……。


灝素(エーテル)って……もしかして、人間を殺しても吸収できるのか?」


「おっしゃる通りでございます」


 ケレスの、戦場に出れば自然に覚醒するという言葉。

 あれは……『戦場の人間を殺して灝素(エーテル)を回収させる』という意図だったのだろう。


灝素(エーテル)はアルファ自体とは明確に異なる、『人間のまま利用できるリソース』でございます。ただ、過剰なエネルギーは、それだけで人に害を及ぼす……徐々に摂取するか、耐性を獲得している必要がある」


 メイドはこちらを見ると、また怖いくらいはっきりと笑顔を作った。


「メア様は……既に耐性を獲得しておられます。灝素(エーテル)による侵食を乗り越えたのです。心当たりがおありでしょう?」


「ああ……」


 先程も考えていた、レベルアップ……『灝素(エーテル)酔い』のことだろう。

 ……下手すればそこで死んでいたのだろうか。


 ふと、先導していたクロエがロングスカートをはためかせ、くるりと踵を返す。


「さて、着きました。ここがあなた方の仮住まいです。私も清掃はしますが、衛生面では気を使っていただくようお願いいたします」


 目の前に現れたのは、これもまた、煉瓦造りの……物語に出てくるような家だった。


「素敵!」


 紗夜の言葉通り、素敵な住まいだと思う。綺麗だが、どこか牧歌的で、心の落ち着く感じがする。

 屋根の赤はどこか非現実的な色味だった。


「鍵は?」


「こちらに」


 そう言ってクロエが渡してきたのは──ディンプルキーだった。なんで?

 ところどころミスマッチ感がある。まあ全て地球の近世と同じでもそれはそれで何故となるが。


 クロエから受け取った鍵で扉を開く。


 内装も木製の床や壁、家具がベースで、概ね外観のイメージと差はなかった。暖炉があるのが日本とは大きく異なるところだろうか。


「一通りの家具は揃っていますが、寝室とベッドは一つのみです。サイズは十分ですので、問題ありませんよね?」


「えっ? ああ……大丈夫だ」


 少しどきりとしたが、あまり動揺を表に出さないよう肯定した。

 ちらりと隣を見るが、紗夜も気にした様子ではない。


「別に、いいんじゃない?」


 ……小屋でも隣で寝ていたし、今更か。

 私ばかり気にしたって、仕方がない。

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