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デリリウム・ブラックリリー 〜ギャルと優等生の異世界サバイバル〜  作者: 霧色瑪瑙


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魔女

「協力しまぁす!!」


「ちょっと黙ってろ」


「はい」


 かなり前のめりに返事をする紗夜を抑え、男──ケレスの言葉について考える。

 

 魔女。


 この男は、確かに私達のことをそう呼んだ。


「魔女、って……?」


「魔法を使う者のことだ。魔女は確認される限り全て女性で、だから魔女だなんて呼ばれている」


 魔法。

 確かに、私達は魔法を使える。

 だが、それをこいつは知らないはずだし……ゼノサイトにもろくに効かなかった魔法が、戦争の役に立つとは思えない。


「なぜ、私達が魔法を使えると?」


「魔女には……独特の雰囲気がある。誰でも判別できるわけではないが、俺にはわかる。お前達は明らかに魔女だ。他所の世界の人間が魔法を使えるなんて聞いたことがないが……実際ゼノサイトも倒しているし、使えるものは使えるのだろう」


 雰囲気、と言われれば反論もしにくいな。

 あえて言うならゼノサイトの件か。


「ゼノサイトを倒すのには……ほぼ魔法を使っていない。お前の言う魔法って何だ?」


「それは意外だが……むしろ、より期待できる。──さて、魔法とはつまり、超常の力。本来事象の発生に必要なプロセスを無視する力だ。具体的に引き起こされる現象は魔女により異なるが、強力なものでは災害レベルにもなる。(もっと)も、小規模な魔法や視覚的な現象を伴わない魔法も存在するが」


 『ルールを無視する力』。

 なるほど、魔法という言葉を言い換えるならそうなるだろう。

 だが、ケレスの言葉は概念的なところの説明に留まる。まだイメージのつかない部分も多い。

 具体的な、その事象。


「具体的には……どういう魔法があるんだ」


「例えば、隕石を呼ぶ魔法。圧倒的な質量で戦場を破壊し尽くしたとされる。系統の違うものでは、水を操る魔法。視界内の敵兵全ての体内を破壊し、無音で戦争を終わらせたらしい」


 ……聞くだけで恐ろしい力だ。まさに戦略兵器と呼ぶに相応しい破壊規模。

 核や現代兵器が無いのなら、戦争は圧倒的な結果で終わるだろう。

 ただ、こいつの言い方に疑問は残る。

 

「伝承のように話すが……実際にその戦争が起きたのはいつだ?」


「最近のもので100年は前だな」


 100年。

 その言葉の通りなら……かつ、魔女が戦争の道具として有用で、魔女を持った国が戦争を仕掛けるのが普通なら……。魔女とは、本来同世代に二人と現れないような存在であるはずだ。

 

「魔女は希少なのか?」


「希少と言えば希少だ。だが、戦略規模の破壊を起こせる者に限らなければ一万人に一人程度は存在する。事実このコロニーにも、お前達以外に一人だけ魔女がいる」


 大した魔法を使えない魔女ならば、ある程度は存在するらしい。

 

「私達にどの程度の魔法を期待しているんだ? 生憎、現状……私達に大した魔法は使えないぞ」


「ああ、お前達は未覚醒なのだろう。魔女には羽化とも呼ぶべき覚醒が訪れる。戦場に放り込めば自ずと覚醒するだろう。だから気にしなくていい」


 めちゃくちゃ言ってやがるこいつ。

 こいつの言う『覚醒』は……手記にある『レベル2』のことだろう。


「私達は……戦場に行く気はない」


 私達は普通の女子高生なんだ。戦争なんてできるか。

 というか女子を兵士として前線に送り込むような戦争があってたまるか!


「私としても強制はしない。だが……報酬を支払う準備はある」


「報酬ってなに?」


 紗夜はもう黙っていられなくなったらしい。

 少し顔に喜色を浮かべて尋ねている。


「衣食住の提供。金銭の贈与。そして……我が国からの『協力』だ」


「協力って、具体的には」


「できる限りのことはしよう。お前達が元の世界に帰るために必要な研究成果を提供できるし、この世界に骨を埋めたいなら地位も婚約者も融通できる。俺が相手になったっていい。お前たちが望み、かつ……俺達の国が戦勝国となった暁には、だが」


「亡国がどうやって勝つんだよ」


「お前達の力で、だ。国は滅びたが、国の魂は死んでいない。このコロニーに生きている。一万人の臣民と三人の魔女で世界を征するのだ」


 荒唐無稽に思えるが、魔女の力があれば実現できるという話か。

 

 ……まあ、提示された取引自体は単純な話だ。

 野宿か文明的生活か。こいつはそれを選べと言っている。

 この提案を受け入れずにここで暮らすなんて都合の良い選択肢は与えられないだろう。兵器にならないのなら価値はなく、コロニーで養ってやる必要はない。言及こそしていないが、寧ろ敵国に渡らないように殺す可能性さえある。逆にこいつの国の兵器になるのならどんな待遇も厭わないと。


 婚約者云々は少なくとも私にとってはどうでもいいが、文明の光は私を惹きつけてやまない。紗夜と過ごした時間は心地良かったが、ここしばらくまともな娯楽に触れていないし、まともなベッドで寝ていない。

 必死なうちは良かったが、現代の飽和した快楽に飼い慣らされた人間の精神状態が……こんな世界で、この後どうなっていくのか、私には想像できなかった。


「やりまぁす!!」


 私はこの隣で喚いてる喧しい女の評価を三段階下げた。

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