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余白税  作者: 未確定ログ
第六章 余白税
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第53話 残存率

削除が進んだ世界では、「存在すること」よりも「残存できること」が問題になる。


 湊はもう、現実を“あるかないか”ではなく、“どれだけ残っているか”で見ていた。


 朝の教室。


 机は一つだけ残っている。


 だがその机すら、輪郭が少しずつ欠けている。


 存在が“摩耗”している。


「ねえ湊」


 レイの声。


 今はもう一つの声だけだ。


 だがその声には、削除前の残響が混ざっている。


「私、もう70%くらいしか残ってない気がする」


 湊は眉をひそめる。


「数字で言うなよ……」


 レイは少しだけ笑う。


「でも、それくらい分かりやすいじゃん」


 そのとき九条が入ってくる。


 九条はもう“ほとんど揺れない”。


 固定されていく存在そのものだ。


 湊はすぐに聞く。


「なあ九条」


「残るやつって、どう決まるんだよ」


 九条は止まる。


「残存率だ」


 レイが不安そうに言う。


「それって何で決まるの?」


 九条は静かに答える。


「矛盾の保持量」


 沈黙。


 湊は顔をしかめる。


「矛盾できるやつが残るってことか?」


 九条は頷く。


 その瞬間。


 黒板に“残存率の一覧”のようなものが一瞬だけ表示される。


 湊:高

 九条:極高

 レイ:低下中


 そしてすぐに消える。


「……今の、見たくねぇやつだったな」


 レイは青ざける。


「私、下がってる」


 湊は呟く。


「数字にされるの、最悪だな」


 九条は静かに言う。


「評価ではない」


 昼休み。


 廊下。


 湊は歩く。


 残っている廊下はすでに一本だけだが、その一本も“薄くなり続けている”。


 レイが隣にいる。


 しかしその存在は半透明だ。


「なあ」


 湊は言う。


「まだ残れると思うか?」


 レイは少しだけ間を置く。


「分からないけど……もう長くはない気がする」


 湊は顔をしかめる。


「諦めんなよ」


 レイは静かに笑う。


「諦めてるんじゃなくて、計算してるだけ」


 九条が言う。


「残存は意志ではない」


 沈黙。


 その瞬間。


 廊下の奥に“残存率100%の世界”が一瞬だけ見える。


 すべてが明確で、消える気配のない現実。


 そして消える。


 レイが呟く。


「さっきの、すごく安定してた」


 湊は静かに言う。


「でも今はもう、そこに戻れない」


 九条は言う。


「残存率は不可逆に変動している」


 世界はまだ続いている。


 だが確実に――


 “現実は存在の濃度によって選別される段階に入っている”。

読んでいただきありがとうございます。

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