卒業式2
……そうだ。
これが最後の舞台になるかも知れねんだ。
全力出し切んねーと、ぜってー後悔する。
相手のことなんか気にしねぇ、本気のツッコミ入れたらぁ!
野バラが次のセリフを口にする。
「スチュワーデスになったは良いんだけど、上司がまたブラックでさぁ」
「ブラックって、今流行のパワハラ上司ってやつか?」
「いや、本名がブラックっつー外国人」
「紛らわしいなオイ!」
体育館の中で、クスクスという押し殺したような笑いが起こる。
だが、この後も大きな笑いは起こらず、俺は汗だくになりながら、そんなにつまんねーネタだったかと回りを見渡す。
すると、生徒らは口元を抑えて、何とか笑うまいと堪えている。
(どーゆーことだよ?)
もう一度、回りを見渡す。
一人の教師が視界に飛び込んできた。
(……アイツか)
生徒たちが笑いたくても笑えない状況を作っている張本人。
その男は、片手に竹刀を持って、こちらを睨みつけている。
国語の山田。
アイツはキレると生徒を廊下に立たせたりと、今どき珍しい体罰教師だ。
だが、偏差値の低いこの高校では、親まで頭が悪いらしく、どういう訳か、ちゃんと叱ってくれる先生として評判がいい。
(……クッソ)
恐らくここにいる生徒らに、絶対に笑うなと釘を刺しているんだろう。
山田は俺らのことを目の敵にしてっからな。
(でも……)
笑えないシチュエーションほど笑っちまう時がある。
ある意味、この状況はバカでかい笑いを取るチャンスっつーことか。
もう一押。
何か、火種がいる。
すると、ネタが尽きたハズの野バラが口を開いた。
「社会人といやぁ、飲み会があるじゃねーか。 私、行きたくねーんだわ」
……マジか。
アドリブぶっこんできやがった。
でも、もうそれしか手立てはねぇ。
この状況で、何故か野バラは意地の悪い笑みを浮かべている。
それで俺は察した。
「何で行きたくねーんだよ」
「竹刀を持ってうろちょろしてる先輩がいるんだわ」
「国語の山田じゃねぇか!」
俺は腕を振りかぶり、思いっきり野バラの後頭部を叩いた。
今まで響いた事の無いような、弾ける音。
次の瞬間、まるで核弾頭が爆発したかのような音が体育館全体に響き渡った。




