卒業式
こうして、気が付くと俺と野バラはコンビを組んでいた。
一応、名前を決めることになり、俺はカレーライスを推したが、だったら自分の好きな食べ物も加えたいと、カレー&ナポリタン、という芸名になった。
俺たちは放課後、部室で漫才の練習をやった。
土日は今後使うことになる大型免許を取りに教習所へと通い、そんな日々が続いた。
免許に関しては、春休み中に合宿で取っちまうヤツもいるらしいが、まあ、時間はある。
父ちゃんに正式にトラックの運転手をやる旨を伝え、俺は4月から晴れて同じ職場で働くことが決まった。
お笑いに関しては半ば諦める形にはなっちまったが、俺に迷いは無かった。
むしろ、進むべき道を進んでる気がして、誇らしい気さえする。
初めはスタートラインのつもりだった卒業式の漫才の舞台。
まさかこれが最後の舞台になるかも知れないとは。
(全く、分かんねーもんだよな)
俺は教室の窓から、桜の木々を見下ろしながらそんなことを思った。
3月25日。
卒業式当日。
校長のクソつまんねー話がようやく終わり、俺と野バラはこっとり列を抜けた。
最初、この舞台を反対する教師が現れて、危うくポシャる所だったが、校長が何とか説得してくれたらしい。
(途中まで自分が出るつもりだったからな)
舞台袖で笑いを殺して、野バラを見やる。
「ネタ、大丈夫だろな?」
「ああ、あんだけ練習したからな」
俺と野バラで考えた、社会人あるある漫才。
これからどんな辛いことがあっても笑い飛ばせばいい、そんな思いを込めた漫才だ。
校長がアナウンスする。
「えー、本日は特別な催しを用意しています。 漫才研究部の2人に登場して頂きましょう。 桜木向日葵君と、血飛沫野バラさんです」
名前を呼んだ瞬間、会場がどよめいた。
みんな、学校でも札付きの不良二人が漫才をやるとは思っていなかったらしい。
教師らも、腕を組んで訝しげにこちらを見ている。
「行くぜ、野バラ」
「おう」
俺たちは、意を決して舞台の表へと出た。
「はいどーもどーも、カレー&ナポリタンです」
シン、と静まり返る体育館。
俺の声が響き渡る。
「ところで、4月から社会人になるけど、お前就職先決まったか?」
「私、スチュワーデスになんだよ」
「何でやねん!」
パン、と頭を叩く。
「こんな高校に、そんな優良求人来ないだろ」
「いいじゃねーか、夢くらい見させろよ。 つか、私英語喋れないし、今からお腹痛いわ」
「お腹痛くなってるじゃねーか!」
パンッ、とさっきより強めに叩く。
野バラが小声で言う。
(もっと本気でこい!)
120パーセント。
それを出さなきゃ、笑いは取れない。




