本当の答え
そうだ、もう腹は括ったハズだ。
あの夢の中で誓ったんだ。
俺はカレーライスっつー芸名で4月から芸人になる。
それが俺の使命だ。
そのハズだ。
なのに……
「お、俺は……」
「……」
古川が俺の返答を待ってる。
今すぐ親に電話して、お笑いの道に進むっつーのを待ってる。
それなのに、俺にはそれができねー。
スマホを持つ手が震える。
イタズラに時間だけが過ぎて、額に汗が滲む。
父ちゃんと母ちゃんのことを考える。
2人とも、俺を一生懸命育ててくれた。
トラックの運転手になることが、出来の悪い俺の唯一の恩返し。
才能があるかどうかも分からないお笑いの道に進むなんて、言えるわけねぇだろ!
それが、俺の中の答えだった。
俺は土壇場で、俺っつー男の正体を知った。
何てことはねー。
俺は、そこら辺にいるヤツらと何ら変わらない、ただの親思いの少年だったんだ。
「……お笑いは、トラックの運転手をしながら続ける」
「……そーかよ」
その答えが、俺と古川の進む道を完全に隔てた。
古川は卒業後、本気でお笑いの道に進むだろう。
売れる保証はない。
だが、売れてるヤツはみんなそれ位の覚悟でやってるハズだ。
「すまねぇっ、古川…… すまねぇっ……」
俺の目からは涙が溢れ、拭っても拭っても溢れてきた。
お笑いの道を、俺は諦めた。
結局、親に心配はかけられなかった。
古川がリビングに戻り、女が大丈夫~? と、こちらを見てくる。
俺は黙って部屋から出て行った。
時刻は夜の8時になろうとしていた。
満員電車に揺られ、何とか地元の駅へと戻ってくる。
「ダッセェ」
俺は声に出して小石を蹴った。
目、腫れてねーだろな?
このまま帰ってそれを指摘されんのは御免だ。
スマホの鏡で瞼を確認してから、家の前へと向かうと、何故か野バラがそこにいた。
「……あんだよ、ストーカーかよ」
「ち、ちげぇって」
野バラは、盗聴器で聞いてたよ、と小声で言って、俺は、いい加減外せよ! と怒鳴った。
「わ、わりぃ…… つか、卒業式の漫才の件でよ。 私と組まねぇ、か?」
「……は」
……すっかり忘れてたぜ。




