エンディング
笑いの爆発。
体育館全体が揺れている。
「野バラ、大丈夫かよっ」
野バラは地面に伸びていて、頭の上にお星様が瞬いている。
その時だった。
国語の山田が叫びながら俺の方に向かってくる。
顔は真っ赤で、よくもバカにしてくれたな、とかごちゃごちゃ喚いている。
すると、
「桜木君!」
どこかで聞いたことのある声が聞こえ、頭上に細長い何かが飛んできた。
(校長の野郎!)
俺は手をかざしてそれをキャッチした。
細長いものは、卒業証書。
物凄い剣幕で舞台の脇の階段を駆け上がり、俺目がけて山田が竹刀を振り下ろしてくる。
俺は、卒業証書の入った筒でそれをいなし、相手の態勢を崩した。
「らあっ!」
そして、突きを山田の胸のど真ん中に決める。
山田は尻餅を付き、情けない声を出した。
「た、たいぎゃ、アヒィ……」
「残念だったな。 もう卒業しちまったぜ」
山田の足元からは、何やら黄色い液体が漏れ出し、きったね! と俺は舞台から飛び降りた。
すると、俺の身柄を取り押さえようと他の教師たちがこちらに集まって来る。
「お前ら、道を空けろっ」
並んでいる生徒らの中に突っ込むと、突然、俺の体が宙に浮いた。
「何だよ、オイ!」
「みんなーっ、桜木を助けろっ」
俺の体は担ぎ上げられ、まるで野球で優勝した時の監督みたいだ。
教師から俺を遠ざけるように、入り口の方へと運ばれる。
「さいっこー、桜木!」
「一生忘れない卒業式だったよ!」
運ばれながら、俺は生徒一人一人の言葉を聞いた。
その言葉の殆どが、俺を賞賛するもんだった。
(バカヤロ、照れるっつーの)
すると、遠くに小田を見つけた。
小田の野郎には、俺がトラックの運転手になることは伝えていない。
「小田、俺っ……」
「餞別だ、持って行け!」
いきなり小田は、手にしていたビニールの地球儀を投げつけてきた。
地球儀は放物線を描き、俺の手に収まる。
「んだよコレっ、いらねーって!」
一体、何考えてやがんだ、アイツ。
でも、最初に俺に笑いって道を示してくれたのもアイツだった。
一応、俺にとっては恩師だ。
(……ありがとな)
俺の体は体育館の入り口まで運ばれ、そこで下ろされた。
「……!」
そこに待っていたのは、まさかの古川だった。
古川は俺のことを一瞥すると、片方の口元を吊り上げて言った。
「こんな卒業式、見たことねーよ」
今日、この日はどんな卒業式とも違った。
普通、涙ながらに別れを惜しむ、そんな光景が広がるもんだ。
だが今日は、みんながみんな、笑顔だ。
(見たかよ)
俺と古川は、全力のハイタッチをした。
終わり




