渋谷へ
授業が終わり、時刻は夕方の5時。
俺は小田に教えてもらった古川の携帯に連絡を入れた。
さすがに俺の中にも罪悪感っつーものがあったのか、少し緊張する。
(アイツ、キレてねーよな……)
しばらくコールを続け、7回目。
ダメか、と携帯を切ろうとした時、通話が繋がった。
「はい」
古川だ。
特に、声のトーンに変わりは無い。
相変わらず、ダルそうだ。
「あっ、えーっと…… 桜木だけどよ」
「桜木? 何で俺の携帯知ってんだよ?」
古川は通話の相手が俺だと知って、嫌がった素振りは見せなかった。
このまま、何気なく卒業式の漫才の話をするのはちげー気がする。
そう思った俺は、意を決して言った。
「すまねぇっ! この前は…… おめぇにケガさせちまって……」
少し間があってから、古川が答える。
「……別に。 それが言いたかっただけなら、こっちも忙しいし、切るぞ」
「待てって! 本題はそれじゃねぇ」
……つか、忙しい?
アイツ、入院してんじゃねーのか?
……まぁ、それはさておき、俺は卒業式の件の説明を始めた。
すると、ダルそうなトーンの古川の声が急に変わる。
「んだよ、お笑いの話かよ! もっと早く連絡しろって。 ちっ…… 俺、今渋谷だしな……」
渋谷?
こいつのケガ、もしかしてとっくに完治してんじゃねーだろな……
古川は後一ヶ月ねーし…… とブツブツ呟いた後、俺に言った。
「お前、今から渋谷に来い。 ネタの打ち合わせすんぞ」
「……!」
「……どーすんだよ、来んのか、こねーのか」
どうやら、古川は俺の相方を買って出てくれるらしい。
行くに決まってんだろ!
「ソッコー行くから待ってろボケ!」
携帯を切り、手提げカバンを背中に担いで、俺は駅までの道をダッシュした。
古川のヤツ、ケガが治ってねーフリして、ずっと渋谷に入り浸ってたのか?
(まんまと利用されたって訳だ。 俺のツッコミがマジで殺人的なもんだと思っちまったじゃねーか)
だが、これで心置きなくアイツの後頭部にツッコミを入れれるぜ。
T地路を右に曲がれば後はひたすら真っ直ぐで駅に到着する。
その300メーター手前に、見たことのあるヤツが待ち構えていた。




