曖昧な記憶
「カレーライス! カレーライス! ……ハッ!?」
目が覚めると、朝だった。
……何でカレーライスを連呼してたんだ、俺。
ベッドから起き上がり、少し考えるも、分からない。
ただ、何か重要なことがあったという感覚だけが残っている。
(何だったんだ、一体……)
……クソ、思い出せねぇ。
夢の内容なんてどーだっていいのによ。
それなのに、ぜってー忘れちゃいけない内容だった気がするのは、何でだ?
俺は立ち上がって階段を降りた。
洗面所で顔を洗いつつも、やっぱり、昨日の夢の内容が気になって仕方が無い。
台所に向かうと、既に父ちゃんと母ちゃんが朝食にありついている。
「向日葵、遅刻だけはするなよ」
相変わらず、新聞を読みながら、父ちゃんの声が響く。
目の前に並んでいるのは、ウチの定番の朝食だ。
味噌汁にご飯、そして納豆に卵を絡ませたヤツが銀色のボールに入っていて、それをスプーンですくってかける。
「ひまちゃん、返事しなさい」
「ん…… ああ」
「ああ、じゃないでしょ。 遅刻、しちゃダメよ。 確か遅刻3回で1回欠席したことになるんでしょ? 出席日数足らなかったら4月から運転手出来なくなっちゃうわよ」
(運転手……)
一瞬、鈍い痛みが頭に走る。
トラックの運転手……
そのワードに、俺は嫌悪感を覚えた。
「……もう、学校行くわ」
俺は朝食を殆ど食べず、倚子から立ち上がった。
学校に着いて3階にある自分の教室へとやって来ると、仲良さげな女子がまだ二人。
物珍しそうな顔で俺のことを見てくる。
「んだよ、早く来てわりーか」
二人が目線を落とす。
……何か、腹立つな。
いつも通り、コンビニでタバコ吸ってからくりゃ良かったか。
それはさておき、俺はさっきの違和感のことを考えていた。
トラックの運転手。
このワードは恐らく、夢に出てきた。
そして、このワードに対する嫌悪感。
これは、何か良くないことを暗示している気がする。
俺は手を組んで、肘を机に乗せた。
まるで、一休さんの如く、必死に考えを紡ぐ。
(トラックの運転手っつーのは、俺の将来のことだ。 俺は運転手になりたくねぇ。 ……そーだ、お笑いをやりてぇんだ)
靄が少し、晴れたような気がした。
俺は運転手じゃなくて、お笑いをやりたい。
だが、まだ靄が完全に晴れた感じじゃない。
核心的な事実が明らかになっていない。
「何か、考えてる……」
二人の生徒の囁きが聞こえる。
俺は、ガタッ、と倚子から立ち上がり、声のする方を見る。
ビクッ、と驚く女子二人組を尻目に、俺は教室を出た。
(部室に行きゃあ、何か思い出すかもだ)




