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お笑いヤンキー  作者: oga
俺は向日葵
14/25

説得

 もはや嫌な予感しかしねー。

メガネを掛けると再び建物の屋上。


(また自殺する奴がいんのか?)


 案の定というか、建物の縁に足をかけて身を投げようとしている人影を発見。

俺は慌てて声をかけた。


「だーっ、やめろーっ」


「……」


 相手はこちらに気付いたが、また顔を正面へと向ける。

無表情だし、視線がお空の方を向いてやがる。

正気じゃねー。

あのまま飛び降りる気だ。

しかもこいつはリアルに存在する奴。

ここで止めねーと、人一人見殺しにしたも同然だ。


(ちっきしょ!)


 俺は心の中で毒づいてから、思い切り叫んだ。


「俺を見ろーっ」


「……?」


「コマネチ!」


「……」


 とりあえず俺は、ビート○けしの定番の物まねを繰り出した。

しかし、効果無し。

再び飛び降りようとしてるのを見て、俺は再度注目を集め、思いつくことを片っ端からやった。

ZARDの「負けないで」を熱唱したり、とにかく、無我夢中だった。

しかし、人影は縁から離れる素振りを見せない。


「お前が飛び降りたら俺も死ぬっ」


 俺は地面に頭を打ち付けた。


「うおおおおおおおーっ」


 何度も何度も地面に頭を打ち付けた。

血がボタボタ滴り、血だまりができる。

それでも地面に頭を打ち付ける。


「うおおおおおおおーっ」


「ちょ、やめて下さい」


「うおおおおおおおーっ」


「やめろっ」


 拳が顔面にめり込む。


「えっ……」


 ハッ、とすると、目の前に女性がいた。


「アンタ…… 自殺やめてくれたのか?」


「あなた、一体何なのよ……」


 







 俺たちは地べたに座り込んで話をした。

相手の名前は山吹桜で、年は25っつー話だ。

何でも、彼氏と上手く行かなくなって、会社も身が入らなくて退社したらしい。


「それで自殺かよ」


「……でも、ちょっとは落ち着いたかも。 だって、いきなり死のうとしてるんだもん」


 ぷっ、とその場で笑う山吹桜を見て、俺はほっとした気持ちになった。


「自殺なんてすんじゃねーぞ。 ったく」


「……考えとく。 でも、何でこんな風になっちゃったかなぁ~、私。 学生の頃に戻れたら戻りたいよ」


「……寝ぼけたこと言ってんなっつの」


 まるで、未来から来た俺じゃねーかよ。

仮に、一瞬だけ未来を変えても、自分が変わらねーと同じ過ちを繰り返すんじゃねーか?


「……もし付き合う相手変えたり、会社変えたって、お前に問題があったら同じじゃねぇのかよ?」


 山吹桜は黙り込んだ。

そして、目に溜まっていたものを拭うと、ボソリと呟いた。


「簡単に変えれないから、苦労してるんだよ」


「……」


 俺だってまだ18だし、知った風なことは言えねーけど、少なくとも過去を変えるやり方が違うのは分かる。

ドラ○もんをディスる訳じゃねーけど。

失敗して学習してまた失敗して……


「その先で辛くなったら、俺を見に来いよ」


「え……」


「笑い飛ばせばいいんだよ、全部。 俺、4月からお笑い始めっから」


 そうだ。

過去は変えられねーから、お笑いの存在意義があるんだ。

辛くなったらお笑いを見て笑えばいい。

山吹桜は頷いた。


「分かった、見に行く」


 すると、画面の右上の方に充電のマークが点滅し始めた。

やべっ……


「俺、もう行くわ」


「待って、芸名だけ教えて!」


 芸名!?

何も考えてねーよ!

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