メガネ
いきなり目の前に現れたのは3年後の俺だった。
タイムマシンを使ったのか、どんな方法でやって来たのかは不明だが、3年後の奴の世界では、小説において、この手のドラ○もん展開が大流行しているらしい。
(人生をやり直したい奴らが山ほどいるって訳か)
謎のグラスを渡してきた3年後の向日葵は、これを4DXメガネと呼び、俺に渡してきた。
「そいつをはめると、お前をランダムで何らかのシチュエーションに導く。 導かれた先の状況を笑いで切り抜くんだ」
「シチューだか何だか知らねーけど……」
俺は騙されたつもりになって、このグラスをかけた。
ふと、気が付くとどこかの建物の屋上。
時刻は深夜らしく、一体、これから何が起きんだ?
(……さっぶ。 このメガネリアルすぎんだろ……)
寒さまで体感できるとは、まるで最先端のアトラクションに乗ってるみてーだ。
俺は、どっかの劇場で漫才でもやらされんのかと思っていた為、この状況に戸惑った。
劇場を探せってことか?
すると、何やら建物の縁に誰かが立っているのが見えた。
「……あ?」
そいつはスーツ姿で、虚ろな表情を浮かべているようにも見える。
訳も分からずその光景を眺めていると、いきなり男が飛び降りた。
「あっ! ばっ、バカヤロ……」
思わず手を伸ばしたが、届くわけがねー。
縁から下を覗くと、遙か下にある地面に、さっきの男が血塗れになって倒れていた。
「……ざっけんな!」
俺はメガネを投げ捨てた。
向日葵に向かって叫ぶ。
「ただの18禁のクソ悪趣味なゲームじゃねぇか!」
「……ゲームじゃない」
「は?」
「今まさに、実際に起こっている現場にダイブする。 それがこの4DXメガネだ」
「ま、まてよ…… じゃあ、今俺が見た自殺現場は……」
「リアルで起きた出来事だ」
ふざけんじゃねぇっ!
俺は拳を振り上げた。
が、目の前にいるのは俺自身。
俺が俺を殴りつけようとする状況に、目眩を覚えた。
(訳、分かんねーよ)
「向日葵、もう一度だ。 俺も何でこのメガネがそんな状況を選んでんのか全く分かんねーけど、やるしかねぇ。 俺のくそったれな未来を変えてくれ」
「……」
何でこんな野郎の言うことを聞かなきゃならねんだ……
つか、これ、俺か。
はぁ……
俺は再び、メガネをかけた。




