真相
「潰えたって…… 具体的にどうなんだよ?」
「卒業式の日に、お前は野バラの用意した相方と漫才をやることになるが、全くウケず、お前はあのツッコミを解禁する」
目の前にいるもう一人の向日葵。
その向日葵の言う、あのツッコミとは、内側からでなく、外側から相手の後頭部を叩くツッコミのことだろう。
だが、怪我を負って復帰したばかりの古川に俺の殺人ツッコミを入れるのは気が引ける。
俺の考えは見抜かれていたらしく、向日葵が口を開く。
「とーぜん、生身の相手にツッコミは入れられない。 その時、俺の横に立っていた相方は着ぐるみを着ていたんだ。 緩衝材があれば…… と思い、ウケない場に焦りを感じていた状況も相まって、俺はツッコミを入れた。 が……」
その後、にわかには信じがたいセリフが飛び出してきた。
「ツッコミを入れた瞬間、着ぐるみは崩れ落ち、頭が外れた。 現れたのは、古川でなく校長だった」
「……え、校長? あのブタ野郎が相方!?」
「そうだ。 野バラは相方に校長を指名したんだ」
校長は生徒とのコミュニケーション、という名目で野バラの要請を受理した。
野バラはでかい面してる校長にヤキを入れるため、俺の殺人ツッコミを利用しようと画策。
こうして、俺が校長をぶっ飛ばす、というトンデモな状況が出来上がったとのことだ。
向日葵が続ける。
「事実ってのはねじ曲がって伝わる。 お前は学校に不満があって、卒業式で暴れて校長を殴り飛ばした高校生としてニュースで取り上げられ、問題視として認知された。 当然、そんなイメージのお前をどこのお笑い養成所も受け入れてはくれない」
その後はまるで坂道を転げ落ちるようにして、俺はトラックの運転手になったとの事だ。
愕然としている俺に向かって、向日葵は必死の形相で訴えかけてきた。
「いいか、向日葵。 このままじゃやべぇ。 何とかして状況を変えるんだ。 このまま行けば、お前は野バラと結婚して、尻にしかれることになんだぞ」
……は?
ちょっと待て。
何で野バラが出てくんだよ!
しかも、結婚!?
「俺は弱味を握られたんだ。 俺がボコした奴ん中に運送会社の社長の息子がいやがった。 野バラが、そのことを社長に知られたくなかったら私と付き合えって…… 頭真っ白になって、気付いたら結婚してた」
「何結婚してんだよ!」
「とにかく、卒業式までに古川に相方になるように説得しろ。 それと…… 時間の許す限り、お前の笑のセンスを磨く」
突然、向日葵は手提げバッグから何かを取り出した。
(……メガネ?)




