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お笑いヤンキー  作者: oga
俺は向日葵
11/25

未来から

 その日の夜は、妙に興奮して寝付けなかった。


(卒業式まで後一ヶ月か……)


 俺は、布団から這い出ると、その場で軽くジャブをした。

シュ、シュ、と口の中で小さく呟く。


(……)


 俺は徐に部屋の中を見回した。

そして、ハンガーラックの横に来ると、内側から手を出して、何でやねん、と囁いた。


(……練習しとかねーとな)


 何でやねん、何でやねん、とハンガーラックに掛かってる学ランを、相方に見立てる。

俺は想像した。

古川の奴と一緒に、卒業式の舞台で漫才をしている姿を。

俺が何でやねん、と言うたび、会場がどっかんどっかんウケる。

爽快な光景。

最後の挨拶で俺たちはお笑いのコンビを組み、M-1でてっぺんを取ると宣言する。


(にへへへへ……)


 ヨダレを垂らして恍惚の表情を浮かべていると、おほん、という咳払いが聞こえた。


「なっ、な、な、誰っ……」


 余りに驚いて、俺はその場で尻餅を付いた。

部屋の入口に、誰かが突っ立ってやがる。

顔はよく見えねーが、男か。

まさか、泥棒!?


「てんめっ、やんのかコラア!」


 内心ビビりまくりだったが、俺は何とか声を張り上げた。

すると、男が喋った。


「落ち着けって。 俺はお前だ」


「……はぁ?」


「俺は、お前なんだよ。 未来から来た、お前だ」


 訳の分からないことを言っている。

男が部屋の明かりを点けた。

すると……


「え、気持ち悪っ……」


 男は俺と瓜二つ。

全く同じ顔をしている。

若干、日に焼けてはいるが……

男が喋り始めた。 


「信じて貰えねーかもだが、俺も桜木向日葵なんだよ。 お前の3つ上で、今はトラックの運転手をしている」


「トラックの運転手……」


 正直、未来から云々は信じらんねー。

俺は、これは夢だと思って相手の話に乗ることにした。


「トラックの運転手って、お笑いはどーなったんだよ」


「……潰えたよ。 卒業式の日にな」

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