王子君と変な人
―都内某所、聖帝会直系南斗組事務所―
「また、その子どもを取り逃がしたのか!!」
「申し訳ありません…組長!」
組長に謝るこの男は、あのヤクザさんです。
「それに、3000万は、どうしたんだ!?」
「それが…あの後、ある知り合い老婦人(歯医者に送ったおばあちゃん)に出会いまして。その老婦人が歯槽膿漏からくる多臓器不全で生命の危機に瀕していまして…。その時、偶然に通りすがりの顔に傷がある無免許の天才外科医の男に出会いまして。その男に彼女の手術を依頼したところ…手術代3000万円を要求してきまして…。」
「お前、嘘つくなら…もっとましな嘘をつけ!!そんな漫画みたいな話、誰が信じるんだよ!!…お前が馬鹿なことは知っていたが…ここまでとは…!!」
「…組長、信じてください!!」
「組長、怒門君は馬鹿だから…嘘はつけません。彼が言っているのは全て真実です。」
「…誰が馬鹿だって?」
「組長、私がこの脳内単細胞馬鹿に変わって、その男の子を必ず捕えてみせます…!」
王子君を狙う新たな刺客が現れたことなど、知る由もない俺。そして、今日は月曜日。俺と王子君は、プ●キュアの件で少しギクシャクしてしまっている…。朝ご飯を食べる俺と王子君。…気まずい。
「王子君…。プ●キュアのことなんだけど…。」
あれ、王子君。また銀髪になってるし!
「別にもういいよ…。洸が何を見ようと僕には関係ないし…。それに、あの人も…プ●キュア好きだったんだ。」
「あの人…?」
「僕をこの『セカイ』に連れてきた人。少しだけど…思い出したんだ。」
ああ、昨日、用具室で会った人のことだね!
「僕は、小さい頃からよく、こっそりお城を抜け出してたんだ…。お城の中に居ると、兄さんがべたべたしてくるから…。それで、ある公園にいつも行っていたんだ。その公園のすぐ近くに孤児院があってね、そこの子どもたちと公園でよく一緒に遊んだんだ…あの頃が一番、楽しかったな…。でもね、数年前にその孤児院の建物が耐用年数を過ぎてしまって別の場所に移転することになったんだ…。それで、その子達とはもう会えなくなってしまって…。公園もほとんどその子達が利用していたから、必要性がなくなって最近、取り壊されることになったんだ。その公園は、僕にとっては…初めて友達ができた場所であり、みんなと一緒に遊んだ大切な思い出がいっぱい詰まった場所なんだ…。僕の権限を使えば、取り壊しを中止に出来たかもしれないけど…その理由を話したら…無断でお城の外に出ていたことを兄さんが知ったら…きっと僕は、一生お城の外から出してもらえないで、お城の中に閉じ込められちゃうと思ったから…。」
「王子君のお兄さんならやりかねないね…。」
「そんな時に、あの公園で、ちょっと、いや…かなり変な男の人に出会ったんだ。その人は、世界中を旅してきて、いろんなことを知っていて…僕に旅の話を聞かせてくれたんだ。その人の旅の話はどれもみんな面白くて…僕は、その人と話をするのが大好きだったんだ。それでね、その人に公園が取り壊しになる話をしたら…その人がね、公園の噴水の水をチョコレートクリームに変えてくれたんだ!」
「すごい…!その人、魔法使いか何か?」
「その人は、何でもお菓子に変える不思議な力を持っているんだ。それでね、町の人たちは、噴水を見るため…チョコレートクリームをもらうために公園によく訪れるようになったんだ。そのおかげで、公園は取り壊されないことになったんだ!」
「へえー!良かったね。」
「あと、孤児院の子達のために、孤児院の建物をお菓子の家に変えてくれたんだ!」
「…それで、その変な人が王子君をこの『セカイ』に連れて来たの?」
「うん。理由は、解らないけど…。でも、その人は悪い人じゃないんだ!!」
「王子君の話を聞く限り…変わっているけど、良い人みたいだね!」
やはり、プ●キュア好きに悪い人は、いないね!
「ああ!そろそろ、出かけないと。王子君、今日も一緒に学校へ行こう。校長には、また王子君を見せれば大丈夫だよ!」
可愛いは、正義だからね!ヤクザも、学校まではさすがに来れないもんね。俺は、王子君を背中におんぶする。登校途中でヤクザに見つからないために、学校まで走って行くから!!
「王子君、しっかりつかまっててね!!」
「Z…。」
王子君、寝てるし!今朝、ずっと銀髪バージョンだったからね…。




