金曜日の夜
時は少し戻って…金曜日の夜。俺が王子君と初めて出会った次の日…俺と王子君が一緒に暮らすことを決めた日の夜の話。
アパートの自分の部屋に入る…。
「ただいまー。」
返事はない…。当たり前か…俺、一人暮らしだし…。でも、俺の背中には、俺におんぶされた王子君がいる。王子君は、学校の屋上で眠ってしまってから、ずっと俺におんぶされて寝ている…。子どもって、あったかいな…。
俺は、王子君を起こさないように…だって、すんごく気持ちよさそうに眠ってるんだもん!優しくベットの上に下ろした。俺は、着替えをして、二人分の夕食の準備を始めた。
「王子君、ご飯だよ。起きて!」
「…もう少し寝かせて。」
「ご飯、冷めちゃうよ!せっかく、ご飯炊きたてなのに…。」
「…炊き立てご飯?…炊き立てご飯!食べる!!」
起きた…!しかも、髪の毛、銀色になってるし…。
今日の夕食は、カレーライス。やっぱり、金曜日はカレーだよね!海自じゃないけど…。
「王子君、辛さ大丈夫…?ルウが中辛だから、すりおろしたリンゴとはちみつ入れてみたんだけど…。」
「大丈夫だよ。洸、僕を子ども扱いしないで…!僕は、見かけは幼稚園児だけど…中身は14歳なんだよ!」
「14歳なんて、まだ充分、子どもだよ…。」
たしかに、俺のクラスの教え子にも体が大人並みにがっちり成長してる子もいるし、クラス委員の加藤さんみたいに、しっかりしていて大人びている子もいるけど…。だけど、所詮は14歳…。
「…それに、王子君。さっきから、水の消費が早いよ。…やっぱり、辛いんじゃないの?」
「…大丈夫だよ!」
「無理しなくていいよ…。」
「だから、大丈夫だって言ってるだろ…!」
とか、言いながら…。涙をこらえて、口をおさえてる王子君…。ごめん、やっぱり辛かったんだね。今度からは、甘口にするね!
「強情だな…。そういえば、今日の金曜ロー●ショー何だっけ?たしか、今月はジ●リ特集だったよね?」
テレビをつけて、チャンネルを回す俺。テレビ画面におかっぱ頭の女の子が映し出される…。これは、駿じゃなくて勲のほうだね…。『火●るの墓』だね…。
俺は、王子君がテレビの方を観ているすきに…冷蔵庫からココナッツミルクを出し、王子君のカレーにかける!
「ちょっと、洸!?」
「ああーごめん、王子君。手が滑っちゃった!」
これで、少しは辛さがやわらぐだろう…。
「もう!気を付けてよ…。」
水の消費が減ってきた。良かった…。
夕食を終えて、後片付けをする俺。
「王子君、お風呂先に入っちゃえば?」
「洸…。僕は、一人でお風呂に入ったことがないんだ…!」
「14歳なのに…!?ああ、やっぱり高貴なお生まれだから…?」
「…よく覚えてないんだけど。いつも…誰かと一緒に入っていた気がする。それで、その人にいつも髪と体を洗ってもらっていたから…。」
やっぱり、王子君は、本当に王子様なんだね!!召使いに体を洗ってもらうとか…中世の貴族みたいだね…!!
「そうなんだ…。じゃあ、片付けが終わったら一緒に入ろう!俺が、体の洗い方教えてあげるよ。王子君、食器拭くの手伝ってもらってもいい?」
「うん!」
王子君て…どこの国の王子様なんだろう…。お空の上の国か…?星の王子様ってか…。
―その頃のお空の上のとある国―
「王子様…もうお休みになられたほうが…。」
「…弟の行方は、まだわからないのか?」
王子様と呼ばれているのは、夜の闇の中に輝く見事な銀色の長髪に、海のような青い瞳をした美しい青年。服装は、肩章の付いた純白のチュニックとズボンに赤いマント…。まさに、絵に描いたような王子様。
「…はい。申し訳ございません…国中を捜索しているのですが…。」
「…そうか。」
「王子様…とにかく、今日はもうお休みになられた方が…昨夜から一睡もお休みになられてないじゃないですか…!」
「…私は、弟と一緒にお風呂に入って、弟の髪と体を洗ってあげて、弟の髪をかわかして、弟にお休みの抱擁と接吻をして…私の一日は終わるんだ!!」
「(小声)キモい。」
「…今、何か言ったか?」
「…いいえ。」
「だから…弟が帰ってくるまで、私は、眠ることはできないんだ!!」
「(小声)面倒臭ぇ奴だな…。」
「…今、何か言ったか?」
「…いいえ。」
「…もしも、私の可愛い弟がこの国を出て…日本なんていう国にでも、行ってしまっていたら…!大変だ…日本のまたの名は『HENTAI』の国、日本だぞ…!噂で聞いた話では、日本国民の大半は、処●厨で多くの企業が新卒しか正社員で雇わないんだ!!作者なんて、新卒で入ったところ3カ月で辞めてこのざま(フリーター)なんだぞ!それに、未成年にいかがわしいことをする風俗やポルノ作品の無法地帯…。こんなおぞましい変質者しかいない国に私の、世界一いや、宇宙一可愛い弟が迷い込んでしまったら…!!」
「…今、私の目の前にいる変質者を超える変質者はこの世に存在しませんよ。」
「…君、さっきから、聞こえないふりをしてやっていたが、セリフがいちいち辛辣だぞ!!所詮名前もないモブキャラのくせに…!」
「…聞こえてたんですか。」
「…とにかく、私の可愛い弟をなんとしてでも、探し出すんだ!…それに、弟に指一本でも触れた者は…生かしてはおけない…!!」
「…早く、寝ろよ!!この変態ブラコン兄貴!!」
―その頃のアパートのお風呂場ー
「王子君、髪さらさらだね!シャンプー何使ってたの?」
俺は、王子君(銀髪バージョン)の髪を洗ってあげていた。自分でやらせたら、やったことがないから、目の中に泡が入って大騒ぎになっちゃったんだよ…。
「覚えてないや。なんか、シャンプーだけじゃなくてコンディショナー?とか、トリートメント?とかいろいろしてもらったから…。何か…面倒臭い人に…。」
「面倒臭い人?召使いさんのこと…?」
「ううん、違う。…僕にいちいち、べたべたしてくるんだよ。」
「…もしかして、兄弟とか?」
「そうかもしれない。…思い出した!…僕にはお兄さんがいる!!」
「王子君、お兄さんとお風呂に入ってたの!?14歳にもなって…。」
「…僕のお兄さんが勝手にやってただけだよ!なんでかわからないけど僕のこと大好きなんだよ…。キモいくらいに…。」
「まあ…王子君、可愛からね…。お兄さんの気持ちもわからなくもないけど…。たしかにキモいね…。」




