モンスター図鑑
「このモンスターはスライムみたいに消えないんだね」
クロエは足元に転がった骨の山を不思議そうに見下ろしている。
スライムを倒すと光に包まれて消えていくけど、スケルトンは倒しても消えないらしい。
「すげえ。経験値もゴールドもスライムの10倍じゃん」
「通りで強いはずだよ」
「ねえねえ、スケルトンもっといないかな!?」
悪い顔をしたクロエが目を光らせる。
スライムの10倍の経験値を持っているスケルトンを倒せば、レベルアップが格段に早くなる。そうすれば今後の冒険に確実にプラスだ。できればもっと倒しておきたい。そのためには、まずはスケルトンを見つける必要がある。
というわけで、僕らは砦をくまなく探してみた。
「だめだー」
がっかりしたクロエがその場に座り込んでしまう。
「どうやら、あの一匹だけらしいね」
砦内を隅から隅まで探したけど、どこにも骨のモンスターはいなかった。
「あーあ。何匹もいたら、たくさんレベルアップできたのにー!」
そう言って不満そうに頬を膨らませるクロエ。
「しゃあない。地道にスライムを倒そうぜ」
残念だけど、この砦で得られるものは、もう無さそうだ。
僕らが砦を後にしようとした、その時だった。
床に転がっているスケルトンの亡骸がカタカタと揺れ出した。
「なんだ?」
レイが揺れている骨に顔を近づける。
すると、バラバラの骨が浮かび上がり、あっという間に、くっついていく。バラバラだった骨は、さっき倒したはずのスケルトンの姿に戻ってしまった。
「げ! 復活しやがった!」
復活したスケルトンが、僕らの前に立ちはだかる。
「ア、アル! 魔法だ!」
「ファ、ファイア!」
スケルトンに向かって、僕は焦りながらファイアを放った。
『スケルトンに70ダメージ!』
『スケルトンをやっつけた!』
EXP10 ゴールド10
スケルトンは再び崩れてバラバラの骨になった。
「……っぶねえ」
「ど、どうなってるの? 何で復活したんだろう?」
どうしてだろう……。スケルトンが復活した理由……。うーん……。ダメだ! 考えてもわからない。そもそも僕はこのモンスターについて詳しく知らない。なにかスケルトンに関して知る方法があればいいんだけど。知る方法……。あっ!
「そうだ! モンスター図鑑を見ればいいんだ!」
僕はメニュー画面を開き、その中からモンスター図鑑を選んだ。モンスター図鑑には今までに遭遇したモンスターのデータが記されている。
No.001 スライム
HP 8
EXP 1
ゴールド 1
説明 ぷよぷよした柔らかいモンスター。弱いので初心者が戦うのに最適。
No.002 スケルトン
HP 50
EXP 10
ゴールド 10
説明 剣と盾を装備した骨のモンスター。そこそこの攻撃力と守備力を持っている。倒すとバラバラに崩れて骨状態になり、10分すると復活する。炎弱点。
「スケルトンは倒しても10分で復活するのか」
なかなかに厄介な特性を持ったモンスターだ。
「ていうか、この骨、あの硬さでHP50もあるのかよ!」
「アルがいないと絶対勝てないじゃん!」
「でもさ、10分ごとに復活するなら、こいつで経験値稼ぎできるな」
そう言ってレイはニヤリと笑う。
「うーん……。でも10分もあったらスライム10匹以上倒せるよね? だったらスライム倒した方が早くない?」
「あー。それもそうか……」
「スケルトンを倒したらスライムを10分間倒して、その後に復活したスケルトンを倒せばいいんじゃないかな」
「あ、それなら無駄なく経験値集めできるね!」
こうして僕たちのレベルアップ効率が、いくらか上がった!
レイたちと一緒に砦の外に出た僕は、魔法を連発して次々とスライムを倒していく。
「ファイア! ファイア! ファイア!」
スライムはファイア一撃で確実に倒せる。こうやって連打しているだけで、ものすごい速さで経験値がたまっていく。
『アルはレベル7になった!』
『レイはレベル7になった!』
『クロエはレベル7になった!』
『レイはスキル:ポイズンシャボンを覚えた!』
ポイズンシャボン
消費MP 8
効果 口から毒々しい色のシャボン玉を吐き出して、相手モンスターを毒状態にする。
「おっ、新しいスキルゲット!」
「さっそく使ってみようよ!」
「おう! けど消費MP8か~。結構きついな」
「レイのMPっていくつ?」
僕は聞いた。
「16だぜ」
「いいなー。私まだ8だよ」
「クロエは戦士タイプだからMPは伸びにくいよな。でもHPは高いだろ?」
「80!」
「高ぇ! 俺60だぞ」
ちなみに僕のHPとMPは両方とも40。
「ま、いいや。とりあえず試してみようぜ」
レイは近くにいるスライムに狙いを定めると。
「ポイズンシャボン!」
レイの口から毒々しい色のシャボン玉が無数に吐き出される。シャボン玉はスライムを包み込むとパチンと割れた。
『スライムに毒を与えた!』
「よし! 成功した!」
「おー! それで、この後はどうすればいいの?」
「えっと……。……わかんねえ」
「たぶん待ってれば何かが起こるんじゃないかな?」
「それは見ものですなあ」
クロエの瞳が怪しく輝く。
――10秒後。
『スライムに毒ダメージ!』
「おおお! 何かダメージ与えたよ!」
「あれ? でも倒せないんだな」
「もう少し見守ってみよう」
――さらに10秒後。
『スライムに毒ダメージ!』
「おおお! またダメージが入った!」
「でも、まだ倒せてないな」
毒を食らっているのにスライムはピンピンしている。
「ま、まあ、もう少し観察してみよう」
その後も、10秒おきにスライムに毒ダメージが入る。だけどスライムは、なかなか倒れない。
ぼーっと待ち続けること数十秒……。
『スライムに毒ダメージ!』
『スライムをやっつけた!』
ついにHPが0になったスライムが、光に包まれて消えていく。
「おっそ!」
クロエが、でかい声で叫ぶ。
「なに、このスキル! これなら普通に倒した方が早いじゃん! これで消費MP8ってボッタクリでしょ!」
「毒状態にしてから離れれば、安全に倒せるっていうメリットもあるね」
「でも今の私たちならスライムなんて余裕でしょ?」
「それもそうだね」
スライムは、クロエの攻撃や僕のファイアなら確定で一発で倒せるし、レイの攻撃なら二発で倒せる。
ぶっちゃけ普通に戦ったほうが圧倒的に早く勝てる。
「またハズレスキルかよ……」
レイが、ガックリと肩を落とした。
レイのスキルは、敵のアイテムを盗むスティールといい、このポイズンシャボンといい、このヒロビロ平原ではイマイチ使い勝手の悪い技が多かった。
「もしかして俺って役立たず……?」
「そ、そんなことないよ!」
「そうだよ! レイは面白いよ! 面白枠だよ!」
「フォローになってねえ!」
気を取り直して、その後もスライム狩りを続けた。
「ファイア! ファイア! ファイア!」
僕がスライム目がけてファイアを連発していると、途中でスキルが発動しなくなった。手のひらから炎が出てこない。
「あれ?」
『MPが足りません』
どうやらMP切れらしい。
ステータス画面を確認してみる。
アル
MP 0/35
MPがすっかり空っぽだ。
「MP切れだ」
「え、じゃあアルは、もう魔法使えないの?」
「しばらくはね」
「MPってどうやって回復するんだっけ?」と、レイ。
「自動回復していくよ。ステータス画面で確認できる」
僕はステータス画面を開いた。目の前に半透明の青いウインドウが浮かぶ。その中から、自動回復に関するページを開いた。
自動回復
HP 7/min
MP 0.7/min
「どういう意味?」
クロエが聞いてくる。
「HPは1分で7回復するんだ。MPは1分で0.7回復するね」
「てことはしばらく待ってればHPもMPも自動で回復するってこと?」
「そういうことだね」
「オッケー。アルはしばらく休んでていいぜ。俺とクロエがスライムを狩るから」
「任せるよ」
「よーし! 張り切って戦うぞー!」
クロエはやる気十分だ。




