ついに
ガイコツは、右手に握った剣を頭上に掲げると、僕めがけて振り下ろしてきた。
巨大な剣が、僕に襲いかかってくる。
「うわ!」
僕は突然のことに驚きながらも、必死になって床を蹴った。僕が後方に飛び退くのと同じタイミングで、ガイコツの振り下ろした鋭いやいばが、僕の鼻先を落下していく。
あ、危なかった。ギリギリのところで回避できた。あんな攻撃を食らったら、ただじゃ済まないぞ……。
「はっ!」
レイが左手に握ったダガーで、ガイコツの二の腕を切りつけた。ダガーが骨に当たった瞬間、カンッという硬い音が鳴った。
『スケルトンにダメージを与えられない!』
「なに!?」
確かにガイコツに命中したはずなのに、レイの攻撃は、まるで効いていない。
ガイコツが剣を振り上げた。その刃は、驚いて固まっているレイに振り下ろされた。
「しまっ――」
反応が遅れたレイは完全に無防備。目の前に迫った凶器にまるで反応できていない。僕らの装備しているダガーの何倍も大きな刀身が、がら空きのレイの顔面に迫っていく。
「たあーーーー!」
その時、クロエがガイコツに飛びかかった。
レイに意識を取られていたガイコツは、クロエの攻撃に全く反応できない。直後、ガイコツの無防備な頭蓋骨に、クロエのダガーがクリーンヒットした!
『スケルトンに1ダメージ!』
「うええ!? たったの1ぃ!?」
なんと、僕らの中で最強の攻撃力を誇るクロエですら、ガイコツに対して、ほとんどダメージを与えられなかった。
「まずい! こいつ相当強いモンスターだ! 逃げよう!」
僕が声をかけると、クロエとレイは、すぐに身をひるがえした。僕らは一斉に逃げ出した。
「わああっ!」
取り乱したクロエは一目散に入口に逃げていく。
「くそっ……」
レイは顔だけをスケルトンに向けて悔しそうに吐き捨てた。
僕たちは砦の外に逃げると、三人で協力して、大急ぎで鉄扉を閉めた。
ずしーんという低い音が響き、扉が閉まった。
骨のモンスターが外に出てくるよりも前に、扉を閉めることに成功した。
命からがら逃げだした僕らは鉄扉に背を預けて、へたり込んだ。
「ふー。焦ったぜ」
「もー! なんであんなに強いモンスターがいるのー!?」
あの骨のモンスター……スライムよりも明らかに強かった。もしも初戦闘であの骨に遭遇していたら僕らは全滅していただろう。そう思うと、ぞっとする。
「……わからない。だけどこの砦にはもう近づかないほうがいいと思う」
「だな。まったく、あんなのがいたんじゃ命がいくつあっても足りないぜ」
「これ以上、村から離れるのは危険だ。今日はこのあたりでレベル上げしよう」
僕がそう提案すると、二人がうなずいた。
今みたいに予期せぬ事故に巻き込まれた時のためにも、強くなっておく必要がある。レベル4まで上がったとはいえ、僕らはまだまだ弱い。さらなるレベルアップが今の僕らにとっての急務だった。
幸い、この砦の周りにも、たくさんのスライムがいる。経験値集めには事欠かないだろう。というかヒロビロ平原には、いたるところにスライムが生息している。スライムなら僕らでも安全に狩れるし、ありがたいことこの上ない。
そう言うわけで僕たちはおとなしくスライム狩りを始めた。
……と言っても、相変わらず僕は戦力になれないのでサポートに徹する。バトルはレイとクロエの二人に頑張ってもらった。そして――。
『アルはレベル5になった!』
『レイはレベル5になった!』
『クロエはレベル5になった!』
『アルはスキル:ファイアを覚えた!』
ファイア
消費MP 1
効果 手から小さな炎を飛ばして、相手モンスターに炎のダメージを与える。
き、きたー!
ついに僕もスキルを手に入れたぞ!
しかも攻撃魔法だ!
「すげえ! やったじゃんアル!」
「おめでとう!」
二人が僕にお祝いの言葉を送ってくれる。
「ありがとう!」
「なあ、さっそく試してみろよ」
「うん!」
つ、ついにこの時がきた。
今まではレイとクロエに助けてもらってばかりだったけど、スキルさえ使えれば僕だってきっと活躍できるはず……!
よーし、やるぞ!
僕は近くでほよほよしているスライムに狙いを定めた。
「ファイア!」
叫んだ瞬間、僕の手のひらから小さな炎が飛び出した。炎は、スライムに見事に命中した!
『スライムに30ダメージ!』
『スライムをやっつけた!』
「すっげえダメージ!」
「つっよーい!」
「や、やった!」
何と僕は一撃でスライムを倒した。
ファイアで与えたダメージは30。信じられない。ダガーで攻撃した時は、2とか3のダメージしか与えられなかったのに。何とも言えない感動が湧き上がってくる。
しかもファイアの消費MPは1。レベル5になった僕の最大MPは30。最大で30発ものファイアを放つことができる。
「すげえよアル! めちゃくちゃ強くなったな!」
「もー、私より強いじゃーん!」
「はは」
レイとクロエがめちゃくちゃ盛り上がっている。少しだけ照れ臭い。
「よし! この調子でスライム倒しまくろうぜ!」
「うん!」
僕は覚えたばかりのファイアを撃ちまくった。
この魔法、かなり遠くまで飛んでいくので、スライムにわざわざ近づかなくても遠くから発動するだけで、ほぼ自動的にスライムを倒せる。めちゃくちゃ楽だ。しかも安全。
スライムに照準を合わせて……。
「ファイア!」
「ぽ!」
『スライムを倒した!』
スライムに照準を合わせて……。
「ファイア!」
「ぽ!」
『スライムを倒した!』
周りにはスタイムが大量にいるので、狩りたい放題だった。僕はスライム目がけてファイアを撃ちまくった。ものすごい勢いで経験値が増えていく。
『アルはレベル6になった!』
『レイはレベル6になった!』
『クロエはレベル6になった!』
『クロエはスキル:大盾を覚えた!』
大盾
消費MP 5
効果 大きな盾を作り出し、一回だけ受けるダメージを1/10にする。大盾使用時は攻撃できない。一度使うと一分間は再使用できない。
「わーい! またスキル覚えたー!」
「クロエはもう二つ目かー。いいなあ」
「うふふ」
「つってもクロエの守備力ならスライムからはダメージ食らわないだろ?」
「うん! たまに1ダメージ食らうときもあるけど、ほとんどノーダメ!」
「だよな」
「強いモンスターに遭遇した時にでも使おーっと!」
「強いモンスター、か。……そう言えば砦の中にいた骨ってアンデッドなのかな?」
レイがそんなことを聞いてくる。
ちなみにアンデッドとは、死してなお動き続ける者のことをいう。
「たぶんそうだと思うよ」
「アンデッドって炎に弱いよな?」
レイのその言葉に僕はピーンとひらめいた。
「あ、そうか! 僕のファイアが効くかもしれない!」
アンデッドの弱点は炎や聖なる力。ファイアーは炎の魔法だ。うまくいけば砦にいた骨のモンスターを倒せるかもしれない。
「行ってみようぜ!」
砦の中に入ると、中央にあの骨のモンスターがいた。
僕たちに気づくと、スケルトンは剣を振り上げて襲いかかってきた。
「アル! いまだ!」
「ファイア!」
僕は向かってくる骨に向かってファイアを使った。
ファイアがスケルトンの全身を包んで燃やす。
『スケルトンに70ダメージ!』
『スケルトンをやっつけた!』
EXP10 ゴールド10
「やった!」
「すげえ! 一発だ!」
「アル、つっよーい!」
僕のファイアを食らったスケルトンは、ばらばらになって崩れ落ちた。
それはまさに一瞬の出来事。さっきはまるで敵わなかったスケルトンに、僕たちはあっさりと勝ってしまった。まさかこんな楽に勝てるなんて……! 魔法を放った僕自身も驚いてしまう。




