初スキル
「スライム強いよー。これが最弱モンスターなの? ほんとは世界最強なんじゃないの?」
「俺らがそれだけ弱いってことだな」
レベルが上がったので、僕はステータス画面を開いて確認してみることにした。
目の前に青色の半透明なウインドウが浮かぶ。
アル レベル2
EXP 1
NEXT 5
よし! ちゃんとレベル2になってる!
「スライムのEXP(経験値)は1か」
レイはちょっと不満そうだ。
あれだけ強くて、たったの1しかもらえないんじゃ文句を言いたくなる気持ちもわかる。
「NEXT 5って書いてあるね」と、クロエ。
「次は経験値が5になったらレベルが上がるってことだね」
僕はクロエに教えた。
「ねえねえ、レベルっていくつまであるのかな?」
「世界には100レベル以上の人もいるらしいよ」
「100!? 高すぎでしょ」
「がんばれば俺たちも100まで行けるかもしれないぜ?」
「そっかぁ……」
そう言うとクロエは立てた人差し指を口元に当てて「うーん」と悩んでいる。何かあったんだろうか。
「よし、決めた! 今から私の夢はレベル100になること!」
「ずいぶん軽い感じで夢が決まったね」
「クロエらしいな」
言いながらレイはニヤリとしている。
「そういえばレイは、なんで冒険の旅に出ようと思ったの?」
クロエがそんな質問をした。
「お前たちが旅に出るって言ったからだよ。俺は二人と一緒にいる方が楽しいからさ」
「えー! 意外だね。レイのことだから何か大きな目的があるかと思った」
クロエのその意見に僕も同感だった。普段クールなレイからしたら、意外なほど素朴な理由だ。
「別にでかい目的とかないぜ? 俺はこうやって三人で過ごすのが好きなだけだよ」
「はえー」
クロエは意外そうに目をぱちくりさせる。
「そういやアル、攻撃されてたけど大丈夫か?」
「少しダメージを食らったけど、まだ平気……だと思う」
「あんまり無理するなよ?」
僕は心配してくるレイにコクリとうなずく。
HPが0になったら死んでしまう。決して無理はできない。
「三人ともレベルアップして強くなったから、次のバトルでは、きっとさっきよりも楽にスライムに勝てるはずだよ」
レベルが上がるとステータスが上がって強くなる。そうすればバトルは確実に楽になる。
そうこうしていると、新たなスライムが僕たちの前に、ぽよぽよと弾んで来た。
「レベルアップの効果、試してみるぜ!」
やってきたスライムに、レイが素早く駆け寄って切りかかる。
『スライムに4ダメージ!』
「おっ! さっきよりもダメージが増えてる!」
心なしか、レイは動きのキレも増していた。
「たあーーーーー!」
態勢を崩しているスライムにクロエがダガーを振り下ろした。
『スライムに9ダメージ!』
『スライムをやっつけた!』
「おおっ! ナイス、クロエ!」
「すげえ! やるじゃんクロエ!」
「や、やったー! 初めて当たった!」
「ていうか威力強くね?」
「えへへ」
レイに攻撃力を褒められて、照れたように頭をかくクロエ。
「よーし、この調子でどんどん行くよ!」
勢いづいたクロエが、スライムの群れに突っ込んでいった。
――しばらくして。
『アルはレベル3になった!』
『レイはレベル3になった!』
『クロエはレベル3になった!』
『クロエはスキル:スラッシュを覚えた!』
スラッシュ
消費MP 2
効果 全力で切り付けて敵一体に大ダメージ
「やったー、スキル覚えた!」
スキルを手に入れたことで、クロエが嬉しそうに、はしゃいでいる。
「この調子ならレベル100もすぐだね!」
レベルも上がるし、スキルも覚えるしで、すこぶる上機嫌なクロエ。
「そうだといいけどね」
そう答えたはいいものの、僕には少し気がかりなことがあった。
それを確認するために、ステータス画面を開いてみる。
アル レベル3
EXP 5
NEXT 14
……やっぱり。
「ムムム……。なんかレベルアップに必要な経験値が急に増えた気が……」
クロエも気づいたらしい。
そうなのだ。レベルが上がれば上がるほど、レベルアップに必要な経験値はどんどん多くなっていく。つまりレベル上げが大変になる。最初は1のEXPでレベルアップしたのに、その次は4、そして今度は9のEXPが必要らしい。かなりのスピードで増えているのがわかる。このヒロビロ平原にはスライムくらいしかモンスターがいない。そしてスライムのEXPは1。レベルアップに必要なEXPがこのまま増え続けたら、レベル上げが頭打ちになることは目に見えていた。
「レベルが上がるほどレベルアップに必要な経験値は増えていくんだよ」
「うえー。私のレベル100の夢が遠い……」
「まあ、地道にやっていこう!」
「あ、じゃあ覚えたスキル試してみる!」
スキルというのはいわゆる必殺技みたいなもの。スキルを使うことで通常の攻撃よりも大きなダメージを与えられたり、戦闘が有利になる補助効果を得られたりと、いろいろな恩恵がある。
ダガーを構えたクロエが近くにいるスライムに近づくと――。
「スラッシュ!」
スキルを発動した瞬間、クロエのダガーが強い輝きを放つ。そして、今までの戦闘では見せたことのない機敏な動きで、スライムを横なぎに切りつけた。
『スライムに24ダメージ!』
『スライムをやっつけた!』
「やば!?」
クロエのあまりの強さに、僕は思わず叫んでしまった。
「つええ!」
レイも同じ感想だったらしい。
「私、めちゃくちゃ強くなってる!」
攻撃した当の本人も、自分の強さに驚いているようだった。
「思ったんだけど、なんかクロエだけやたら強くない?」
「俺も思った。なあ、ステータス見せあおうぜ」
レイの顔の前に、半透明な青色のウインドウが浮かび上がる。
レイは、それを僕とクロエに見せてくれた。
レイ
レベル 3
HP 30/30
MP 8/8
力 6
防御 6
魔力 2
魔防 4
素早さ 23
器用さ 18
運 16
攻撃力 11
守備力 10
EXP 6
NEXT 14
装備
右手
左手 ダガー(攻撃力+5)
頭
体 普段着(守備力+3)
足 革の靴(守備力+1、素早さ+3)
アクセサリー
スキル
なし
「素早さ・器用さ・運が高いね。盗賊っぽいステータスだ」
「通りで、すばしっこいと思った!」
クロエの言う通り、レイは僕ら三人の中で明らかにバトル中の身のこなしが速かった。俊敏な彼は、何度もバトルを繰り返したのに、スライムの攻撃をかわしまくり、一度もダメージを食らっていない。
「出来れば戦士寄りのステータスが良かったんだけどな。ま、こればかりは素質だからしょうがないか」
「じゃあ、次は僕だね」
名前 アル
レベル 3
HP 15/20
MP 20/20
力 2
防御 4
魔力 20
魔防 18
素早さ 13
器用さ 10
運 6
攻撃力 7
守備力 8
EXP 6
NEXT 14
装備
右手 ダガー(攻撃力+5)
左手
頭
体 普段着(守備力+3)
足 革の靴(守備力+1、素早さ+3)
アクセサリー
スキル
なし
「俺と比べると、明らかにMP・魔力・魔防が高いな」
「僕は魔法使いタイプっぽいね」
「なんかアルにぴったりな気がする!」
「本当?」
「うん! だってアル、読書とか好きでしょ?」
「そうだね」
「俺もアルが魔法タイプなのは解釈一致だな」
「んじゃ、最後は私ね!」
名前 クロエ
レベル 3
HP 38/40
MP 2/4
力 20
防御 20
魔力 2
魔防 2
素早さ 7
器用さ 8
運 10
攻撃力 25
守備力 24
EXP 6
NEXT 14
装備
右手 ダガー(攻撃力+5)
左手
頭
体 普段着(守備力+3)
足 革の靴(守備力+1、素早さ+3)
アクセサリー
スキル
スラッシュ
「クロエはHP・力・防御がやたら高いな」
「攻撃力と守備力が僕の3倍以上もある……。完全に戦士タイプだね」
「こりゃ強いわけだわ」
「えっへん!」




