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処刑された勇者は他人の頭を装着する ~アン〇パンマンじゃあるまいし、頭を交換するなんてあり得ます?~  作者: 貝ひも


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第8話 人間の男、一人来ませんでしたか

それだけではない。


【怨霊の召喚が解除され、収納されます】

【怨念を解消した怨霊は、いつでも召喚できます】

【再召喚時、魔力を消費しません】


次々と流れるメッセージの中から、ダンテは重要な単語を掴み取った。

収納。

今、自分の収納空間は?


【収納怨霊:1/1】

【怨霊の収納空間が満杯になりました】

【収納空間が不足している場合、消滅します】


『収納空間は満杯。不可能だ』

消滅? 吸収した能力も消えるのか?

その程度なら、まだいい。

今この状況で、「頭」がいきなり消えたら?

『……死ぬ! 能力値が瀕死同然のアンデッド、いや、アンデッドが瀕死ってのもまず言葉がおかしいが、とにかく――』

ここは村の中の酒場だ。

見えも、聞こえもしなくなった状態で、ここを抜け出して生き延びられる可能性は、限りなくゼロだろう。

処理しなければ。


【収納空間を整理してください】

【自動収納までの残り時間:10】

【9】


最速で!

がたんっ――!

ダンテは即座に立ち上がり、走った。

「え、えっ!? お、おにーさん! どうし――」

「おいこら! 食い逃げか!? 金払え!」

「まるでケダモノみたいに食って逃げ――」

「だから俺は、あいつと飯なんか食うなって言ったんだ!」

「事情があるんですよ! おにーさん! どこ行くんですか!?」

すでに酒場の外へ飛び出したダンテを見て、エレナはがばっと立ち上がって追いかけた。

他のパーティーメンバーも、じっとしているわけにはいかなかった。

「この期に及んでまで肩を持つのかよ、まったく」

「ちくしょう、なんて苦労だ……。さっさと追うぞ!」

「誰が好きでこんな顔に生まれたってんだ、くそっ。俺だってイケメンに生まれたかったわ」

ぼやきとは裏腹に、彼らは「パーティーの実質的リーダー」に従うしかなかった。

酒場の外に出た彼らは、隣の建物の間の路地へ入っていく後ろ姿を見た。

「おにーさん! おにーさん! どこ行くんですか!?」

「とにかく追うぞ、エレナ! あっちだ!」

エレナ一行は、我先にとダンテの後を追って走った。

当然、先を行くのは三人の男たちだった。

いくら重装備のタンク型とはいえ、魔法使いのエレナが彼らより速く走るのは不可能だからだ。

「うっかりのふりして、一発かましてやる」

「俺も。食い逃げかと思って手が先に出ちまった~って言い訳すりゃいいだろ。それくらいなら、エレナもきつくは言えまい」

エレナと距離が開くやいなや、男たちはひそひそと囁き合った。

何より、あの野郎が飛び込んだ先は、人目の少ない路地だ。

目の上のたんこぶだった優男を、ついに合法的に締められる時が来たのか。

三つの条件が噛み合い、ついに男たちの我慢も臨界点を超えた。

エレナに小言を食らったとしても、必ずダンテをぶん殴ってやるという一念。

「この野郎ォ――ぉぉおおっ!?」

「うわ……なん……」

「な、なんですか? あれ?」

一つになった彼らの心は、路地を曲がって入った瞬間、即座に消滅してしまった。

動揺のあまり言葉も出ないとは、こういうことだろうか。

三人の男は、ただ目をぱちくりさせるだけだった。

パーティーの名目上のリーダーである軽装の男が、かろうじて一言を絞り出したのがすべてだった。

それも、その威厳と佇まいにおいて、「D等級冒険者ごとき」にも分かるほどの、すさまじい気迫に満ちた実力者だったから。

「あー……その、ここにもしかして男が――。え、つまり、その、『人間の男』……一人、来ませんでしたか?」

性別だけでなく、種族まで口にする理由は明らかだった。

「……」

彼らの前にいたのは、ハイエルフの女性だったのだから。


* * *


収納する空間がないということと、その空間を用意するまでの制限時間。

それを見た瞬間、ダンテはすでに方法を見つけ出していた。

ただ、文字通り時間が切迫している上、人前で迂闊にはできないから、急いだだけだ。

ぜえ、ぜえ、息が上がり、エレナたちの声が聞こえてくるが、今は構っている場合ではない。

人気のない路地に身を投げ込んだ時には、すでに最後のカウントダウンの最中だった。


【収納までの残り時間:3】

【2】

【1】


空間が満杯で収納できない状況?

解決方法など、簡単だ。

『〈怨霊再召喚〉、収納空間にある頭を!』

空ければいい。

収納した頭を取り出す時には、魔力を消費しないのだから。


【収納された怨霊を召喚します】

【収納怨霊:0/1】


『出た――。ふう、セーフ』

セーフ、と思った瞬間、ふっ、とダンテは明かりが消えるような暗転を経験しなければならなかった。

もちろん、世界が突然暗くなったわけではない。

さっきまで首の上に載っていたザークの頭が消え、視界を失っただけ。


【怨念を解消した怨霊が収納されます】

【収納怨霊:1/1】

【収納空間が満杯になりました】

【収納されない怨霊は消滅します】

【収納された怨霊は、いつでも再召喚できます】

【再召喚時、魔力を消費しません】


『ふううう……いや、まだ安心する時じゃない』

すべての問題が解決したわけではないのだ。

背後から聞こえていた、エレナと男たちの叫び声をダンテが忘れるはずもない。

彼らの速度を考えれば、男たちは事実上すでに路地に入ったと見ても過言ではないだろう。

『くそっ、時間が足りなくて――』

本音を言えば、再収納してもう一度ザークの頭を取り出して装着したいが、その隙もない。

今のダンテの状態は、胴体だけがじたばた。

傍らには、頭が一つぷかぷか。

この状況を見られてはならない。

だから……嵌める。

頭を。

誰の、何の頭を?

がちゃり。


【怨霊の頭を装着しました】


ダンテは、ハイエルフの女性の頭を、首の上に載せた。


【水準の高い頭です】

【肉体との格の差により、具現率が減少します】

【具現率21%】


具現率21%への疑問に、構っている暇はなかった。

すでに路地を曲がって入ってくる、一団の人間たちがいたのだから……。

「この野郎ォ――ぉぉおおっ!?」

「うわ……なん……」

「な、なんですか? あれ?」

彼らに何か言おうとして、ダンテもまた気づいた。

目線が、いくらか低くなっている。

いや、目に映る世界そのものが違う。

人間の目で見ているのではない。

匂いをはじめ、あらゆる感覚の経験が、見知らぬものに感じられる。

『いや、違う、それだけじゃない……これ、まさか!?』

ごくり。

ダンテは、この変化の理由を知ることができた。

目の前の男が、なぜこんなことを言うのかも。

「あー……その、ここにもしかして男が――。え、つまり、その、『人間の男』……一人、来ませんでしたか?」

システムメッセージが、答えを教えてくれていたから。


【怨霊の生前情報を基に、身体を再構築します】


『性別まで変わるのか!?』

ただ顔が変わるだけではない。

文字通り、根本的な部分から身体が再構築されるということ!

少し小さくなった体躯。それに伴って縮んだ手足、いや、男なら普段感じるはずのない奇妙な胸部の感覚に、すっと視線を下ろした瞬間……。

《これは何の狂った真似だ!? 貴様、よくも私と合一ごういつを果たしたな!? 軟弱な種族の雄の分際で!?》

ハイエルフが叫んだ。

自分にだけ聞こえる罵声だろう。

彼女の気性は、やはり並ではなかった。

だが、そんなことすらまともに考えられないほど、女性ハイエルフの体になったダンテは、動揺するしかなかった。

本日もお読みいただき、ありがとうございます!

路地に飛び込んだ三人が見たものについては、どうか彼らの気持ちになって想像してみてください。

次回の更新は、明日の朝7時20分です!

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