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処刑された勇者は他人の頭を装着する ~アン〇パンマンじゃあるまいし、頭を交換するなんてあり得ます?~  作者: 貝ひも


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第6話 健全な肉体に、借り物の精神が宿る

ダンテの行動は、合理的かつ効率的に行われた。

残りの魔力は1。

この状況で、情報量も多く協力的な頭が召喚されることを願って、もう一度スキルを使う?

『スキルはダメだ。馬鹿のやることだ』

少なくとも一つ、システムは嘘をつかない。

SR等級の頭があんな反応を見せる時点で、たとえ別の頭をもう一度召喚したところで、得られる情報量は少ないだろう。

そのためのリスクは、魔力が0まで減ること。

その瞬間、すべてが終わるかもしれない。

『……急に「目覚めるように」自覚したんだ』

魔力が0になった瞬間、自我のないアンデッドになる可能性に注意しなければならない。

だとすれば、リターンもろくにないハイリスクを背負う必要はない。

結局、目の前に見える二つの頭で何かをするしかないということだ。

『二つ! 合わせられるか? 二つ合わせて、どうにかならないか?』

ダンテが真っ先に試そうとしたのは、これだった。

『最後の大陸』の特徴。

憑依する前から、発売七ヶ月で全世界最多販売数を更新してしまったイカれたVRゲーム。

無意味なアイテムはない。

不要な仲間NPCもいない。

一見理解できないスキル、アイテム、仲間も、その組み合わせ次第で、とんでもないシナジーを生み出したものだ。

「ぐへへへ、合体ですか? 合わせるというお言葉の意味は、もしやお二人の――」

『お前、今度歯を見せたらぶっ壊すからな』

「――はいっ」

しかし、いやらしい笑みを浮かべる美青年の顔も。

心の底からしかめっ面をするハイエルフの顔も。

その反応から見て、頭二つで何かをするのはもう無理だと、ダンテは確信した。

『ちくしょう』

だが、残念がってばかりのダンテではなかった。

自分の【ステータス】の中でも、特に異質なものが何か。ダンテは見抜いていた。

『――【頭部欠損】』

バフやデバフを示す欄。

言うなれば【頭部欠損】は、【中毒】や【出血】、【混乱】と同じということだ。

デバフだと考えれば、結局は克服が可能だという意味でもある。

そこまで考えが至れば、次は『最後の大陸』の特徴そのままだ。

一見役に立たなそうなものでも、組み合わせ次第でシナジーを生む?

ぷかぷか浮いている頭に、生み出せるシナジーなんてあるのか。

考えてみれば、当然のことだった。

目の前の頭二つを、合わせることはできない。

頭と頭をくっつけるなんて、不可能なのだから。

『まったく、生きてりゃ色んなことがあるもんだ……』

合わせてシナジーを生めるとしたら、方法は一つ。

頭と、胴体をくっつけることだろう。

そこでダンテは、目の前に浮かぶ美青年の頭を掴み。

がちゃり。


【怨霊の頭を装着しました】


そのまま、空っぽの首の上に載せてしまったのだ。

と同時に、明るくなる視界。開ける耳。

そして目の前に、ずらりと流れるシステムメッセージ。


【水準の低い頭です】

【肉体との格の差により、具現率が増加します】

【具現率100%】


【スキルを獲得しました】

【〈畑耕し(E+)〉】


【怨霊の生前情報を基に、身体を再構築します】


【頭となった怨霊を除く、他の怨霊はすべて収納されます】

【収納怨霊:1/1】

【収納空間が満杯になりました】

【収納されない怨霊は消滅します】

【収納された怨霊は、いつでも再召喚できます】

【再召喚時、魔力を消費しません】


その間にも、システムメッセージはずらずらと、ホログラムのように流れていった。

やはり初めて見る文言だったが、違和感はなかった。

説明どおりに受け取って、理解すればいいのだから。

残るは、一つだった。

「人!? 人がいるぞ!?」

「だ、誰ですか!?」

それを見て動揺する間もなく、若い人間が四人、目の前に現れた。

ダンテは言った。

「こんにち……は」

生まれて初めて見る人間の顔で、微笑んでみること。

自分の知っている顔の筋肉と微妙に違うポイントがぴくぴくと動いて口角を上げるというのが、どれほど奇妙で鳥肌ものか。ダンテにはよく分かった。


* * *


『体が……なんだかフィジカルのスペックは良くなった気はするが、違和感があるな』

手足はすらりと長く、背も少し伸びた。

アンデッドの時に斬られた部位、魔法を食らった部位も、「見た目」は無事だ。

システムメッセージの最後の文言どおり、外見が再構築されたのは確かだった。

《ふっふん、俺、顔と体だけは確かでしたからね。実戦で鍛えた――》

『実戦なもんか。農作業でもしてたんだろ。黙ってろ』

《農作業……農作業?》

ダンテの指示に、美青年はただ間の抜けた声でぶつぶつと呟いた。

と同時に、ダンテを取り囲んだ面々が、それぞれの疑問を投げかけてきた。

「兄さんはここに、どうやって……いつ入ったんです?」

「くそ、戻るんじゃなかった」

「あの、〈アーティファクト〉はもう見つけたんですか?」

未発見、未公開のダンジョンに人がいるということ。

自分たちの目的が達成できなくなったかもしれないという、未練と疑い。

露骨に否定的な態度を取る他の面々と違い、エレナだけは本気で尋ねた。

「モンスターは? アンデッドがいたはずなんですけど、見ませんでした? お、おにーさんが倒したんですか?」

具体的に、どんな事態に置かれているのか。

実際にアンデッドを倒しはしたのか。

ダンテは、質問に集中した。

そしてエレナの仲間たちは、呼び方に集中した。

「おにーさん?」

「エレナ! 誰にでも軽々しくおにーさんなんて――」

「誰って! この、顔のいい……じゃなくて、その、顔がいいとかじゃなくて……!」

エレナの顔が真っ赤に染まったが、ダンテは気にも留めなかった。

ただ、混乱する彼らに、図々しく答えるだけだった。

「アンデッドは見てないな。薬草を採ってたら――、こほん。どうにかここまで来ることは来たんだが……」

あの様子なら、この答えに疑問を持つこともないはず。

むしろこういう隙こそ、【ステータス】を確かめる余裕だ。

万が一、彼らと戦うことになるかもしれないのだから。


名前:■■■

種族:人間

レベル:2、ランク:F

職業:農奴、補助職業:なし

筋力:3(+0) 敏捷:2(+0) 知力:1(+0)

体力:3(+0) 魔力:0(+1)

状態:具現率100%


伏せられた名前。変わった種族。

もう表示されない【頭部欠損】。

これがこの頭の情報だと認識するのは、さして難しいことではなかった。

『括弧の外はこいつのもの、括弧の中はさっきまでの俺のステータス。加算される形か』

アンデッドだった自分の能力値を覚えているからこそ、ステータスの構造もすぐに把握できた。

もっとも、構造がどうであれ、とんでもなく低い能力値だということが重要なのだが。

これで、目の前の四人を相手にする?

『ゴミみたいなステータスだが、不可能じゃない。一人だけ仕留めればいいんだからな』

少し観察しただけだが、このパーティーの「中心」が誰なのかは、すでに把握していた。

「見てないんですか? 頭のないアンデッド……がいたはずなんですけど」

当の殺気を向けられたエレナは、頬を赤らめたまま、ダンテを見つめていた。

他のパーティーメンバーも、エレナの横から一言ずつ口を挟む。

「デュラハンに似てたが、感じはちょっと違ったな」

「ああ。服を着た状態が……ん? そういえば――」

「なんだ? 何か問題でも?」

ダンテはわざと彼らに一歩近づき、胸を張った。

とにかく外見だけでも復旧したのなら、何かやましいことがある人間のように振る舞ってはいけない。

自分ですら理解できない状況なのだ。彼らの想像力では及びもつかないはず。堂々としていればそれでいい。

「いや、問題があるってわけじゃ」

疑いの眼差しでダンテを見ていた男も、ぎくりとして後ずさるだけ。

もう一人の男も、「ありえない疑い」をしたのが気まずいというように、素早く話を逸らした。

「何をまたそんなに神経質に……。とにかく、アンデッドが倒されてないなら、まだ〈アーティファクト〉も残ってるってことだろ。どうする、リーダー?」

「……行ってみよう。エレナもいいな?」

「は、はい。私は大丈夫です。でも、おにーさ――、いえ、この方が……」

エレナがちらりと様子を窺うと、男三人の表情が同時に歪んだ。

それでも彼らは、腐っても冒険者だった。

「おい、兄さん。出口が分かるなら勝手に出るか、じゃなきゃ一緒に来るか。どうする?」

「一緒に行こう」

ダンテは薄い笑みを浮かべながら、頷いた。

場所、状況、何であれ、情報が必要だ。

『万が一のためにな』

ダンテは、エレナのすぐそばにぴったりとついた。

その行動に、エレナはおずおずとダンテの顔色を窺った。

そして、聞こえてくる声があった。

《あのー、どうやらこの子、俺に惚れたみたいなんですけど?》

ダンテは一瞬びくりとしたが、すぐに分かった。

頭の中だけで響いた声。「この状態」になれば、頭の声は周りには聞こえないということ。

『大事な場面で戯言を抜かすな』

頭の声に、ダンテは真剣に答えた。

しかし頭は、にやにやと呟き続けた。

《戯言だなんて。実際、男だろうが女だろうが、俺の顔、俺の体を褒めなかった村人は一人も――》

『待て。なんでそれが「俺の顔、俺の体」なんだ? その「俺」はもう俺だぞ』

《――え? え? いや、この体は俺の――》

『黙れ。俺のだ』

《ぐぬぬ……。じゃ、じゃあせめて肉! 肉を食わせてくれたら認めます、兄貴!》

『何が肉だ。肉に恨みでもあるのかってくらい……ん? 待てよ?』

本日、三話目の更新です!


明日投稿する予定の回だったのですが、ダンテがついに初めて「顔」を手に入れる回だと思うと、どうしても我慢できませんでした。連載スケジュールは作家が守るものだと聞いていたのに、崩しているのは作家本人です。


そして、お知らせです。明日から更新時間を【毎朝7時20分・毎晩10時20分】の二回に変更します! 通勤・通学のお供と、寝る前のお楽しみにしていただけたら嬉しいです。


続きが気になる!と思っていただけましたら、【ブックマーク】や【評価】での応援をよろしくお願いいたします。次回は、明日の朝7時20分です!

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