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処刑された勇者は他人の頭を装着する ~アン〇パンマンじゃあるまいし、頭を交換するなんてあり得ます?~  作者: 貝ひも


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第40話 四天王「ワン!」

この五日間、ダンテは色々なことをした。

いや、具体的には、一つのことを何度もやった。

数え切れないほど。狂ったように。

「――〈怨霊召喚〉、〈怨霊召喚〉、〈怨霊召喚〉――」

「千個目」

エバのカウントに、ダンテは首をぶんぶんと振りながら叫んだ。

「――ふううっ、ドレニアン! 全部吹き飛ばしてくれ!」

「………」

ドレニアンは軽いため息を、ふう、と漏らしてから、青黒い斬撃を放った。

豆腐でも切るように、寄り集まった怨霊たちがすっぱりと裂かれ、すべて蒸発した。

「これを、いつまで続ける気?」

ドレニアンは尋ねた。

ダンテとしても、容易には答えがたい質問だった。

「……時が来れば終わるだろ」

先ほどの千個目を含め、総計一万八千個の怨霊を召喚した。

ほとんど眠らず、ほとんど食べず、ほとんど休まず。

ダークフェアリーたちを酷使しながら、試行した。

その結果は?

「時? その時っていつだ? 人間の寿命では不可能だと思うが?」

《兄貴、D等級も一個しか出てないんですけど……》

F等級、17,983個。

E等級、16個。

D等級、1個。

『待ってろ、もう少し引けば違うはずだ。大数の法則ってのは元々、そう簡単に判別できるもんじゃないんでな』

いや、判別されていた。

F等級 99.9%。

E等級 0.09%。

D等級 0.009%。これは確定だ。

等級が一つ上がるたびに、桁が一つずつ減るという規則。

《じゃあ、いったいどれだけ大きい数なら判別できるんですか、兄貴?》

ダンテは答えられなかった。

どれだけ大きい数なら、だと?

規則に従えば、SR等級の出る確率は0.00000009%。

百億分の九。約十億分の一。

1/1,000,000,000。

この五日間、身も心もすり減らして二万個も引けなかったのに、十億回?

スキルを十億回使えば、エバみたいなのがもう一つ出てくると?

『いくら『最後の大陸』でも、こんなイカれた、あり得ない、悪辣な……』

自分は擦れに擦れた古参ユーザーだ。

『最後の大陸』のほとんどすべてを知り、慣れてもいる。

それでも超然としていられない、悪態をつかずにはいられない確率構成ではないか!

「ダークフェアリーたち、もう一回行くぞ」

だからといって、止まるダンテではない。

もう大数の法則には依存しない。

だが、ガチャ! ともかく「ガチャ」であるなら!

その偶然性と幸運にすがってでも、試行するしかない!

「はあ、はあ、ほんと……に?」

「ま、また行くの? ですか?」

「リセットしたんだから、もう一回行くに決まってるだろう。当たり前のこと訊くな!」

「い、いいいっ――。でもぼくたちも、マナがもうあんまりないんだってば!」

当の疲れ知らずのダンテを手伝って疲れ果てたのは、ダークフェアリーたちだったのだから。

「気に入ったのが一つ出たら、ひとまずやめてやる。心配するな」

「だから! その『気に入った一つ』がいつ出るんだよ! ですか!」

頬を膨らませるダークフェアリーたちを見て、ダンテはぷっと笑った。

「こらこら、お前たち、今、新しいパパが話してるのに……。ママに言いつけるぞ?」

「ううう……」

「あんなパパは、いっそ早く出て行ってくれたほうが――」

「なんだって〜? 全部聞こえてるが〜?」

せめてダークフェアリーたちをからかう楽しみでもあるのが幸いと言うべきか。

「あ、いえ! じゃあ魔法撃ちます!」

半べそのダークフェアリーたちの魔法を吸収しながら、ダンテは〈怨霊召喚〉スキルを使った。

一日、また一日が過ぎた。

傍らで見守っていたフェアリークイーン、ドレニアンが「自分の伴侶」をいよいよ引き剥がして止めようとした頃。

「出た!」

ダンテは思わず叫んだ。


【等級A、怨霊が召喚されました】


「ぷはははっ、そうだ、俺はやれると言っただろう!? 人のやることなんだからな、か〜ならず確率、そんなものにばかり執着しちゃいけないんだって? ん? やれる人間はや〜れるようにできて――」

今ばかりは喜びに舞い上がり、興奮を隠せないダンテだった。

無理もない。

何とA等級、確率で言えば一千万分の一ではないか。

基本ステータス自体が、ザークとは次元が違うはずだ。

恨さえうまく処理できれば、〈フェアリーの血系紋様〉を捨てることになっても、ザークの代わりに常時装着できるほどの威力があるはずの頭!

ころころころ……と、転がってきた頭が。


「グルルルル……」


犬の声を、出した。

《兄貴?》

「何だ、モンスターか?」

「モン……スターと言えばモンスターではあるんだが、これ――」

エルフやドワーフのように、交流できる異種族に分類される。

だが、好戦的な性格ゆえに、モンスター扱いもされる。

「――ノール?」

その中間のどこかに位置する種族、ノール。

ダンテは、今まさに目を開けた犬頭を検めた。

「待てよ。額の傷跡といい、オッドアイといい……まさか?」

見覚えのある特徴が見えた。

忘れようにも忘れられない特徴でもあった。

「四天王、ケセキ?」

魔王軍を実質的に率いていた四天王。

その四天王の中でも特に人間への不満が強く、好戦的な獣人じゅうじん族を統率して戦場の最前線に立った敵。

「狂犬きょうけん」ケセキ。


「ワン!」


過去の四天王が、吠えた。

威勢のいい犬の声だった。

だが、その中に込められた気配は、並のものではなかった。

「マ、ママ! ママ!」

「ママを守れ!」

ダークフェアリーたちは即座にドレニアンの傍へ飛んでいき、戦闘態勢を取った。

離れられずにいたザークの頭も、大騒ぎなのは同じだった。

《あ、兄貴!? 大丈夫なんですよね? あれ、あれ、噛みつきませんよね!?》

ケセキは、何もしなかった。

一度吠えた後は、ただ黒と白のオッドアイで、周囲を見回しているだけ。

前・魔王軍四天王、狂犬ケセキに怯えなかったのは、三人だけだった。

「心配おやめ、私の子供たち……。私の家では、誰一人、私の命令を拒めないのだから」

亜空間を自らの住処として使っているフェアリークイーン、ドレニアン。

果てなく広がるこの空間そのものが、彼女の家だ。

彼女の「退去要請」一言で、何者もこの空間に留まることはできない。

いや、そもそもAランクのケセキが、SランクのドレニアンをTh脅かせるはずもない。

「何を睨んでいる? 獣の分際で」

「……グルルルル」

同じ意味で、SR等級のエバが怯むはずもなかった。

平然とケセキを刺激している平和の守護者、ハイエルフのせいで、当のダンテが止めに入らねばならないほどだったのだから。

そして、怯まなかった最後の存在は、ダンテだった。

「ケセキ。俺を覚えてるだろう?」

そもそも〈怨霊召喚〉というスキルで呼び出された存在に怯えるはずもないのも事実だが、今のダンテの頭を埋め尽くしている疑問が、山ほどあったからだ。

今度の怨霊は、これまでとは完全に別のケースに分類せねばならない。

自分の知っている存在だ。

一般的な怨霊は恨を解消するまで記憶を取り戻せないのが基本だが……?

名前を呼んでやったら? もしや記憶を思い出すのでは?

そうなれば、恨を解消せずとも、事実上完璧に能力を使えるのではないか?

「ワゥ?」

ケセキは、首をかしげた。

ダンテも忘れていたとばかりに首を振り、改めて言った。

「ああ、姿がこれだからか? なら、お前の名前がケセキだということは覚えているか?」

姿が違うのだから、分からないのかもしれない。

ならば、自分を知っているかと訊くのではなく、彼自身の記憶を呼び覚ますよう手伝ってやれば!


「魔王アスタロトの四天王が一人。獣人族を説得し、挑発し、どうにかこうにか引き込んでは、犬さながらに暴れ回った狂犬。ハイテルですらお前の猪突猛進の戦術には震え上がったし、バルデスはお前の牙と爪をかき集めて武器にしてやると、それはもう大騒ぎだった。俺も……同じようなものだったしな」


殺す方法は、最も単純だったが。

殺すまでに、最も時間のかかった。

敵。


「ワンワン!」

ケセキが吠えた。

本日もお読みいただき、ありがとうございます!

SR排出率0.00000009%は、とあるソシャゲの闇を遥かに超えました。運営に問い合わせても、担当者(犬)が「ワン!」としか答えません。

次回の更新は、明日の夜7時20分です!

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