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処刑された勇者は他人の頭を装着する ~アン〇パンマンじゃあるまいし、頭を交換するなんてあり得ます?~  作者: 貝ひも


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第3話 イカれたアンデッドが妙なことをする

魔王を討ち果たした者にして、大陸の救世主。

人類の脅威にして、『滅びの前兆』ダークスターを召喚した者。

『俺の頭どこ行った? 俺の頭!』

そして、踊るように手足をばたつかせるアンデッド。

ダンテはひどく戸惑った。

こんなことがあるか?

『俺を助けたんじゃない? いや、そもそも頭がなきゃ生きてられるはずが——』

ドゴッ……!

『——ぐっ!?』

突然感じる衝突の感覚。

後ろへ飛ばされるように押されながらも、ダンテはかろうじて体勢を立て直した。

戸惑いは一瞬だった。

『押された』

仲間たちが俺を救って、俺を攻撃する?

しかも、頭のなくなった俺を。

『苦労したから? 俺を助けるのに苦労したぶん、その仕返しにちょっかいをかけてる最中——ぐへっ!』

ドゴッ、ドゴッ……!

立て続けに二発。

左肩と右脇腹に走る感覚。

ただの打撃じゃない。

とりわけ右脇腹の微妙な感触を、このダンテが分からないはずがない。

『斬られた。刃物……で斬られた痛みとは、少し違うが』

何か刃物が掠めていったときの感覚は、間違いない。

問題は、その感触のあとに訪れる痛覚が、自分の記憶とは違うという点だった。

とにかく、重要なのは感覚じゃない。

状況だ。

仲間たちが。

自分を救った後で。

ちょっかいをかけるために、こんなことをしている最中だと?

『くそったれ、そんなわけないだろ』

ダンテは馬鹿じゃない。

まして『最後の大陸』に憑依して十三年を過ごした人間だ。

それなりに仮説を立てながらも、自分の状態をシステム的に確認する徹底ぶりを備えている、ということだ。


【名前】ダンテ

【種族】アンデッド

【レベル】-18 【ランク】X

【職業】なし 【補助職業】なし

【筋力】0 【敏捷】0 【知力】0

【体力】0 【魔力】0

【状態】頭部欠損


死ぬ直前とは明らかに変わった、自分の【ステータス】。

自分は救出されていない。

生き返ったわけでもない。

『アンデッド』

種族区分、アンデッド。

自分は、死んだ。

ただ今、起き上がっているだけだ。


* * *


【ステータス】を見ても、理解できないことは山ほどあった。

マイナスのレベルと、ランクX。

おまけに、速度上昇、武器強化、出血、中毒などのバフやデバフ状態を示す項目には、『頭部欠損』。

疑問は後回しだ。

続けて【スキル欄】を確認。

何もない。

ダークスターに接触する前まで、びっしり埋まっていた欄は、今や空っぽだった。

【装備欄】も、【アイテム欄】も同じだった。

どこの国の誰もが欲しがった品々は、ただの一つも残っていなかった。

だから、ダンテは笑った。

『システムメッセージが見えるってのが、せめてもの慰めか』

世界の規則より『上位』で作動するシステム。

自分がまだ『最後の大陸』にいることを示すもの。

『場所は分からん。だが、状況は確かだ。誰かが俺をモンスターと勘違いして攻撃してるんだろう。まあ、勘違いってわけでもないか? 実際、システム上の種族区分がアンデッドなら、モンスターではあるしな』

笑えるが、笑って済ませられる問題じゃない。

この状況を、崩さなきゃならない。

『くっそ!』

ドッ、ドッ、ゴォォォォッ——!

二度の打撃、そして左脚に走る妙な感覚。

『何かもふもふして気持ちいい……んじゃなくて、魔法だ!』

感覚の異常は、アンデッドになったせいだろう。

それでも、『最後の大陸』憑依十三年の経験で、彼は自分の状態を素早く把握できるというわけだ。

『白魔法に、こんな継続的な打撃を与えるようなものはない。だとすれば、アンデッド相手に次に使われるとしたら炎系統だ』

おそらく、自分の左脚には火がついているのだろう。

痛覚がまともに感じられない状況。

正常じゃない。危険だ。

【ステータス】の数値上、体力は0。

HPが0という意味ではないが、この身体がどれだけ持つかは予測不能だ。

おまけに、火がついているのを見れば、追撃が来るはずだ。

『目を閉じ、耳を塞いだまま戦ったことは、案外多い。この状況が、対処不能ってわけじゃない』

備えなければならない。

そうできるだけの経験と知識がある。

『ふぅぅぅっ!』

ふうううん……。

問題は、力も敏捷もすべて0だという点だ。

これまで受けた攻撃パターンを分析して、予測でカウンターを振ったところで、ただ手足をばたつかせるしかない、という意味である。

ドゴッ……!

再び物理的な衝撃が走り、今度こそダンテは後ろへ吹っ飛ばされるしかなかった。

『……こういうとき、ニヤリと笑うべきなんだが。口がないから、笑ってる感じがしないな』

吹っ飛ばされたその時点で、ダンテは確信した。

最低でも三人。あるいは四人。

五人は超えない。

おそらくDランク前後。

『自分で言うのもなんだが、こんなステータスの身体を、今やっと転ばせた程度のな』

だが、ここからが本当の危機だ。

倒れていた敵が起き上がるときが、最も攻めやすい——Dランクパーティなら、知らないはずがない。

『だからこそ——』

奴らは近づいてくる。

必ず。

『——今だ!』

ダンテは、下半身へまっすぐ伸ばしていた両腕を。

そして、ずっと気に障る、奇妙な感覚の、くすぐったい左脚を。

渾身の力で振り回した。


* * *


「イカれてる! 自分の手に火を移して振り回してるぞ!?」

「うわああ、イカれたアンデッドだ!」

「い、イカれたアンデッドが自傷してる!」

手足すべてに火を移し、寝転がったまま暴れる、イカれたアンデッド?

頭のない死体へ近づいていた男たちは、素早く後ろへ退いた。

「くそ、燃え移った! 水属性の魔法を、早く!」

だが、もう遅い。

重装備の男の腕には、魔法で生成された火が燃え移っていた。

水を何本かかけたところで、簡単には消えない魔法の火。

それを消す一番の方法は、やはり魔力で形成された水で対処することだが……。

「え? 水属性の魔法なんてないのに、どうやって使うんですか!?」

「あ」

エレナには、水魔法がない。

魔法の火は、重装備の男の腕を伝って上半身へ、上半身へと上がっていった。

「み、水袋! 水袋でもいいから早くかけろ! 何やってんだ!?」

「じゃなきゃ離脱だ! もう帰還スクロールを使え!」

「ていうか、このアンデッドはなんで死なないんだ? 焼け死んでても、とっくに死んでるはずだろ?」

「アンデッドだから死なないんだろ!」

「こんな状況でそれを言うか!?」

「みんな黙れ! 起き上がった! 全員気をつけろ! どうするか早く決めろ!」

甘く見えた敵。

だが、易しくない攻略。

そのうえで起きた事故まで。

パニックの中で、初心者を抜けたばかりの冒険者たちが選ぶ手は、だいたい決まっている。

「とりあえず町へ! 立て直してから出直そう!」

まずは自分たちの命と安全を守る方法から選ぶのが、基本というもの。

各自スクロールを一枚ずつ取り出し、ビリッと破ることで、状況は終了した。

━━━━━━……!!!!

だから、冒険者たちは見られなかった。

彼らの撤退と同時に、頭のないアンデッドにまとわりついていた火が、消えていくのを。

正確には、その身体へと吸収されていくのを。

さらに正確には、火を消そうと、ごろごろ転がった途端に吸収されていったことを。

本来は毎日夕方5時更新! ……のはずなのですが。

初めての連載で緊張してしまい、そわそわした挙句、こんな時間に思わず一話投稿してしまいました……!(どうかお許しを)

明日からはちゃんと5時にお届けしますので、どうか気長にお付き合いいただけると嬉しいです。

もし少しでも楽しんでいただけましたら、【ブックマーク】や【★★★★★】で応援していただけると、緊張しがちな作者が飛び上がって喜びます!

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