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処刑された勇者は他人の頭を装着する ~アン〇パンマンじゃあるまいし、頭を交換するなんてあり得ます?~  作者: 貝ひも


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第17話 ハイエルフ、置くだけ

良心に照らして、S等級は望まなかった。

A等級も引くのは難しいだろうと考え、現実的にB等級を望んだのだが。

『でも百歩譲っても、D等級は一つくらい出てくれよ、人間的に……。いや、だからこその『最後の大陸』か』

B等級やA等級の頭が必要な理由は、「大きな計画」の上での流れだ。

そうではなく「今この瞬間」を基準に見るなら、D等級の怨霊でも出てくれたほうがよかったのではないか。

だが、発売七ヶ月で歴代最多販売数を更新するほどの現実感、その圧倒的な面白さ。

それと同時に、「現実的だからこそ余計に」地獄のような難易度で構成されたゲームが、そう甘いはずもないのだった。

《へへ……やっぱり俺が一番マシですよね、兄貴? どう見てもお爺さんやおばさんよりは、見栄えもいいですし》

まだ目を閉じているF等級の頭たちを見ながら、にやにや笑っているザークの声を聞いていると、なぜか余計に腹が立つダンテだった。

実際、ザークの言うことが正しいのだろうから。

彼らがどんなスキルを持ち、どんな能力があるのかは分からないが……。

『若いからって威張るのか? お前もどうせ老け……ないんだったな。それはちょっと羨ましい』

どうせ等級から見て、スキル、ステータスの面で大きな利得はないはずだ。

ならば結局、外見がすべての価値を持つことになる。

半ば自暴自棄なダンテの軽い口ぶりに、ザークの鼻が高くなった。

当然、ハイエルフが一言発するまでだけ有効な自負心だった。

「ザークだろうが、何だろうが、あんな頭が千個、万個あって何の役に立つ? 集めて一度に爆発させれば、見物ではあるだろうがな」

ダンテはダンテで、乾いた笑いが出てくるところだった。

SR等級、憑依して十八年間――アンデッドとして記憶の存在しない五年を含む――一度も見たことのない、最高水準の等級。

『ハイエルフって、元々平和を愛する種族じゃなかったか? 世界樹の森の近くに寄り集まって暮らす』

「そ、それと何の関係があるんだ? 平和? ああいう虫けらどもがむしろ平和を乱すんだろうが。平和は力で維持されるものだと知らんのか?」

文字通り奇跡のような確率を突き抜けて出てきたはずのSR等級は、あんなことを言っているし……。

ダンテは首を横に振りながら、【ステータス】を開いた。


名前:ダンテ

種族:人間

レベル:8、ランク:F

職業:剣士、補助職業:ゴブリンハンター

筋力:8 敏捷:10 知力:2

体力:7 魔力:4

状態:-


ザークの頭を装着した状態での、ステータス上昇。

魔力はやはり上がっておらず、知力もたったの2。

筋力と敏捷、体力は上がったが、依然として塵のような数値で……。

『まあ、失望することはない。F等級で何をしようってんだ。むしろこれが分かっただけ幸いだ』

ため息の一つでも深々とつきそうな状況だが、ダンテの現実感覚はそれを許さなかった。

現実的に、この程度で十分だ。

重要なのは、F等級の頭で飛躍的なステータス上昇をすることではない。

まだ解けていない疑問点を解消するのが先決。

その意味で、〈怨霊召喚〉をやみくもに使わなかった理由は簡単だった。


【収納怨霊:0/6】

【収納怨霊:0/5】

【収納怨霊:0/4】


〈怨霊召喚〉によって魔力が削られるたび、収納可能な怨霊の数も減っていたということ。

五つの頭を召喚した現在、魔力4の状態では、四つの頭まで収納可能だ。

一つはダンテが装着して連れ歩けばいいので、それこそぴったりの数というわけ。

『だが、F等級の頭をわざわざ全部収納する必要はないだろうし。今度は、吸収後に任意で破壊できるのかを確認してみればいいな』

ステータスとスキルは、どうせ彼らの怨念を解消した時点でダンテのものとして吸収される。

ならば、魔力1につき一つの空間しか増えない、貴重な収納空間を使う理由はない。

もちろん、今すぐやることではない。

頭のないアンデッドとして生きていかねばならない今、手札は多いに越したことはないのだから。

「やりたいことは?」

そこでダンテはまず彼らを起こし、怨念を確認しようとした。

F等級の怨霊ならザークと似たり寄ったりだろうし、それならさほど苦もなく、彼らの怨みを解消できるはず……という考えが浮かんだから。

だからこそ、ダンテは驚くしかなかった。

涙までぽろぽろとこぼしていた、中年の女性。

「ゴブリンに攫われた家族がいるんです。家族……もう名前も思い出せませんが、最愛の人たちを救うために、ゴブリンを殺した――。ああ……これでもう、思い残すことはありません。私の名前は――」

しゅわああああ─────……!

彼女は、話している途中で光とともに蒸発し始めたからだ。

「え?」

それだけではなかった。

「ゴブリンに襲われて、殺した……ああああ、ありがとうございます。俺の名前は――」

続いて出てきた中年男性の頭も、瞬く間に光に包まれるではないか。

───────────……!!!!

感謝、安堵、喜び……そのすべての感情を一つに練り上げた表情で、一組の男女の頭が光輝に包まれ、薄れ始めた。


【等級F、モリーの怨念を解消しました】

【モリーの能力を吸収しました】

【怨念を解消した怨霊が収納されます】


【等級F、ロウンの怨念を解消しました】

【ロウンの能力を吸収しました】


感動?

お涙頂戴?

「なにこれ?」

そんなものが、あるはずもなかった。

むしろダンテの立場では、呆れ返ると言うべきか。

《は、恨みが……晴れたみたいですね、兄貴》

「たったこれで?」

ただ、周りに転がるゴブリンとホブゴブリン、ゴブリンシャーマンの死体を確認しただけで、怨みが解消された?

殺す場面を直接見たわけでもないのに?

「あの程度で無念だと言うなら、いったいどんな人生を送ってきたんだ?」

ハイエルフは呆れたように呟いた。

それでも三つの頭が同時に怨念解消とならなかったのを幸いと言うべきか、むしろ残念と言うべきか。

「こほん、お爺さんは何が無念なんです?」

ダンテは尋ねた。

壮年の頭は長々とため息を吐き出し、自らの無念を詠じ始めた。

「世界が広いといっても、囲われて生きる人生に何が重要だと言うのかね、お若いの。人間に似た他の種族がいるということすら、確かめられずに死んだのがただただ無念で――」

「はい、ハイエルフです」

そこでひょい、と。ダンテはSR等級のハイエルフの頭を掴んで、彼の前に置いた。

「な、何をする! 私をいきなり――」

「やはり……やはり世界はそれほど広く、また自由だったというのか。そうだったのか……。ありがとう、お若いの……」

─────────────!

ハイエルフも動揺し、ザークは笑っている頃。

ダンテは成仏していく頭とシステムメッセージを見ながら、頷いていた。

『なるほど、F等級というのは能力もそうだが、怨念の水準でもあるんだな』

焼いた肉を食べる、ゴブリンを殺す、他の種族を見てみたい……。

文字通りF等級にふさわしい、『最後の大陸』の主人公の立場からすれば、あまりにも基礎的な問題。

だが、この世界を現実として生きる者たちには、無視できない問題でもあるはずだ。

F等級の頭、三つ分のステータスを吸収。


【収納怨霊:3/4】


【スキルを獲得しました】

【〈サバイバル料理(E)〉】


そして、料理スキルの獲得。

『アンデッドに、実にいいスキルをくれるもんだな』

ザークの頭を装着して種族区分が人間に変わったとはいえ、特に空腹や生理現象を覚えることはなかった。

その意味で、サバイバル料理?

ただの料理は生産系統のスキルだと知っているが、「サバイバル」のついた料理とはまた何なのか?

『……俺、本当にゲームを楽で済ませてたんだな』

今さらながら、『最後の大陸』の主人公の体に憑依したことに感謝するダンテだった。

くすくすと笑うダンテに一言物申すのは、やはりハイエルフだった。

「いつまで時間を無駄にするつもりだ? さっさと魔王の手がかりでも探しに行かんか!」

「魔王は俺が殺したんですって……。だが、もっともな話だ。時間を無駄にする必要はない。まず中をさっと見て回って、装備やら、アイテムやら、拾えるものがあれば拾っていくとしよう」

本日もお読みいただき、ありがとうございます!

本日の成仏は三件でした。ハイエルフさんのご協力に感謝いたします。

続きは、今夜10時20分に投稿します!

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