表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処刑された勇者は他人の頭を装着する ~アン〇パンマンじゃあるまいし、頭を交換するなんてあり得ます?~  作者: 貝ひも


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/25

第12話 寄り道にも、四つの理由

世界樹の森へ向かうには、いくつもの方法がある。

最も便利なのは、村から都市へ、都市から大都市へ、そして移動協約を結んだ大都市間のワープゲートを活用することだ。

〈帰還スクロール〉、〈テレポートスクロール〉などがすでに普及しており、D~C等級の冒険者たちが大した負担もなく使えるということは、つまり、すでに世界全体にそうした移動体系が敷かれているという意味。

金は多少払うことになるが、ルートさえうまく見つければ、二日以内に世界樹の森まで到達できる。

「キイイッ、キィッ――!」

「キイ、キイ、キイ!」

それでもダンテは現在、エレナ一行と別れた村から、そう遠くない場所にいた。

それも、木の棍棒を手に興奮したゴブリンと向き合いながら。

「ゴブリン三匹か……。典型的な偵察組みたいだが」

ダンテは軽く体をほぐし始めた。

長く、すらりと伸びた手足。

引き締まった筋肉が備わっている上、顔が小さく、比率的にはさらに大きく格好よく見える肉体。

その上、くっきりした目鼻立ちに、肌まで白い男の顔!

《こ、これ以上興奮させたら危なくないですか、兄貴?》

『なぜだ? 俺があんな連中にやられるとでも?』

《いえ、俺の顔に傷が――》

『この野郎……』

《す、すみません。でも、本当に! ご存知でしょう、俺、顔で食ってきた人間なんですよ》

F等級の農奴、ザーク。

今、ダンテの首の上に載っているのは、ザークの頭だった。

ダンテはその言葉を聞きながら、呆れを隠せなかった。

顔で食ってきた?

『農奴が何をほざく――。おい、それとお前を成仏させてやったのは誰だ? いや、今も残ってるんだから、厳密には成仏じゃないんだろうが。とにかくだ、この野郎。お前の怨念を晴らしてやったのは俺だぞ、俺。感謝こそすれ……』

《もちろん感謝してます。感謝してますとも。それでも俺の顔と体は――》

『この前も言ったが、なんでお前の顔で、お前の体なんだ? もう俺のだろ』

ダンテがまっすぐ世界樹の森へ向かわなかった理由でもあった。

ハイエルフの頭を装着し続けて行く?

具現率21%のステータスだけでも、C~D等級冒険者の水準。

まして、使えるスキルは等級が下落してもなお、すさまじい威力を見せるほどだ。

だが、女性の体だということ。

日常の動きの中でも感じられる、微妙な違いがある。

戦闘では、さらに大きな違いを感じるしかない。

何より、肉体である以上、食べて、飲んで、そして出さねばならないではないか。

その部分において、どうにも、到底、気分の問題と言うべきか、あるいは倫理的な観念と言うべきか。

それとも、一時的とはいえ彼女と協業する良好な関係を築いた状態で、それをぶち壊したくないからと言うべきか!

ハイエルフの肉体を維持することはできなかったため、ダンテはザークの頭を再召喚し、装着したのだった。

もちろん、一番目の理由とはいえ、必ずしもそれだけの理由ではなかった。

『最後の大陸』に憑依して十三年、酸いも甘いも噛み分けたダンテですら初めて見る〈怨霊召喚〉スキルの構造と、その後の状況まで確認する必要があるというのが、二番目の理由だった。

「何をしている? ゴブリンを前にして、お前たちだけで何をしているんだ?」

収納されていたザークを取り出して装着し、ハイエルフを収納しない状態ではどうなるのか。

特に魔力が消耗されることもなく、彼女は現在、ダンテの傍らにぷかぷかと浮かぶ頭として存在している最中だ。

『ゴブリンについての情報は知っているか?』

「あんな微生物ごときの情報まで、知っていなければならんのか?」

『いや、ザークも、お前もそうだっただろう。名前だけじゃなく、過去の自分が何をしていたのか、そういう情報を何一つ知らなかったんだから』

「それは……そうだが。だが、あれがゴブリンで、風が吹いただけで死ぬほど弱いモンスターだということくらいは分かる。今、私を馬鹿にしているのか?」

これが馬鹿にされたように聞こえたのか?

と、思いきり叫んでやりたいのを、ダンテはぐっと堪えねばならなかった。

とにかく、ハイエルフの頭は一種の助言役としてなら使い続けられる、ということは確認できたのだから。

その物言いが気に食わない上、人がいればバレてしまうだろうが……一人で旅する分には、それなりに立派な助言者になってくれるだろう。

『ザーク、お前は全部覚えてるんだよな? 名前、歳、お前が生きてた頃の環境、状況』

《ええ、ええ、兄貴……。それを考えるとまた憂鬱になりますね。この顔と体のせいで、お偉い方に呼びつけられて――》

ついでに三番目の理由、ザークは成仏したのか、残っているのか。

残っているなら、彼は何を、どれだけ知っているのか。

『そんなことは聞いてない。お前がなぜ怨霊になったのか。俺がお前を召喚で呼び出す前の状況……周りの様子、そういうのは覚えてるか?』

〈怨霊召喚〉のスキルが〈異次元の門〉との接触、ひいてはダークスターとの接触によって発生した事件なのだとしたら。

すべての記憶を取り戻したザークから、そうした情報を引き出せるのではないか、という期待。

《え? いいえ? ただ――。俺が死ぬ時のことなら思い出せますが、それから兄貴と会うまでの記憶は……あるようなないような》

『ちぇっ、そうか』

この点についてはあまり役に立たなかったザークだが、ダンテは大きくは失望しなかった。

『F等級だから知らないのかもしれん。どうせこの体には慣れなきゃならんし、そのためにはこいつの自我が残っているだけでも助けにはなる』

ザークが知らないからといって、すべての怨霊が知らないと確定できるわけではないのだから。

それに、当面ザークの体で再構築された自分の肉体を扱う上で、ザークの自我が残っているのは助けになるはずだから。

「キイイイッ――」

ぶうううん──────……。

ゴブリンの振り回した棍棒が、風を切る音を立てた。

モンスターの中では最弱の部類に入るとはいえ、三匹となればE等級冒険者がそれなりに本気で相手をして、ようやくどうにかなる。

事実上、戦闘とは無縁も同然のF等級にとってゴブリンは、まして三匹は、それこそ命がけで逃げるべき相手!

「――キイッ?」

「キッ? キキッ?」

「うわ……体、思ったより悪くないな?」

だが、ダンテは軽く後ろに下がるだけだった。

《えっへん、申し上げたじゃないですか、兄貴。俺、農作業は下手でしたが、それでも――》

いや、正確には、村で買ったE等級の武器〈鉄剣〉を振るいながら下がったのだった。

「キ、キイイッ! キイッ、キイッ!」

斬り落とされたゴブリンの腕から、血が噴き出した。

ゴブリンたちは動揺した。

頭たちも動揺した。

《――いつの間に……お見事です、兄貴》

「……ふむ。それほどの肉体ではなさそうだが。スキルか?」

ダンテと一つになったザークは、何が起きたのかすら見えていなかった。

SR等級はやはり違う、という点だけが、ダンテを愉快にさせた。


〈畑耕し(E+)〉――消費HP:5

農作業のため、固い土を掘り返すのは農奴の仕事です。土をひっくり返すために、全力で振り下ろします。


『年季が違うんだよ』

ザークのスキル〈畑耕し〉の簡単な説明を見ただけで、一種の強力な縦斬りとして使いこなしてみせるダンテ。

「さて……それじゃあ、見せてもらおうか。経験値は『誰』が食うのか。成長は『どんな形で』行われるのか」

それに加えて、最後の四番目の理由。

F等級でレベル2と表示された、現在の【ステータス】基準でモンスターを狩ったらどうなるのか。

X等級でレベル-18の、ダンテ本来のアンデッドの肉体には、どう適用されるのか。

このすべてを確認してこそ「成長計画」を立てられるのだから、ダンテは即座に世界樹の森へ発たなかったのだろう。

「キイイッ――!」

「キイッ、キイッ!」

ゴブリンたちは飛びかかってきた。

直線的なその動きを、ダンテは動揺すらせずに相手取った。

そして、そのすべての状況を、ハイエルフの頭は少し離れた場所から見守っている最中だった。

本日もお読みいただき、ありがとうございます!

皆さま、週末はいかがお過ごしでしたでしょうか。日曜の夜まで本作にお付き合いいただき、本当にありがとうございます。

ただ、実のところ……ちゃんと読んでいただけているのか、作者には知る術がありません。静かな画面を眺めていると、ちょっと怖くて、ちょっと寂しいです。

もし「読んでるぞ」と伝えてやってもいい、という方がいらっしゃいましたら、【感想】や【評価】、【ブックマーク】をいただけると、作者は月曜日から無敵になれます。

それでは、良い日曜の夜をお過ごしください。明日からの一週間が、活気に満ちたものになりますように!

次回の更新は、明日の朝7時20分です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ