宋飛52
「三峰山かあ。そりゃ、知ってるよ。でもあまり商人は関わらない方がいいと思うよ?これは本当に親切で言ってるんだけどさ」
「俺たちの心配をしてくれるのはありがたいが、少し事情があるんだ。知ってることがあれば教えてくれ」
春たちの話をまとめると、
・三峰山は泗州で一番の規模のならず者たちの根城になっている
・ここ数年で泗州軍と何度もやりあっていて、決着がつかないらしい
・三峰山の頭領の顔は覆面で隠れていて、外の人間は頭領の名前も顔も全く知らない
・裕福な商人が何度も襲われて財産を奪われている
「俺らで知ってるのはこれくらいかな?俺も街中で何度か噂話を聞いたんだけど、商人は本当に怖がってるよ。店に通ってる俺たちが言うんだから間違いない」
しばらくすると、唐平が見回りから帰ってきた。
「何で賊徒なんて気にしてるんです?」
「史令がここで誰かと接触するとしたら、ある程度の規模がある三峰山の賊徒か、泗州軍かのどちらかだからだ。まあ、最初に狙うのは賊徒の方だな」
「え、何でですか?」
「あいつは、反乱の同志を見つけるために、まず手を組める可能性が高いのは、世の中に不満があるはみ出し者たちだと考えるだろう。接触してみて、民に害をなすだけのどうしようもない奴らだったら、調練のついでに討ち果たすだろうしな」
「なるほど…」
分かったのか、分かってないのか、唐平はよく分からない顔をしている。
「…おっさんたち、誰か人を探してるのかい?」
「この辺りでな、俺の友人の行方が分からなくなっちまったんだ」
宋飛がそういうと、春は一瞬何か思い当たったように、はっと目を見開いた。
「それって、もしかして十日ほど前の話?」
「そうだ、何で知ってる?」
春の表情が暗くなった。
「…ごめんよ、関係ないといいんだけど。十日程前に、少し離れたところで数人の死体が血まみれになって見つかって大騒ぎになったんだ」
「なんだと?」
「それで、放っとく訳にもいかないから、山奥まで運んで処理する人足を役人が集めてたんだ。でも、結局死体が誰なのか、何があったのかは分かってないみたいなんだ」
「隊長。ひょっとして…」
「間違いなく史令絡んでるな。すでに死んじまったかは分からないが…」
次の瞬間、宋飛と唐平は二人同時に家の外に飛び出した。
窓の隙間から勢いよく飛び込んだ矢が三本、壁に深く突き立っていた。
「見回りが甘かったようだな。唐平」
「すみません、どうやらそのようです」
顔を隠した男が一人、剣を構え凄まじい殺気を放ちながら近づいてきた。




