宋飛50
逃げようとした子供を唐平が逆さまにぶら下げて戻ってきた。
「このガキ、首をねじ切ってやる!」
「うわぁ、待ってくれよ、おっさん!勘弁してくれ、悪かったよ!」
「おい、唐平。とりあえず下ろしてやれ」
宋飛が言うと、子供の懐から売り物の布を引っ張り上げながら、唐平は草むらに子供を放り投げた。
子供は、意外な身のこなしで受け身をとって立ち上がった。
「盗むのも、殴られて投げ飛ばされるのも慣れてやがるな、こいつ」
「くそっ、なんで俺が盗んだのが分かったんだよ。捕まっちまったのなんて久々だよ」
班礼が子供の恰好を観察しながら近づいて行った。服も履物もちぐはぐだ。子供の身で、ずっと盗みで生きてきたんだろうと思えた。
「相手が悪かったな。いや、唐平の馬鹿は気づかなかったから、そうでもないのか?」
「俺が気づかなかったんだから、なかなかのもんですよ、そいつ。俺の子分にしてやってもいいぐらいだ」
「お前は黙ってろ」
子供は12歳くらいだろうか。なんとなく宋飛は、生きていくために盗みを繰り返していた自分の幼少期を思い出していた。
「なあ、おっさんたち、本当に悪かったよ。品物も返したし、もう行ってもいいかな?子供を殺したりしたら、あんまり気分良くないだろ?」
「けっ、調子いいこといってやがる」
「おい、小僧。俺たちはこの辺りは初めてでな。許してやる代わりにちょっと色々教えてくれないか?」
王連が言った。
「え、本当にそれで許してくれるのかい? それならお安い御用だよ。俺らは昔からこの辺りにいるからさ、だいたいのことは自分の庭のように知ってるよ」
誇らしげに胸を張っている。
「まだ仲間がいるのか?」
「そりゃいるよ、子供が一人で生きていくなんてできないからさ。みんなで寄せ集まって慎ましく暮らしてるんだよ。…まあ、なんだろ、たまにちょっとお店にこっそり入る時とかあるけどね」




