宋飛46
宋飛の隊が千人に増員された。
揚州軍の全容は、本体の歩兵が四千で二隊、将軍直属の騎馬が三千、これは実際は副官である李京が指揮している。
加えて史令の三千と宋飛の遊撃隊一千である。
機動力が高い騎馬隊が多い編成だった。
「まだ動きが揃いませんね。隊長」
「他人事か、唐平。お前が何とかしろ」
「あまり慌てないでくださいよ。それだけ元々の遊撃隊が強かったってことです。無理をすれば調練で死人がでてしまいますよ」
宋飛は大きく増員された隊を、今までの部下と質を揃えることにこだわっていた。
戦場では、わずかな動きのずれが、集団の力を弱めてしまう。ここぞ、というときに、足並みが揃わないのだ。
「まあ、そもそもが本隊からの補充ですからね。基本の動きはすでに出来上がっていました。少なくとも俺の隊は、あとひと月で仕上げて見せますよ」
自信たっぷりに唐平は胸を張るが、それでも実践を経験するまでは指揮の呼吸が一つ、二つ遅れるのはどうしようもないだろう。
「ところで、お前は戻らなくていいのか?」
「今は隊長の副官殿2人が模擬戦をやっていますからね。うちの部下は休ませています」
ずっと上官が張り詰めていたら、部下は緊張を強いられる。どこで力を抜くかは意外と重要なことだった。そして、唐平はそのあたりの加減がうまかった。
宋飛の軍の千人のうち、副官の班礼と王蓮に四百ずつ預け、宋飛が残りの二百を率いることにした。
一つに集まる時には宋飛が直接全体の指揮をする。
唐平は一応従者として、宋飛についているが、場合によっては、他の二人よりも上位につく可能性がある。
宋飛が死んだ場合は、指揮が即座に唐平に引き継がれることになるからだ。
今は個人の能力を伸ばすための調練が終わり、集団戦の動きを身につけさせることを重視している。
三隊に分かれて、交代で遭遇戦をさせていた。
宋飛の麾下は、代わりに唐平が率いている。
一見数が少ない唐平が不利に思えるが、宋飛の麾下なので、選りすぐりの兵と馬で揃えていた。
数の少なさはあるが、その分動きが早くなり、相手からも隠れやすい。
三隊が丁度いい戦力になり、唐平の指揮をみる実践練習にもなっている。
唐平が他の二人に劣ることも少なくなってきた。
それぞれ隊長が先頭になった際の突破力で言えば、三人の中で一番かもしれない。
宋飛は丘の上で全体の様子を見ていた。
何度目かの遭遇戦を行なっている最中に、宋飛の元に劉明将軍から緊急を告げる知らせが届いた。
史令が、泗州軍に捕らえられたとのことだった。




