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宋飛  作者: たいてん
45/54

宋飛45

うだるような暑さの中、班礼は練兵場にいた。


今日は兵たちにとっては10日に1度の休みである。


貯めた銭を持って街に繰り出す者、久々に家族のもとに顔を出す者、のんびりと兵舎で休養する者、それぞれが思い思いに過ごしている。


そんな中、練兵場の中央では先ほどから二人がずっと打ち合っていた。


「またやってるのか。あのままじゃ唐平のやつ死ぬんじゃないか?」


いつの間にか王蓮が隣に立っていた。


揚州に帰還して二ヶ月。宋飛は従者にした唐平を徹底的に鍛えていた。


毎回の通常の調練の後、二人だけで四刻はずっと打ち合っている。


唐平が激しく動き、隊長に向かって次々と槍を打ち込んでいく。


宋飛はそれを躱す。もしくは調練用の棒で受けていなし、相手が隙が見せたり、無駄な動きをしたら打ち据えている。


宋飛はほとんど汗もかいていないが、唐平の方は激しく息を乱して身体中があざだらけになっている。


ひと月経つ頃には、明るかった唐飛から表情失われていき、見るからにやつれ始めていた。


あまりに厳しさに、古参の兵たちも口を挟まず、黙って見ているしかなかった。


班礼が驚いたのは、それでも唐平が逃げ出さないことだった。


死ぬすれすれまで宋飛は追い込み、気を失っても水をかけられすぐに起こされている。


通常の調練も終えた後の稽古であり、ほとんど宋飛は唐平を殺す気なのではないかとさえ思うほどである。


しかし、唐平は練兵場に向かい続ける。


ふと、班礼は、段々と唐平の動きが良くなっていることに気づいた。


「どうした。そんなものか。村で寝ていた方が良かったんじゃないか?」


そういうと、宋飛が逆に攻め始めた。


突き飛ばされた唐平が起きようとしたところを鳩尾に棒を受け気絶している。


わずかに息を乱していた宋飛は、そのまま背を向けて歩き去った。


今日の稽古は終わりということだった。


班礼が水をかけてやると、唐平が飛び起きた。


「もう終わったよ。隊長は帰った」


「そうですか」


「よくやるなあ、お前も」


王蓮が手招きすると、遠巻きにしていた兵達が手当てをするため近寄ってきた。


「すぐに逃げ出すと思っていたよ。俺も王蓮も」


「俺はひと月に賭けたんだがな。班礼は半月だ」


唐平は初めて少し笑ったように見えた。


「逃げませんよ。俺は嬉しいんです。自分がどんどん強くなっているのが分かる」


確かに村であった頃とは動きがまるで違っていた。身体も引き締まり、一回り小さくなったように見える。


「おい、王蓮。お前ももうやられるんじゃないか?」


「やめろ、班礼。まあ、簡単にはあしらえなくなっているのは認めるが」


「さすがにお二人にはまだ敵いません。それが分かる程度にはなりました」


「お前だいぶ変わったな。なんだその謙虚さは。気持ちが悪いぞ」


どうやら班礼の杞憂のようだった。宋飛はよく見極めている。


班礼はそのまま医務室に唐飛を運ばせた。


その後、さらにひと月が過ぎた頃、ようやく二人の稽古が終わった。


隊長はその場で、唐平を従者から、隊の副官に任命した。


古参も含め、兵の中で異議を唱える者は、もう誰もいなかった。

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