宋飛43
唐平は何が起こったのか分からなかったようだった。
「嘘だろ、俺が負けるはずがねえ。どんな汚い手を使いやがった」
突きつけた剣を、王蓮は鞘に収めた。
「お前が弱すぎるだけだ。見えていなかったのか?」
「ふざけるな。賊徒が束になったって、俺には指一本触れられなかったんだぞ」
「この世には、強い奴などいくらでもいる。俺ですら隊長の前では十秒も立っていられん。これまでは弱い相手に恵まれていただけだろうな」
掴みかかろうとした唐平が空振りし倒れ込んだ。王蓮がいつの間にか後ろから唐平の背中を踏みつけている。
唐平はしばらくうつむいていたが、すぐに足を払い除け立ち上がった。
「くそっ、こんなに強い奴らがいんのかよ。俺は、一歩村の外に出たらこんなにも弱いのかよ」
槍を頭上で回転させ、唐平は雄叫びを上げた。
「だが、関係ねえ。お前らが俺よりどんなに強かろうが知ったことか。ここは死んでも通さねえぞ」
唐平の声に反応して、村の若者たちも立ち上がり武器を構え始めた。
「ほう。次は手加減はしない。死ぬぞ」
「村の奴らを守って死ぬならそれでいいさ。悪い死に方じゃねえだろう」
唐平は槍を構えてにやりと笑った。
王蓮が剣を抜いた。少しだけ後ろに控えている宋飛の方を見た。
宋飛は頷き返した。
王蓮が手を上げ、二十名全員が抜刀した。
今度は手加減すればこちらにも怪我人が出るだろう。
「それに、死ぬのはお前らだ」
唐平が駆け出すと、全員が一斉に動いた。
王蓮はやはり唐平の相手をするようだ。他の者に任せるとやられかねないと判断したのだろう。
実際、最初から動きの良さは際立っていた。宋飛軍の他のものと遜色ない。それに、槍の使い方には天性のものを感じた。
だからこそ、王蓮は一瞬で決めるつもりでいる。
唐平の渾身の突きをぎりぎりまで引き付け、わずかに半身を下げた。
唐平の勢いを利用して、鳩尾を剣の柄で突いた。
一瞬二人の動きが止まり、気づくと唐平は崩れ落ち、王蓮がそれを支えていた。




