宋飛41
「通してもらえないのでは困ったな」
宋飛はそう言って、少し考えるふりをした。
自分達は村に立ち寄って、必要なものを穏便に購入したいと思っている。つまり村人である以上、この若者たちをむやみに蹴散らして進むのは得策ではない。それに、何よりここは蘇州軍の管轄地なのである。不要な争いは避けたかった。
諦めて素通りをすることもできるが、宋飛は少しだけこの若者に興味が出てきた。
「唐飛殿は村の自警団の団長ということなのか?」
「おう、まあそんなもんだな。賊徒なんて何度返り討ちにしてやったか知れねえ。奴らももうこの近辺の村は避けて通るほどさ」
唐飛がどこか自慢げに話し続けているのが、宋飛にはおかしかった。
「我々は村に立ち寄って、水と食料を贖いたいだけなのだ。それでも通してはもらえないか?」
「うるせえ。怪我しないうちにとっとと帰れ」
どうやら唐飛の敵意は消えそうにない。
「少し前までは、お前たちのような奴らが油断させて村を襲っていった。皆が冬に備えてせっせと蓄えていた食い物をみんな持っていっちまったんだ。役人でさえ税が増えたとか言って、金目のものは根こそぎ持って行きやがる。もううんざりなんだよ」
つまり、この唐飛という若者の行動は、村人のためにやっているということだった。粗暴に見えて、人を思う気持ちを忘れているわけではないらしい。
「唐飛殿。もう一つ聞かせて欲しい。俺は蘇州軍はちゃんとしていると思っていたが、お前たちにとっては敵なのか?」
「あの人たちは別さ。村に悪さをすることもない。きちんと扱ってくれている。ただ、数が少ないから手が足りてねえ。だからこうして俺らが自分達の村ぐらいは守ろうと思ってるんだよ」
「よし、分かった」
宋飛は部下に合図を出した。戦闘準備である。
「今から力づくでここを通る。だが、絶対に村を襲うことはない。信用できないだろうが、その後の俺たちの行動を見て、賊徒かどうか判断してくれ」
「へえ、上等だよ。おい、みんな、遠慮はいらねえ、かかれ!」
全員が一斉に向かってきた。
「王蓮、下馬した三十名を前に出せ。他は後方に下がれ」
「はっ」
「一人も殺すな」
「承知」
王蓮が飛び出していった。




