宋飛39
宋飛が揚州に戻る日が来た。
趙清将軍と朱立に挨拶をしに、蘇州軍の本営に顔を出した。
宋飛軍の兵たちは、城外で帰還の準備を整え待機させている。
訪いを入れるとすぐに将軍の執務室に招かれた。
中に入ると朱立も趙清将軍の後ろに控えていた。
「世話になったな、宋飛。お前のおかげで、懸案だった海賊団の扱いに、一応の方ががついた。劉明将軍にもその旨の書簡を送ってある。あの人も滅多に感情を顔には出さないが、まあ、喜ばれるだろう」
「俺はほとんど何もしてませんよ。海賊たちに勝てたのは、朱立の指揮が良かったからです」
「何を言っている。そもそも、お前が襲われていた村を見つけ、被害を最小限で止め、馬冲と接触したからこそ奴らの根城を見つけることができたんだろ」
まあ、朱立も少しは役に立ったがな、と将軍はついでのように付け足した。
「宋飛を持ち上げるなら、俺にもそうしてくださいよ、将軍」
「お前は褒めるとすぐに調子に乗って失敗する。それに、あの時も俺がいなかったら燕広を逃していたぞ、朱立」
「そんな」
「次はもっと上手くやって見せろ」
「次の機会もいただけるのですね?」
「気が向いたらな」
趙清将軍はいつになく上機嫌だった。
ふと、気になっていたことを宋飛は尋ねた。
「そういえば、馬冲はどうしていますか」
「心配するな、周辺の村や漁師たちと上手くやっている。元々あのあたりは奴らの縄張りみたいなものだったからな」
あの時、燕広の海賊団は崩壊した。それでも、以前から馬冲や兄の馬麟を慕っていた人間は多かった。宋飛が倒した副頭領の扈応もその一人だった。
趙清は漁師の元締めを兼ねて、荘の保正という立場で馬冲とその仲間を受け入れた。
元副頭領の扈応も、最初こそ頭領の燕広を守れなかったことで覇気を失っていたが、何か思うところがあってか、馬冲に力を貸すことを最終的には頷いた
馬冲は今、かつてのように村々の自警団の役割も果たしているそうだ。
「宋飛、俺は劉明将軍の真の目的を知っている」
唐突な趙清将軍の言葉に、宋飛はなんと答えていいか分からなかった。
「その時が来たら、蘇州軍は力になる。馬冲や扈応もあいつらなりに世の中の理不尽と戦ってきた奴らだ。扱い上は蘇州軍の一部としている。言っている意味は分かるな?」
宋飛は慎重に言葉を選んだ。
「自分は、その件について、何かを話す許可を得ていません。しかし、仰っていることは分かります」
朱立はなんだか分からないという表情をしている。
趙清将軍はふっと笑った。
「またな、宋飛。いつか肩を並べて戦える日が来ることを楽しみにしている」




